【完結】悪役令嬢はゲームに巻き込まれない為に攻略対象者の弟を連れて隣国に逃げます

kana

文字の大きさ
上 下
111 / 122
ウインティア王国編

111

しおりを挟む
~シンイー・ウェン伯爵令嬢視点~

去年、厳しくも優しい母が亡くなった。

最後まで『間違えないで、貴女は絶対に間違えないで』と常に言われていた言葉を残して・・・

母は私をすごく大切にしてくれた。

『情操教育は大事よ』とよく言っていた。
だからか幼い頃は領地の自然な環境で伸び伸びと育ててくれた。
自然の中で動物と触れ合い、近所の子供たちと泥んこになるまで遊びながらも、高位貴族の礼儀作法、マナーを学び10歳の時には完璧に身に付けられていたと思う。

勉強も家庭教師に習うよりも、母が教えてくれた方が分かりやすくて、どんどん頭に入っていった。

母は良いことをすれば褒めてくれたし、悪いことをすれば怒られたけれど、なぜダメなのか私が分かるまで何度も根気強く説明してくれた。

私が15歳になった時、王太子殿下の婚約者にと王家から打診がきた時は自信がなく、お父様にお願いしてお断りさせてもらった。

本当は令嬢たちの憧れの王太子殿下の婚約者に選ばれたことは、すごく嬉しかった。
眉目秀麗、頭脳明晰、性格も穏やかな王太子殿下。

お断りしてから、生意気だと令嬢たちからの嫌がらせが始まった。
仲良くしていた友人も離れて行った。

一人になっちゃったな。
お友達作り頑張ったのにな。

その日も上級生の令嬢たちに囲まれて手を上げられそうになった時に、助けてくれたのはジン殿下だった。

「僕の大切な人を傷つける奴は許さない」

いつも穏やかな殿下が怒りの目を令嬢たちに向けていた。

その日から私を守るように側にいてくれたジン殿下に惹かれるのに時間はかからなかった。

好きな人の側にいたい。
今度は私が彼を守りたい。
彼の支えになりたい。

思いが通じ合った私たちは婚約した。

本当はそんな優しい彼に相応しくないことは私が一番分かっていたのに・・・

婚約してから2ヶ月後、母は風邪をこじらせ肺炎で亡くなってしまった。

母のお葬式の間も母の言葉を頭に浮かべていた。

『自分の行動に責任を持ちなさい』

『貴女は卑怯な人間になってはダメよ』

『貴女は間違えないで』

母の教えは前世の記憶を持って生まれた私の心にいつも響いていた。
まるで私が前世で何をしたのか知っているかのような言葉。

何百回、何千回、何万回後悔したことか・・・
謝っても取り返しのつかないことがあると前世で学んだ。

誰にも言えない秘密。

母が亡くなって遺品の整理をしていた時に日本語で書かれた『日記帳』の文字。

懐かしい文字に申し訳ないと思いながらも『日記帳』のページを開いた。

最後まで読んで分かったことは、母も私と同じ転生者だったということ。

母の作った毒のせいで2人も人が亡くなったこと。

そして母は・・・罪から逃げてしまったこと・・・

『自分の行動に責任を持ちなさい』『貴女は卑怯な人間になってはダメよ』と何度も言っていたのは自分と同じ過ちを私に起こさせない為だったのね・・・

20年間ずっと母は自分を責めていたのね。 

罪悪感に押し潰されそうな母を父が支え、愛し合い、娘の私が生まれた。

15年間も側にいたのに母の苦しみに気付いてあげられなかった。

『日記帳』の中にあった乙女ゲーム。
前世の私は聞いたことはあってもゲーム等したことがなかった。
ヒロインが狙った男を落とすゲームだと認識していただけ。

母の『日記帳』に書いていたことが本当か気になって調べた。

ウインティア王国の第一王子の名前がルフラン、第二王子はゾルティー・・・母のやっていたゲームの攻略対象者と同じ名前。

他の攻略対象者のことも調べている時にジン様にウインティア王国のルフラン殿下の結婚式にコウカ国代表で一緒に参加するように伝えられた。

ルフラン殿下の相手はエリザベート・ウォルシュ侯爵令嬢。

本当なら今頃、彼女は悪役令嬢として断罪されているはずなのに・・・
母の『日記帳』と違う。

私と母が転生者なら他にも転生者がいてもおかしくはない。

可能性が高いとしたら悪役令嬢のエリザベート。
断罪されると知っていたならば、ゲームと同じ行動は起こさないだろう。

それともヒロインが単に他の攻略対象者を選んだから、エリザベートが断罪されなかったとか?

