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今回の滞在中は、遊んでばかりだっけれど次からは当主教育が始まるらしい。
もちろんアランも一緒に受ける。
ここでも私を着飾りたがる伯母様とメイドたち、美味し料理とお菓子で胃袋を掴んでくる料理人たち、私に遠慮しながらも手伝わせてくれた庭師たちにも、常に感謝の気持ちを伝えていた。
公爵家の使用人達とも仲良くなれたと思う。
帰りの馬車を待たせているのに、伯母様は帰らないで~と大泣きしながら私とアランを抱きしめて離さない。
「伯母上また4ヶ月後に来ますよ。」
「そうよ。帰ってからも手紙を送るからね」
伯父様に促されやっと離してくれた。
見送りに出てくれたメイドたちも涙ぐんでいる。
別れを惜しむほど受け入れられてると思うと素直に嬉しい。
「伯父様、伯母様、そして皆さん、お世話になりました。また来ます。それまで元気でお過ごしください」
笑顔で馬車に乗り込み姿が見えなくなるまで手を振った。
「アラン、私養子にいってアランと毎日会えなくなるのは寂しいけど、やっていけそうな気がするわ」
「そうだね。皆んな優しい人ばかりだったね」
そんな話をしながらも次の滞在から次期公爵家当主となる教育が始まるのを不安半分、ワクワク半分だと正直に言った。
アランも次期侯爵家当主だ。
公爵家の教育を受けるのが楽しみだと言っていた。
帰りの道中も何事も無く我が家に到着した。
邸の前には祖父母と使用人たちが勢揃いで出迎えてくれた。
両親はまた海外に出ているらしい。
生まれた時からずっと一緒にいた祖父母は相当寂しかったようで、私とアランを抱きしめて出迎えた後は離してくれない。
サロンでお茶をしながら滞在中のことを身振り手振りで話した。
公爵家の皆んながとても良くしてくれたこと、ピクニックや遠出をしたこと、街への買い物や人気のカフェに行ったこと。
祖父母も楽しそうに聞いてくれた。
話しも落ち着いた頃、お爺様から「今年も王家から1ヶ月後にあるお茶会の招待状が届いているぞ」と言われた。
はぁ?
私は出入り禁止なのに?
「ああ、アラン宛ですわね?私は出入り禁止なので行けませんわ」
ニッコリ笑って出席を拒否する。
「いや、2人に届いている」
「絶対に行きません!嫌いだと、二度と来るな!と言われたのですよ?」
自分でも嫌そうな顔になっていると分かる。
「ん~僕は出席しないとダメですよね?」
「決まりだからなあ」
祖父も困った顔になっている。
「確認したい事もありますので僕は出席します。」
「え?アラン行くの?」
「出入り禁止はエリーだけなんだから、僕は義務でもあるし行ってくるよ。大丈夫だよ、エリーは大人しく待っていてね」
微笑んで私の頭を撫でくる。
1人で行かせるのは不安だが、背に腹は変えられない。
王子にも攻略対象者たちにも会いたくない、接点すら持ちたくない。
彼らは私を断罪するのだ。
ヒロインが登場する頃には私たちはアトラニア王国の学院に通っているはずだ。
まだヒロインに会う時期ではないから1人で参加しても大丈夫だろう。
ただ攻略対象者たちとは親しくなって欲しくないなあ。
渋々アランを送り出すことにした。
お茶会までに私たちの誕生日会を例年通り、我が侯爵家の使用人たちも含めて身内だけで盛大に祝ってくれた。
もう、12歳になった。
私たちの誕生日は2月、毎年開かれるお茶会が3月、15歳のお茶会にアランが参加したあとにアトラニア王国に向かう予定だ。
ヒロインが"異世界転移"してくるのは、その15歳のお茶会ではないだろうか?
タイミング的に怪しいのはその日だと思う。
アランもヒロインに出会うとひと目で惹かれてしまうのだろうか?
