上 下
8 / 67

8

しおりを挟む
私の噂話も聞こえなくなった頃、リアム兄様達3年生の卒業式が行われた。

これから登下校も、ランチタイムもリアム兄様とご一緒出来なくなると思うとすごく寂しい・・・
邸で毎日会えるといってもこればかりは気持ちの問題なのだ。

私も2学年に上がれば後輩も入ってくる。
それは少し楽しみだけれど、その前に春休みがある。

その間に王城ではトライガス王国からの使者の方を歓迎するパーティーが開かれるそうだ。
実はそのパーティーに私も参加する事になったんだよね。

お父様とルイス兄様から『ヴィーを誰にも見せたくないけれど、夜会に参加しなければならなくなってしまった』
と、泣きそうな顔でそう言われたら断れないよ。

この国では17歳になると成人と認められて、夜会にも参加出来るようになる。
それに婚姻も認められている。

前世の記憶の中の小説では貴族の令嬢が着飾ってデビュタントだとか、お披露目されるパーティーだとか大袈裟に書かれていたが、この国では"17歳の誕生日を迎えたら成人"と認められて終わる。

日本で成人式に行かなくても20歳は成人と見なされる事と一緒だ。
・・・ん?待てよ?
日本の成人年齢って20歳だったっけ?
いや、私の記憶では18歳に法律で決まったような・・・?
まっどっちでもいいか。
もう転生しちゃってるし関係ないよね!

そしてパーティーに参加するならドレスがいる。
で、誰が私に1番似合うドレスを作れるかで、お父様、ルイス兄様、リアム兄様の3人が競い合っているんだよね。

私って前世から物欲よりも食欲だったから着られば何でもいいんだけど、真剣にデザインを考えてくれている姿に大切にされていると実感する。
少し照れくさいけどね。


で、選ばれたのはお母様が用意してくれていたドレス・・・

着られれば何でもいいと思っていたけれど、あれは無いわ~
だって3人とも露出は少ないドレスだったのはまだいい。
ただ生地は分厚く、ダボッとしていて身体のラインが分からないドレスを示し合わせたように似たような物を用意していたんだよね。
あれじゃあマタニティドレスか何処かの民族衣装にしか見えないよ・・・

そんな理由でお母様から却下され、今の私は光沢のある絹の青い生地に銀糸で繊細な刺繍のされたドレスを身にまとい、普段はしない化粧を施され自分で言うのもなんだが、とても似合っていると思う。

エントランスで待っていたお父様とお兄様2人は私の姿を見てスゴく褒めてくれたけれど、絶対に1人にならないと約束させられた。
海外のお客様も参加するパーティーで危険などないと思うんだけどな。
でもここは素直に頷いておこう。

初めての夜会とはいえ緊張をしないのは、きっとルイス兄様やリアム兄様が側にいてくれるから。
2人のお兄様に挟まれてお父様とお母様の後に続いて入場した。

ホールに入った瞬間目が開けられないほどの眩しさに目眩がした。
目が開いた先には凄いとしか言えない光景が。
前世でもこんな煌びやかな光景は見たことがない。

ヤバイ急に緊張してきた。
さっきまで平気だったのに手足が震える。

「大丈夫だよ」

「僕たちがそばにいるから安心して」

左手はルイス兄様、右手はリアム兄様がギュッと握って優しく微笑んでくれた。
それだけで落ち着いた。

「はい!」

そうだよ、緊張する必要などなかったよね。
私にはこんなに頼りになるお兄様たちがいるんだから。

「ルイス兄様、リアム兄様大好きです!」

「「ヴィーが可愛い!」」

それからはお父様とお母様と一緒に挨拶回りをしたけれど、婚約者のいない私たち兄妹に自分の娘さんや息子さんを進めてくる貴族がとても多くて驚いた。

ルイス兄様は次期ディハルト公爵家当主だし、リアム兄様はひとり娘だったお母様の実家バトロア侯爵家を継ぐし、2人とも頭脳明晰で、眉目秀麗、さらに優しくて超優良物件だもんね、そりゃあ狙われるよ。

