31 / 58
31
しおりを挟む
「エドごめんね。上着は弁償するわ」
「別にいいさ替えならいくらでもある」
「ユティ今日はもう早退したら?髪に着いた油をメイドに綺麗に洗ってもらいなさい」
「そうね。医務室で制服を借りて返すのも二度手間ですものね。このまま帰るわ」
「鞄はわたくしが放課後持っていきますわね」
「鞄ぐらい取ってから帰るわよ」
「ユティ察してやれ、リアはラグーナ侯爵家に行く口実が欲しいだけだ」
「な、なるほど・・・」
「そうよ悪い?一目でもいいからレグルス様にお会いしたいの」
「開き直りやがった」
エドは呆れているけれど迫力美人のリアの照れ顔は貴重で可愛い。
「馬車止めまで送るわ」
「ありがとう」
「それよりごめんな巻き込んで。あんな性悪だから俺はアイツが嫌いなんだ」
3人で馬車止めまで歩いていると、エドが申し訳なさそうに謝ってくる。
そして端正な顔を歪ませながら愚痴をつぶやく。
「エドが謝ることないじゃないわ」
「そうよ、あれはあの女の性根が腐っていたからよ。ユティの席にわたくしが座っていたら今頃汚れていたのはわたくしだったわ。あの女は相手が誰だろうとエドの近くにいる女が許せないだけよ」
そう、ブリジック嬢のした事にエドが責任を感じることはない。
もしエドが婚約者を見つけようものなら、今度はその相手をターゲットに何をする分からないのが怖い。
「ここまで送ってくれてありがとう。じゃあリア鞄はよろしくね」
「ええ、担任には伝えておくから安心してね」
リアとエドは馬車が出発するまで見送ってくれた。
「はあ」
ため息が出ちゃう。
こんな取れるような汚れなんて気にもしないけれど、あれが淹れたてのお茶だとか、焼き立ての料理じゃなくてよかった。
私の顔に傷でも残ったらブリジック嬢は何かしらの罪に問われる事になっただろう。
それどころか、ジル兄様は絶対に許さないと思うな。
亡くなったお母様がソルトレグス帝国の皇女だった事と、私がソルトレグス帝国の王位継承権を持っている事を公にするのは危険だとお父様もジル兄様も言っていたのよね~
まあ、ジル兄様が私を守るために学園に手の者を侵入させているのは今日一人だけ確認出来たけれど・・・他にもいるんだろうな~
茶色の髪に黒い瞳の彼は体型から見て護衛かしら?
青いネクタイだから同じ一年生ね。
私がソルトレグス帝国で知っている同世代の人はとても少ない。
私が知っているのは、優しい重鎮の方々のお孫さんたちぐらい。
皇城に連れて来られた時に紹介されたのよね。
彼らも何れソルトレグス帝国のジル兄様の側近や護衛につくのでしょうね。
ルビーアやハリソンは元気かしら?
ルビーアに会いたいわね。
休暇中には会えなかったもの・・・
ルビーアの母親である侍女長がジル兄様に嫁ぐ私の侍女になるために毎日頑張っているって教えてくれた。
ハリソンは・・・彼は今も女の子たちに追いかけられて喜んでいるかしら?
『俺ってさぁモテてモテてモテ過ぎちゃって困ってるんだよね~』
初対面の時からこんな調子だったんだよね。
『へぇ~そんなんだ。よかったね』
『それだけ?ユティフローラちゃん俺を見て何も感じないの?』
感じるわけないじゃん!