エリザベートに母の『日記帳』を見せてみよう。
読めなければ転生者じゃない。
読むことが出来れば20年前の真相が明らかになり、私は犯罪者の娘として処罰を受けるだろう。

ジン様ともお別れになる・・・

でも神様お願いします。
私はどんな処罰を受けても構いません。

だからお願いです。
ジン様とコウカ国を守って下さい。


ウォルシュ様に母の『日記帳』を渡した。
読んで感想を聞かせてくれると約束してくれた。

やはり貴女も転生者だったのね・・・



『自分の行動に責任を持ちなさい』

『貴女は卑怯な人間になってはダメよ』

『貴女は間違えないで』


はい、お母様。
私はもう後悔はしたくないのです。

覚悟は出来ました。

しおりを挟む
感想 313

あなたにおすすめの小説

王子の片思いに気付いたので、悪役令嬢になって婚約破棄に協力しようとしてるのに、なぜ執着するんですか?

いりん
恋愛
婚約者の王子が好きだったが、 たまたま付き人と、 「婚約者のことが好きなわけじゃないー 王族なんて恋愛して結婚なんてできないだろう」 と話ながら切なそうに聖女を見つめている王子を見て、王子の片思いに気付いた。 私が悪役令嬢になれば、聖女と王子は結婚できるはず!と婚約破棄を目指してたのに…、 「僕と婚約破棄して、あいつと結婚するつもり?許さないよ」 なんで執着するんてすか?? 策略家王子×天然令嬢の両片思いストーリー 基本的に悪い人が出てこないほのぼのした話です。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

悪役令嬢に転生かと思ったら違ったので定食屋開いたら第一王子が常連に名乗りを上げてきた

咲桜りおな
恋愛
 サズレア王国第二王子のクリス殿下から婚約解消をされたアリエッタ・ネリネは、前世の記憶持ちの侯爵令嬢。王子の婚約者で侯爵令嬢……という自身の状況からここが乙女ゲームか小説の中で、悪役令嬢に転生したのかと思ったけど、どうやらヒロインも見当たらないし違ったみたい。  好きでも嫌いでも無かった第二王子との婚約も破棄されて、面倒な王子妃にならなくて済んだと喜ぶアリエッタ。我が侯爵家もお姉様が婿養子を貰って継ぐ事は決まっている。本来なら新たに婚約者を用意されてしまうところだが、傷心の振り(?)をしたら暫くは自由にして良いと許可を貰っちゃった。  それならと侯爵家の事業の手伝いと称して前世で好きだった料理をしたくて、王都で小さな定食屋をオープンしてみたら何故か初日から第一王子が来客? お店も大繁盛で、いつの間にか元婚約者だった第二王子まで来る様になっちゃった。まさかの王家御用達のお店になりそうで、ちょっと困ってます。 ◆◇◇◇ ◇◇◇◇ ◇◇◇◆ ※料理に関しては家庭料理を作るのが好きな素人ですので、厳しい突っ込みはご遠慮いただけると助かります。 そしてイチャラブが甘いです。砂糖吐くというより、砂糖垂れ流しです(笑) 本編は完結しています。時々、番外編を追加更新あり。 「小説家になろう」でも公開しています。

【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。

扇 レンナ
恋愛
スパダリ系執着王太子×愛を知らない純情令嬢――婚約破棄から始まる、極上の恋 伯爵令嬢テレジアは小さな頃から両親に《次期公爵閣下の婚約者》という価値しか見出してもらえなかった。 それでもその利用価値に縋っていたテレジアだが、努力も虚しく婚約破棄を突きつけられる。 途方に暮れるテレジアを助けたのは、留学中だったはずの王太子ラインヴァルト。彼は何故かテレジアに「好きだ」と告げて、熱烈に愛してくれる。 その真意が、テレジアにはわからなくて……。 *hotランキング 最高68位ありがとうございます♡ ▼掲載先→ベリーズカフェ、エブリスタ、アルファポリス

【完結】大好き、と告白するのはこれを最後にします!