『我が家は恋愛結婚を推奨していますから、本人に任せているんです』

お父様もお母様も同じ言葉で何度も相手に断っていた。

この国の女性の結婚適齢期は17歳から24歳と早過ぎず、遅過ぎずでもない。
17歳になって半年ほどの私は別に焦ってもいないし、最悪本当に嫁ぎ先がなければディハルト公爵家でお世話になるつもりだ。

お母様は家格など気にせず好きな人のところにお嫁にいけばいいと言ってくれる。

前世日本人の私からすれば10代で相手を選んでも失敗する確率の方が高い気がするのにな。

おや?音楽が変わったと思ったら王族の登場のようだ。
皆が頭を下げて臣下の礼をとる。


・・・あれが我が国の国王と王妃様。
ダンディで威厳もあり男前だ。
王妃様は小柄で華奢なのに貫禄もある美女。
あれで3人の男の子の母親なんだ。

続いて王太子のアンドリュー殿下。
国王によく似ている。

第2王子のジョシュア殿下。
王妃様似だったのね。

最後にドルチアーノ殿下。
彼も父親似ね。

3人の王子に共通するのは黒髪に金色の瞳。
それも国王様と同じ。そしてイケメンだということ。

「ヴィー後で王太子殿下に軽く挨拶に行こうか。挨拶だけでいいからね。何も話さなくていいよ」

「ルイス兄様も一緒に居てくれる?」

「勿論だよ。ヴィーを1人にしないから安心して」

「じゃあ挨拶だけなら・・・」

「僕も隣にいるからね」

リアム兄様が頭を撫でてくれた。



次はトライガス王国からの使者の方々の入場だ。
しおりを挟む
感想 1,122

あなたにおすすめの小説

裏切りの先にあるもの

マツユキ
恋愛
侯爵令嬢のセシルには幼い頃に王家が決めた婚約者がいた。 結婚式の日取りも決まり数か月後の挙式を楽しみにしていたセシル。ある日姉の部屋を訪ねると婚約者であるはずの人が姉と口づけをかわしている所に遭遇する。傷つくセシルだったが新たな出会いがセシルを幸せへと導いていく。

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました

結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください> 私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

〖完結〗幼馴染みの王女様の方が大切な婚約者は要らない。愛してる? もう興味ありません。

藍川みいな
恋愛
婚約者のカイン様は、婚約者の私よりも幼馴染みのクリスティ王女殿下ばかりを優先する。 何度も約束を破られ、彼と過ごせる時間は全くなかった。約束を破る理由はいつだって、「クリスティが……」だ。 同じ学園に通っているのに、私はまるで他人のよう。毎日毎日、二人の仲のいい姿を見せられ、苦しんでいることさえ彼は気付かない。 もうやめる。 カイン様との婚約は解消する。 でもなぜか、別れを告げたのに彼が付きまとってくる。 愛してる? 私はもう、あなたに興味はありません! 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 沢山の感想ありがとうございます。返信出来ず、申し訳ありません。

嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜

みおな
恋愛
 伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。  そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。  その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。  そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。  ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。  堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・

[完結]婚約破棄してください。そして私にもう関わらないで

みちこ
恋愛
妹ばかり溺愛する両親、妹は思い通りにならないと泣いて私の事を責める 婚約者も妹の味方、そんな私の味方になってくれる人はお兄様と伯父さんと伯母さんとお祖父様とお祖母様 私を愛してくれる人の為にももう自由になります

【完結】彼の瞳に映るのは  

たろ
恋愛
 今夜も彼はわたしをエスコートして夜会へと参加する。  優しく見つめる彼の瞳にはわたしが映っているのに、何故かわたしの心は何も感じない。  そしてファーストダンスを踊ると彼はそっとわたしのそばからいなくなる。  わたしはまた一人で佇む。彼は守るべき存在の元へと行ってしまう。 ★ 短編から長編へ変更しました。

処理中です...