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43 マーガレット王女視点

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~マーガレット王女視点~



きっと彼女はわたくしとアレクシスとの関係に気づいている。

それなのに見かける度に笑っているの。
わたくしは笑顔が見たいのではないわ!

だからね、わたくしの取り巻きを使ったの。

『彼と恋人同士だったのに引き裂かれたの』

『公爵家の力を使って嫌がる彼を無理やり婚約者にしたの』

適当な言葉で泣いて見せれば、あとは勝手に動いてくれるのは分かっていたわ。

そして、すぐに動いてくれたの。

頭から水を被った彼女はみすぼらしくて笑っちゃったわ。

それだけ見てアレクシスの待つ旧校舎に向かったの。

でも次の日からわたくしの取り巻きは学院に来なくなった。
あの後何があったのか誰も教えてくれない。
それどころか、わたくしの傍には誰も居なくなってしまったの。

よく考えてみれば彼女は公爵令嬢ですもの、親の力を使って取り巻き達に制裁を加えるのは当然でしょうね。

でも、1人になったおかげでアレクシスがずっとわたくしの傍にいてくれるようになったの。

もう、隠れるように逢い引きすることもない。
もう今では公認の仲。
早く彼女に見せびらかしたいのに、なかなか彼女と会えなかったわ。

だからね、アレクシスにちょっとだけ嘘をついたの。
今の彼ならわたくしを信じると思って。

『こ、婚約者の貴方には・・・知らせた方がいいと・・・思って・・・』

この時、申し訳なさそうに言うのがコツよ。

『ディハルト様はいつもたくさんの男性を侍らせて遊んでいるとお聞きしましたわ。そ、その体の関係もあるとか・・・』と。

『はあ?』

あとは『裏切られているアレクシスが可哀想』って、慰めるように抱きしめてあげれば信じて終わり。



それからアレクシスを信じさせる絶好の場面に遭遇したわ。

彼女が以前していたドルチアーノ殿下とそのたちと楽しそうに話しているところよ。

怒ったアレクシスがその場で彼女を怒鳴ったわ。
でも決定的な言葉を言わなかったのは期待はずれだったわね。

『君がそんな事を続けるなら俺にも考えがある。あとで後悔するなよ!』

もう!そこはするって言いなさいよ!

それからも、学院内でイチャついていたのに、彼女は何も言ってこないの。
普通なら自分のが、他の女と親密にしているところを見れば嫉妬するはずなのに彼女は苦言も言ってこない。

つまらない、本当につまらないわ。

旧校舎での逢瀬も続けて、その度にキスするだけ。
どんなに身体を密着させても、アレクシスはそれ以上先に進めようとしない・・・。
こんなに長い期間一緒にいて、わたくしに身体を求めなかった男は今までいなかったのに・・・

お子様なアレクシスにも飽きてきたわ。
彼はわたくしに一途に愛されていると思い込んでいるの。
わたくしがアレクシスを追って留学してきたと思っているから。

彼はこの学院で再会した時から王女であるわたくしに偉そうな口をきく。
まるで"仕方ないから相手してやるよ"って口調で・・・

この男の相手をするのは彼女の悔しがる顔を見るまでなのにバカな男。




最近は彼女に見せつけるように彼がわたくしのクラスまで来るようになったの。

今日も休憩の度に会いに来る。
会えて喜ぶフリも、つまらない話しに付き合うのも疲れてきた・・・。
予鈴が鳴って彼がやっと自分の教室に帰っていく後ろ姿にため息が出る。

その時、彼女と目が合った。
やっと彼女の悔しがる顔が拝めると思った。
うふふっ早くその美しい顔を嫉妬で歪めなさい。

なのに・・・それなのに・・・事もあろうか彼女はわたくしに笑顔で"頑張って"とでも言うようにサムズアップをしたの。

あれは"奪えるものなら奪ってみなさい"ってことなの?
ムカつく!ムカつく!ムカつく!
バカにして!

すでにアレクシスは間違いなくわたくしに夢中だわ!
その美しい顔を屈辱で歪めてやる。

アレクシスを誘導してこの遊びも、もう終わりにするわさせるの。




もうアレクシスにも飽きたし、そろそろ国に帰りましょう・・・。

お父様も彼らもわたくし帰ってくるのも待ちわびているはずだわ。
また、皆に可愛がられるお姫様に戻るの。




そう思っていたのに・・・
計画通りアレクシスの口から彼女に向けてだと言わせたのに・・・


彼女の泣き顔が見られると思ったのに・・・






嘘でしょう?
わたくしが二度と祖国に帰れないなんて・・・

揶揄っているのでしょう?

ねえ、誰でもいい・・・嘘だと言って・・・
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