高瀬船
恋愛
侯爵家の嫡男、レオン・アルファストと伯爵家のミュラー・ハドソンは建国から続く由緒ある家柄である。 7歳年上のレオンが大好きで、ミュラーは幼い頃から彼にべったり。ことある事に大好き!と伝え、少女へと成長してからも顔を合わせる度に結婚して!ともはや挨拶のように熱烈に求婚していた。 だけど、いつもいつもレオンはありがとう、と言うだけで承諾も拒絶もしない。 成人を控えたある日、ミュラーはこれを最後の告白にしよう、と決心しいつものようにはぐらかされたら大人しく彼を諦めよう、と決めていた。 そして、彼を諦め真剣に結婚相手を探そうと夜会に行った事をレオンに知られたミュラーは初めて彼の重いほどの愛情を知る 【お互い、モブとの絡み発生します、苦手な方はご遠慮下さい】

悪役令嬢に転生した私が、なぜか暴君侯爵に溺愛されてるんですけど

夏目みや
恋愛
「ど、どうして私がラリエットになっているのよ!!」  これが小説の中だと気づいたのは、婚約者選びのパーティでのこと。  相手はゼロニス・ロンバルディ。侯爵家の跡継ぎで、暴君と噂されている。    婚約者が決まるまで、候補者たちはロンバルディの屋敷で過ごさせばならない。  ここから出るのは候補者を辞退するか、ゼロニスから「出ていけ」と命じられるかの二択。  しかも、私の立ち位置は──悪役令嬢のラリエット・メイデス。しかもちょい役で、はっきり言うとモブの当て馬。このままいけば、物語の途中であっさりと退場する。  なぜならゼロニスは、ここで運命の出会いを果たすのだから――  断罪されたくないとメイドに変装して働いていると、なぜかゼロニスの紅茶係に。 「好きだと言っている。俺以上の男などいないだろう」  なぜかグイグイとくるゼロニス。    ちょっ、あなた、ヒロインはどうしたの!?

もう長くは生きられないので好きに行動したら、大好きな公爵令息に溺愛されました

Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユリアは、8歳の時に両親を亡くして以降、叔父に引き取られたものの、厄介者として虐げられて生きてきた。さらにこの世界では命を削る魔法と言われている、治癒魔法も長年強要され続けてきた。 そのせいで体はボロボロ、髪も真っ白になり、老婆の様な見た目になってしまったユリア。家の外にも出してもらえず、メイド以下の生活を強いられてきた。まさに、この世の地獄を味わっているユリアだが、“どんな時でも笑顔を忘れないで”という亡き母の言葉を胸に、どんなに辛くても笑顔を絶やすことはない。 そんな辛い生活の中、15歳になったユリアは貴族学院に入学する日を心待ちにしていた。なぜなら、昔自分を助けてくれた公爵令息、ブラックに会えるからだ。 「どうせもう私は長くは生きられない。それなら、ブラック様との思い出を作りたい」 そんな思いで、意気揚々と貴族学院の入学式に向かったユリア。そこで久しぶりに、ブラックとの再会を果たした。相変わらず自分に優しくしてくれるブラックに、ユリアはどんどん惹かれていく。 かつての友人達とも再開し、楽しい学院生活をスタートさせたかのように見えたのだが… ※虐げられてきたユリアが、幸せを掴むまでのお話しです。 ザ・王道シンデレラストーリーが書きたくて書いてみました。 よろしくお願いしますm(__)m

推ししか勝たん!〜悪役令嬢?なにそれ、美味しいの?〜

みおな
恋愛
目が覚めたら、そこは前世で読んだラノベの世界で、自分が悪役令嬢だったとか、それこそラノベの中だけだと思っていた。 だけど、どう見ても私の容姿は乙女ゲーム『愛の歌を聴かせて』のラノベ版に出てくる悪役令嬢・・・もとい王太子の婚約者のアナスタシア・アデラインだ。 ええーっ。テンション下がるぅ。 私の推しって王太子じゃないんだよね。 同じ悪役令嬢なら、推しの婚約者になりたいんだけど。 これは、推しを愛でるためなら、家族も王族も攻略対象もヒロインも全部巻き込んで、好き勝手に生きる自称悪役令嬢のお話。

処理中です...