出会う前に何かしらの理由をつけてお茶会には参加せず、アランを連れてアトラニア王国に逃げる作戦も考えないと。
あと3年でアトラニア王国の学院に入学する。
~アラン視点~
エリーが寝たあとに祖父母と話し合った。
「僕たちがアトラニア王国に留学することや、養子の話は他家には漏らさないようにしましょう。もちろん王家にもです。」
「ああ、そのつもりだ」
「ええ、その方が良さそうね。どこで邪魔が入るかもしれないものね。」
これで一安心だ。
使用人にも優しいエリーがあれほど嫌がっているんだ、無理に王家との繋がりも必要ない。
養子にいくのだから伯父上たちもアトラニア王国内でエリーの結婚相手を望むだろう。
エリーは貴族令嬢としての礼儀作法や所作もどの令嬢よりも美しい。
そして綺麗な顔立ちに、貴族だからといって奢ることの無い謙虚な性格、使用人にも、護衛騎士にも当たり前にお礼を言う。
そんなエリーだから、皆から愛されている。
エリーは自分のことを普通だと言うが、お茶会で他家の令嬢を見る限り、すべてとは言わないが自分勝手で自己中心的な令嬢が目につく。
この先のことを考えるとエリーに目を付けられるのは我が家も、カトルズ公爵家も困る。
エリーは今回からお茶会には不参加になる。
これでエリーの評判は落ちるだろうが、養子にいく予定のエリーには痛くも痒くもない。二度と王宮のお茶会に参加できないことを喜んでいるくらいだ。
お茶会当日、出発しようとする僕に「言い寄ってくる女狐令嬢には気をつけるのよ!女は2つの顔を持っているの騙されないでね」などと同じ12歳だとは思えない発言をして周りを驚かせていた。
エリー、小説の読みすぎだよ。
お茶会では王妃と王子たちへの挨拶から始まる。
僕の番になり挨拶をすると「ウォルシュ侯爵令息、姉君は体調でも崩しているのか?」と
第一王子から声がかかった。
「姉は去年のお茶会で王宮への出入り禁止を命じられましたので、もうここに来ることはございません。」
周りがザワついたが、ワザと悲しそうな顔を作って「それでは失礼します」と礼をしてすぐに下がった。
王子は目を見開いて真っ青な顔になっていた。
ちょっと可哀想だったかな?
でもエリーは出入り禁止を喜んでいるんだよね。
すべての参加者の挨拶が終わると、令息令嬢も自由に動き出すのだが、第一王子は椅子に座ったまま呆然としている。
いつものように周りを令嬢たちに囲まれても、無難な返事をしてやり過ごしているように見えるが、目はチラチラと僕の方を見ている。
何度も見ては僕に話しかけたそうにしているが僕から話しかけることはしない。
僕は側近候補になりたいとも友人候補になりたいとも思ったことがないからね。
王子に近づく理由もない。
王子の観察は止めて、少し時間を潰したら帰ろうかと思っていたら、僕まで令嬢たちに囲まれてしまった。
僕に腕を絡めてくる令嬢、あざとく上目遣いで話しかけてくる令嬢、自分と結婚するメリットまで言ってくる令嬢もいた。
これがエリーの言っていた女狐令嬢か!