『私にはジル兄様がいるからね。それにレグルス兄様もいるし、2人と比べたらハリソンなんてまだまだだよ』
そう言えばハリソンには最初から素の自分を見せていたような気がする。
『あの2人と比べたら誰だって敵うわけないだろ!その2人を除いたら俺っていい男だろ?』
自分でそんなことを言うハリソンに呆れながらも、何度も会ううちに本当は真面目な人なんだと分かってきた。
ハリソンは何もしなくても令嬢に囲まれるから、無難に笑ってスルーしているだけだとジル兄様が言っていた。
甘い顔立ちだから男の人には舐められることも多いけれど、ハリソンは武術の天才だとジル兄様が教えてくれた。
意外だと思ったけれど、実際に鍛錬しているハリソンの真剣な表情を見てしまえば、女の子にモテるのも頷けた。
あのギャップは反則だよ。
そんなハリソンがこの学園に留学してきているなんて誰も教えてくれなかった。
だって、私が知ったのは令嬢たちの噂話からだったもの。
「別にいいさ替えならいくらでもある」
「ユティ今日はもう早退したら?髪に着いた油をメイドに綺麗に洗ってもらいなさい」
「そうね。医務室で制服を借りて返すのも二度手間ですものね。このまま帰るわ」
「鞄はわたくしが放課後持っていきますわね」
「鞄ぐらい取ってから帰るわよ」
「ユティ察してやれ、リアはラグーナ侯爵家に行く口実が欲しいだけだ」
「な、なるほど・・・」
「そうよ悪い?一目でもいいからレグルス様にお会いしたいの」
「開き直りやがった」
エドは呆れているけれど迫力美人のリアの照れ顔は貴重で可愛い。
「馬車止めまで送るわ」
「ありがとう」
「それよりごめんな巻き込んで。あんな性悪だから俺はアイツが嫌いなんだ」
3人で馬車止めまで歩いていると、エドが申し訳なさそうに謝ってくる。
そして端正な顔を歪ませながら愚痴をつぶやく。
「エドが謝ることないじゃないわ」
「そうよ、あれはあの女の性根が腐っていたからよ。ユティの席にわたくしが座っていたら今頃汚れていたのはわたくしだったわ。あの女は相手が誰だろうとエドの近くにいる女が許せないだけよ」
そう、ブリジック嬢のした事にエドが責任を感じることはない。
もしエドが婚約者を見つけようものなら、今度はその相手をターゲットに何をする分からないのが怖い。
「ここまで送ってくれてありがとう。じゃあリア鞄はよろしくね」
「ええ、担任には伝えておくから安心してね」
リアとエドは馬車が出発するまで見送ってくれた。
「はあ」
ため息が出ちゃう。
こんな取れるような汚れなんて気にもしないけれど、あれが淹れたてのお茶だとか、焼き立ての料理じゃなくてよかった。
私の顔に傷でも残ったらブリジック嬢は何かしらの罪に問われる事になっただろう。
それどころか、ジル兄様は絶対に許さないと思うな。
亡くなったお母様がソルトレグス帝国の皇女だった事と、私がソルトレグス帝国の王位継承権を持っている事を公にするのは危険だとお父様もジル兄様も言っていたのよね~
まあ、ジル兄様が私を守るために学園に手の者を侵入させているのは今日一人だけ確認出来たけれど・・・他にもいるんだろうな~
茶色の髪に黒い瞳の彼は体型から見て護衛かしら?
青いネクタイだから同じ一年生ね。
私がソルトレグス帝国で知っている同世代の人はとても少ない。
私が知っているのは、優しい重鎮の方々のお孫さんたちぐらい。
皇城に連れて来られた時に紹介されたのよね。
彼らも何れソルトレグス帝国のジル兄様の側近や護衛につくのでしょうね。
ルビーアやハリソンは元気かしら?
ルビーアに会いたいわね。
休暇中には会えなかったもの・・・
ルビーアの母親である侍女長がジル兄様に嫁ぐ私の侍女になるために毎日頑張っているって教えてくれた。
ハリソンは・・・彼は今も女の子たちに追いかけられて喜んでいるかしら?
『俺ってさぁモテてモテてモテ過ぎちゃって困ってるんだよね~』
初対面の時からこんな調子だったんだよね。
『へぇ~そんなんだ。よかったね』
『それだけ?ユティフローラちゃん俺を見て何も感じないの?』
感じるわけないじゃん!
