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ウインティア王国編

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侍女からエリーは既にパーティー会場である大広間の控え室で待機していると伝えられた。

ウォルシュ侯爵がエリーをエスコートして連れて行ったと告げられ少し残念な気持ちになるが、さっき学習ばかりだ失言は出来ない。

控え室のドアを軽くノックすると、「どうぞ」とエリーの声が聞こえた。

婚約式の時と同じ白いドレスだが、フワリと広がるスカート部分には俺の瞳と同じ金色で刺繍が施されている。エリーは妖精だったのか?女神だと思っていたが今のエリーの姿は妖精だ。

真っ直ぐエリーの元へ行き膝まづき手を握った。

「綺麗だエリー今すぐ結婚しよう」

「「「「「「・・・・・・・」」」」」」

目がエリーから離せない。
真っ赤になったエリーが可愛い。

「あ、に、う、え?」

ゾルティーもこの部屋にいたようだ。

「俺の正直な気持ちだ」

真っ直ぐエリーの目を見ながら伝える。

「だから!エリー嬢の前だけで言ってくださいと言いましたよね?」

部屋を見渡すといつものメンバーに、ウォルシュ侯爵夫妻、前侯爵夫妻、それに父上と母上までがいた。

お、俺はまたやってしまったのか?

恐る恐るエリーを見上げると目に涙を浮かべている。
泣かせるつもりはなかったんだ!

「すまない!本当に悪かった!エリー泣かないでくれ」

「ルフィ・・・私、嬉しくて・・・」

エリー俺の気持ちが分かってくれたのだな。

「でも、皆んなが見ている前で恥ずかしすぎるでしょ!」

『ゴツッ』

痛い!
握ってない方の手で拳骨を落とされた。

「まあ!昔の王妃様を見ているようだわ!」

「本当ね!わたくしも何度陛下に拳骨を落したことか!ね、あなた?」

「皆の前で言わないでくれ!威厳が無くなるだろ」

「も、申し訳ございません」

「エリーちゃんいいのよ。陛下も同じような場所で、同じセリフで同じ事をしたのよ」

「血は争えませんな、20年前を思い出しましたよ」

「兄上、明日も学習時間を設けますからね」

なんでだよ!

「そうね。わたしも付き合うわエリーの為にね」

「じゃあ僕もレイに付き合うよ」

「「仕方ないですね。私も付き合いますよ」」

「俺も面白いから付き合うぜ」

「兄上逃がしませんからね」

エリーに助けを求めても無駄だと目を見ただけで分かった。

父上だけが俺に同情の目を向けてくれるが、助けてはくれないようだ。



「皆さんそろそろ大広間に行きましょうか?」

ウォルシュ夫人がこの雰囲気を変えてくれそうだ。

「エリー会場で待っているわ」レイの言葉で俺とエリーを残して部屋から退室していった。


まだ俺は膝まづいたままだ。

そっとエリーを見上げると、困った顔なのだが微笑んでいた。

「もうダメよ?嬉しかったのは本当だけど、これからは2人きりの時に言ってね・・・皆の前だと慣れてないから恥ずかしいの」

「怒っていないのか?」

「ふふふ、ルフィ大好きよ」

そう言って俺の髪にキスしてくれた。

「口紅が取れちゃうからこれ以上はダメよ?」

「ならパーティーが終わったらいいのか?俺はエリーを抱きしめたいしキスもしたい!」

「そうね私もルフィに・・・キスしたいわ」

エリーが俺の手を引いて立たせてくれる。

「それでお願いがあるのだが」

「ん?私に出来ることならいいよ」

「エリーにしか出来ない」

「なに?」

「消えてしまったんだ。だ、だから・・・し、印をまたつけて欲しいんだ。」

「・・・いいわよ。キスマークね?」

「キスマークとは印のことか?」

「そうよ。前世ではそう呼ばれていたの」

そうか、キスマークか。
いいなその響き。

「俺もエリーにそのキスマークを付けたいのだがダメか?」

「・・・ルフィ?そんな可愛い顔で他の人にはお願いしちゃダメよ?」

可愛いだと?どんな顔だ?

「しない!エリー以外にキスマークを付けて欲しいとも思わない!付けたいと思うのもエリーだけだ」

「なら2人きりになった時にね」

エリーが笑ってくれる。
抱きしめようとした俺に「学習したのよね?」エリーのいつもよりも低い声に我に返った。

危ない!無意識って怖いな。

「だ、大丈夫だ!覚えている!」

「それならいいのよ」

顔は似ていないが今のエリーの笑顔とアランの笑顔が似ている。
この笑顔はダメなやつだ。
気を付けないとまたやらかしてしまう。





「ルフラン殿下、ウォルシュ侯爵令嬢お時間です。皆様揃われました」

「よし行こうエリー」

「ええ」

エリーをエスコートして会場に向かう。



「エリー緊張しているか?」

「ええ、でもルフィの婚約者は私だと、私のものだと認めさせるわ」

顔を引き締め背筋を伸ばし凛としたエリーは美しい。


『第一王子ルフラン殿下、婚約者エリザベート・ウォルシュ侯爵令嬢のご登場です』

俺たちの登場に一瞬静まり返った後に、盛大な拍手で迎えられた。

陛下と王妃の前に行き2人で礼をしてから隣に並ぶ。

「今日は我が息子ルフランとウォルシュ侯爵家のエリザベート嬢との婚約パーティーによく来てくれた。まだ未熟な2人だが長い目で見守ってやって欲しい」

父上が俺たちを紹介した後はダンスだ。

ホールの真ん中までエリーをエスコートする。
エリーと踊るのは初めてだ。

音楽に合わせてステップを踏む。

ああエリーを見せびらかしたい。
この綺麗で可愛いエリーは俺のものだ。 

すごく踊りやすい。
ダンスが楽しい。

「エリー愛している」

「私もルフィを愛してるわ」

エリーが笑顔になると、会場中がどよめく。

王家の認めた婚約者だ。
お披露目までしたんだ。
馬鹿じゃなきゃ手は出さない。

これからエリーに危害を加える奴には、それなりの処分が下される。
今もこの会場には目を光らせた影が何人も潜んでいる。




ああもう曲が終わる。

「エリー俺を選んでくれて本当にありがとう。生涯俺はエリーだけを愛すると誓う」

俺を見上げて涙ぐむエリーの額にキスを落とす。

「また皆の前で・・でも今は許すわ」

このままエリーを腕の中に閉じ込めてしまいたい。

それにしても騒がしい会場だな。

この後は面倒だが挨拶にくる貴族の相手だ。
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