小説の中だけでなく、実在していたことに驚いた。
伯父上が子息だけが受ける教育があると言っていたのは、こんな時の為に軽く受け流す方法を教えてくれるものかもしれない。
まだ12歳の僕には恋愛は早過ぎる。
そう思っていたのに、僕は出会うことになるんだ。
ひと目で惹かれてしまった彼女に。
その出会いが僕とエリーの人生を変えることになるのを、この時の僕はまだ知らない。
王子たちは毎回令嬢たちにこれ以上のアピールをされても上手く躱していたのなら尊敬する。
王子の目には、王子に関心がまったくないエリーが新鮮に映ったのも仕方のないことだったのかもしれない。
エリーがいつも褒めてくれる笑顔を作って令嬢たちを躱していった。
疲れた。
来年からは僕も義務さえなければ不参加にしたい。
それが出来たら楽なのに。
何か言いたげな王子に気付かないふりをして会場を後にした。
もちろんアランも一緒に受ける。
ここでも私を着飾りたがる伯母様とメイドたち、美味し料理とお菓子で胃袋を掴んでくる料理人たち、私に遠慮しながらも手伝わせてくれた庭師たちにも、常に感謝の気持ちを伝えていた。
公爵家の使用人達とも仲良くなれたと思う。
帰りの馬車を待たせているのに、伯母様は帰らないで~と大泣きしながら私とアランを抱きしめて離さない。
「伯母上また4ヶ月後に来ますよ。」
「そうよ。帰ってからも手紙を送るからね」
伯父様に促されやっと離してくれた。
見送りに出てくれたメイドたちも涙ぐんでいる。
別れを惜しむほど受け入れられてると思うと素直に嬉しい。
「伯父様、伯母様、そして皆さん、お世話になりました。また来ます。それまで元気でお過ごしください」
笑顔で馬車に乗り込み姿が見えなくなるまで手を振った。
「アラン、私養子にいってアランと毎日会えなくなるのは寂しいけど、やっていけそうな気がするわ」
「そうだね。皆んな優しい人ばかりだったね」
そんな話をしながらも次の滞在から次期公爵家当主となる教育が始まるのを不安半分、ワクワク半分だと正直に言った。
アランも次期侯爵家当主だ。
公爵家の教育を受けるのが楽しみだと言っていた。
帰りの道中も何事も無く我が家に到着した。
邸の前には祖父母と使用人たちが勢揃いで出迎えてくれた。
両親はまた海外に出ているらしい。
生まれた時からずっと一緒にいた祖父母は相当寂しかったようで、私とアランを抱きしめて出迎えた後は離してくれない。
サロンでお茶をしながら滞在中のことを身振り手振りで話した。
公爵家の皆んながとても良くしてくれたこと、ピクニックや遠出をしたこと、街への買い物や人気のカフェに行ったこと。
祖父母も楽しそうに聞いてくれた。
話しも落ち着いた頃、お爺様から「今年も王家から1ヶ月後にあるお茶会の招待状が届いているぞ」と言われた。
はぁ?
私は出入り禁止なのに?
「ああ、アラン宛ですわね?私は出入り禁止なので行けませんわ」
ニッコリ笑って出席を拒否する。
「いや、2人に届いている」
「絶対に行きません!嫌いだと、二度と来るな!と言われたのですよ?」
自分でも嫌そうな顔になっていると分かる。
「ん~僕は出席しないとダメですよね?」
「決まりだからなあ」
祖父も困った顔になっている。
「確認したい事もありますので僕は出席します。」
「え?アラン行くの?」
「出入り禁止はエリーだけなんだから、僕は義務でもあるし行ってくるよ。大丈夫だよ、エリーは大人しく待っていてね」
微笑んで私の頭を撫でくる。
1人で行かせるのは不安だが、背に腹は変えられない。
王子にも攻略対象者たちにも会いたくない、接点すら持ちたくない。
彼らは私を断罪するのだ。
ヒロインが登場する頃には私たちはアトラニア王国の学院に通っているはずだ。
まだヒロインに会う時期ではないから1人で参加しても大丈夫だろう。
ただ攻略対象者たちとは親しくなって欲しくないなあ。
渋々アランを送り出すことにした。
お茶会までに私たちの誕生日会を例年通り、我が侯爵家の使用人たちも含めて身内だけで盛大に祝ってくれた。
もう、12歳になった。
私たちの誕生日は2月、毎年開かれるお茶会が3月、15歳のお茶会にアランが参加したあとにアトラニア王国に向かう予定だ。
ヒロインが"異世界転移"してくるのは、その15歳のお茶会ではないだろうか?
タイミング的に怪しいのはその日だと思う。
アランもヒロインに出会うとひと目で惹かれてしまうのだろうか?