『私にはジル兄様がいるからね。それにレグルス兄様もいるし、2人と比べたらハリソンなんてまだまだだよ』
そう言えばハリソンには最初から素の自分を見せていたような気がする。
『あの2人と比べたら誰だって敵うわけないだろ!その2人を除いたら俺っていい男だろ?』
自分でそんなことを言うハリソンに呆れながらも、何度も会ううちに本当は真面目な人なんだと分かってきた。
ハリソンは何もしなくても令嬢に囲まれるから、無難に笑ってスルーしているだけだとジル兄様が言っていた。
甘い顔立ちだから男の人には舐められることも多いけれど、ハリソンは武術の天才だとジル兄様が教えてくれた。
意外だと思ったけれど、実際に鍛錬しているハリソンの真剣な表情を見てしまえば、女の子にモテるのも頷けた。
あのギャップは反則だよ。
そんなハリソンがこの学園に留学してきているなんて誰も教えてくれなかった。
だって、私が知ったのは令嬢たちの噂話からだったもの。
210
お気に入りに追加
2,402
あなたにおすすめの小説
[完結]婚約破棄してください。そして私にもう関わらないで
みちこ
恋愛
妹ばかり溺愛する両親、妹は思い通りにならないと泣いて私の事を責める
婚約者も妹の味方、そんな私の味方になってくれる人はお兄様と伯父さんと伯母さんとお祖父様とお祖母様
私を愛してくれる人の為にももう自由になります
別に要りませんけど?
ユウキ
恋愛
「お前を愛することは無い!」
そう言ったのは、今日結婚して私の夫となったネイサンだ。夫婦の寝室、これから初夜をという時に投げつけられた言葉に、私は素直に返事をした。
「……別に要りませんけど?」
※Rに触れる様な部分は有りませんが、情事を指す言葉が出ますので念のため。
※なろうでも掲載中
(完)貴女は私の全てを奪う妹のふりをする他人ですよね?
青空一夏
恋愛
公爵令嬢の私は婚約者の王太子殿下と優しい家族に、気の合う親友に囲まれ充実した生活を送っていた。それは完璧なバランスがとれた幸せな世界。
けれど、それは一人の女のせいで歪んだ世界になっていくのだった。なぜ私がこんな思いをしなければならないの?
中世ヨーロッパ風異世界。魔道具使用により現代文明のような便利さが普通仕様になっている異世界です。
永遠の誓いを立てましょう、あなたへの想いを思い出すことは決してないと……
矢野りと
恋愛
ある日突然、私はすべてを失った。
『もう君はいりません、アリスミ・カロック』
恋人は表情を変えることなく、別れの言葉を告げてきた。彼の隣にいた私の親友は、申し訳なさそうな顔を作ることすらせず笑っていた。
恋人も親友も一度に失った私に待っていたのは、さらなる残酷な仕打ちだった。
『八等級魔術師アリスミ・カロック。異動を命じる』
『えっ……』
任期途中での異動辞令は前例がない。最上位の魔術師である元恋人が裏で動いた結果なのは容易に察せられた。
私にそれを拒絶する力は勿論なく、一生懸命に築いてきた居場所さえも呆気なく奪われた。
それから二年が経った頃、立ち直った私の前に再び彼が現れる。
――二度と交わらないはずだった運命の歯車が、また動き出した……。
※このお話の設定は架空のものです。
※お話があわない時はブラウザバックでお願いします(_ _)
王妃様は死にました~今さら後悔しても遅いです~
由良
恋愛
クリスティーナは四歳の頃、王子だったラファエルと婚約を結んだ。
両親が事故に遭い亡くなったあとも、国王が大病を患い隠居したときも、ラファエルはクリスティーナだけが自分の妻になるのだと言って、彼女を守ってきた。
そんなラファエルをクリスティーナは愛し、生涯を共にすると誓った。
王妃となったあとも、ただラファエルのためだけに生きていた。
――彼が愛する女性を連れてくるまでは。
公爵令嬢の辿る道
ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。
家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。
それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。
これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。
※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。
追記
六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。
完結 貴族生活を棄てたら王子が追って来てメンドクサイ。
音爽(ネソウ)
恋愛
王子の婚約者になってから様々な嫌がらせを受けるようになった侯爵令嬢。
王子は助けてくれないし、母親と妹まで嫉妬を向ける始末。
貴族社会が嫌になった彼女は家出を決行した。
だが、有能がゆえに王子妃に選ばれた彼女は追われることに……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる