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最初はコリーナ嬢と一緒にいる私を遠巻きに見ていた生徒たちも、徐々に私とも会話をしてくれるようになってきた。

取巻き?腰巾着?だった令嬢たちは、王太子殿下の婚約者では無くなった私には利用価値はないようで、近寄るどころか話し掛けてもこない。
まあそれはいいの。
だって面倒な付き合いが無くなって清々しているから。

そうそう、コリーナ嬢と昼食を摂っている時にカイザックに声を掛けられたので、友達だと彼にコリーナ嬢を紹介した。

「⋯⋯そうか。メイジェーン嬢をよろしく」

お兄様と同じょうな言葉を言ったカイザックに笑顔は見えなかった。
コリーナ嬢もお兄様の時と同じカイザックに対して特に態度は変わらなかった。

うん、どちらかと言えばカイザックは感情をあまり表に出さないと、以前の取巻き?腰巾着?だった令嬢の誰かが言っていた気がする。
私もカイザックの顔や名前は当然知っていたし、令嬢たちから人気があることも知っていた。
顔もスタイルも良いのに『無口』『無表情』『無愛想』でも『そこがいい!』と⋯⋯

私の知るカイザックは紳士だし、逞しい身体は安心感を与えられるし、大きな手は優しくて温かい。それに彼は優しい笑顔を見せてくれる。
あれ?『無口』『無表情』『無愛想』は??

⋯⋯まあ、それはいい。
カイザックは公平で、リュート殿下とは違ってヒロインのエルザに傾倒していないのが分かった。ここが大きいよね!





今までで1番充実した学園生活を送っていたし、エルザとリュート殿下の接触も無かったから警戒心が抜けていたみたい。

クラスメイトたちとも少しずつ会話をするようになっていたある日、いつもの様に教室に入った瞬間、廊下にまで聞こえていた喧騒がピタリと止まった。
わざとらしく目を逸らす者、蔑む視線を向けてくる者、面白そうに嘲笑うような者⋯⋯
心当たりは何もない。

どうせこんな状況の時に私から声を掛けても応えてくれないことは経験済みだ。
婚約解消した頃もこんな感じだったのを思い出す。

結局、理由が分からないまま居心地の悪い時間は昼食の時間まで続いた。

食堂に入ってもからも嫌な視線を向けられた。

やっと出来た友達のコリーナ嬢にまで、こんな視線を向けられたら流石にキツい。
クラスの違うコリーナ嬢とは直接食堂で待ち合わせていた。
いつも座る席でコリーナ嬢が笑顔で私に手を振っているのが見えると安堵のため息がでた。
やっぱり緊張していたみたい。

さて、情報収集が必要みたいね。
私にとって不利になるような、何らかの噂が流れているのはこの食堂に入ってからの視線で気付いていたからね。





日に日に生徒たちの視線も態度も冷たいものに変わっていく。
変わらないのはコリーナ嬢だけだ。
彼女も私の今の状況を耳にしているはずなのに態度から変わらないことが嬉しい。
⋯⋯信じられる友達がいるということが、こんなにも心強いものだと、コリーナ嬢の存在に感謝した。



誰も何も言ってこない。
蔑む視線は向けてきても声は聞こえない。
耳に何か入ってくれば、少しは理由が分かると思っていたのに⋯⋯

お兄様に頼るつもりはない。
聞けば何が起こっているのか教えてくれるだろうし、力にもなってくれるだろう。なんなら解決もしてくれると思う。

でも、あと数ヶ月で卒業するお兄様に頼ってしまえば、まだ2年以上通わなければならない私はダメになってしまう。そんな気がするのだ。





「大丈夫ですか?メイジェーン様」

「え?」

「最近メイジェーン様が悩んでいるのに気付いていましたわ。⋯⋯なぜ、わたくしに相談してくれませんの?お友達ではなかったのですか?」

ああ、コリーナ嬢は私から相談してくるのを黙って待っていてくれたんだ。
『友達』⋯⋯
そうだ、前世でもそうだった⋯⋯悩みがある時や困った時はいつも『友達』に相談していた。

いつから私はそんな当たり前のことが出来なくなったんだろう。

⋯⋯本当は理由も分かっている。
5歳から始まった厳しい王太子妃教育が原因だ。
いずれこの国の王妃になるはずだった私は、誰にも弱味を見せないようにと感情を隠す教育を受けてきた。
私はどんなに厳しくても辛くても、家族にすら泣きつくことを許されなかった。
その時の弊害が婚約を解消してからも出るなんて⋯⋯
もう、私は泣き言を言ってもいいのだ。
誰かに頼っても甘えてもいいのだ。

「ありがとうございます。聞いていただけますか?コリーナ嬢」

こうしてやっと相談できた私にコリーナ嬢は学園内に広がる根も葉もない噂を教えてくれた。

それは⋯⋯やはりと言うべきか、エルザが関係していたのだ。
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