出会う前に何かしらの理由をつけてお茶会には参加せず、アランを連れてアトラニア王国に逃げる作戦も考えないと。
あと3年でアトラニア王国の学院に入学する。
~アラン視点~
エリーが寝たあとに祖父母と話し合った。
「僕たちがアトラニア王国に留学することや、養子の話は他家には漏らさないようにしましょう。もちろん王家にもです。」
「ああ、そのつもりだ」
「ええ、その方が良さそうね。どこで邪魔が入るかもしれないものね。」
これで一安心だ。
使用人にも優しいエリーがあれほど嫌がっているんだ、無理に王家との繋がりも必要ない。
養子にいくのだから伯父上たちもアトラニア王国内でエリーの結婚相手を望むだろう。
エリーは貴族令嬢としての礼儀作法や所作もどの令嬢よりも美しい。
そして綺麗な顔立ちに、貴族だからといって奢ることの無い謙虚な性格、使用人にも、護衛騎士にも当たり前にお礼を言う。
そんなエリーだから、皆から愛されている。
エリーは自分のことを普通だと言うが、お茶会で他家の令嬢を見る限り、すべてとは言わないが自分勝手で自己中心的な令嬢が目につく。
この先のことを考えるとエリーに目を付けられるのは我が家も、カトルズ公爵家も困る。
エリーは今回からお茶会には不参加になる。
これでエリーの評判は落ちるだろうが、養子にいく予定のエリーには痛くも痒くもない。二度と王宮のお茶会に参加できないことを喜んでいるくらいだ。
お茶会当日、出発しようとする僕に「言い寄ってくる女狐令嬢には気をつけるのよ!女は2つの顔を持っているの騙されないでね」などと同じ12歳だとは思えない発言をして周りを驚かせていた。
エリー、小説の読みすぎだよ。
お茶会では王妃と王子たちへの挨拶から始まる。
僕の番になり挨拶をすると「ウォルシュ侯爵令息、姉君は体調でも崩しているのか?」と
第一王子から声がかかった。
「姉は去年のお茶会で王宮への出入り禁止を命じられましたので、もうここに来ることはございません。」
周りがザワついたが、ワザと悲しそうな顔を作って「それでは失礼します」と礼をしてすぐに下がった。
王子は目を見開いて真っ青な顔になっていた。
ちょっと可哀想だったかな?
でもエリーは出入り禁止を喜んでいるんだよね。
すべての参加者の挨拶が終わると、令息令嬢も自由に動き出すのだが、第一王子は椅子に座ったまま呆然としている。
いつものように周りを令嬢たちに囲まれても、無難な返事をしてやり過ごしているように見えるが、目はチラチラと僕の方を見ている。
何度も見ては僕に話しかけたそうにしているが僕から話しかけることはしない。
僕は側近候補になりたいとも友人候補になりたいとも思ったことがないからね。
王子に近づく理由もない。
王子の観察は止めて、少し時間を潰したら帰ろうかと思っていたら、僕まで令嬢たちに囲まれてしまった。
僕に腕を絡めてくる令嬢、あざとく上目遣いで話しかけてくる令嬢、自分と結婚するメリットまで言ってくる令嬢もいた。
これがエリーの言っていた女狐令嬢か!
小説の中だけでなく、実在していたことに驚いた。
伯父上が子息だけが受ける教育があると言っていたのは、こんな時の為に軽く受け流す方法を教えてくれるものかもしれない。
まだ12歳の僕には恋愛は早過ぎる。
そう思っていたのに、僕は出会うことになるんだ。
ひと目で惹かれてしまった彼女に。
その出会いが僕とエリーの人生を変えることになるのを、この時の僕はまだ知らない。
王子たちは毎回令嬢たちにこれ以上のアピールをされても上手く躱していたのなら尊敬する。
王子の目には、王子に関心がまったくないエリーが新鮮に映ったのも仕方のないことだったのかもしれない。
エリーがいつも褒めてくれる笑顔を作って令嬢たちを躱していった。
疲れた。
来年からは僕も義務さえなければ不参加にしたい。
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