上 下
19 / 42

19

しおりを挟む
「聞いたな?」
「「ああ」」
「調べて報告しろ」
「「御意」」
一礼して2人は去った。
ライアンとダンゼルにはこれだけで伝わる。


さっきのティアの貼り付けた微笑みを見て胸が痛くなった。
貴族女性はみんなあの顔だ。
特に高位に行くほどあの顔を崩すことは無い。
高位の令嬢らしくない、照れ顔も素直に喜びを表す顔もティアの魅力なのに、あんな顔をさせるなんて・・・


教室に向かっている最中にもヒソヒソとティアの噂が聞こえてくる。
気分が悪い。

午前の講義が終わり急いで食堂への通路で待機する。
前回で上手く関わることが出来たんだ、今回は自然に誘えるはずだ。

来た!いつもの友人2人と並んで会話をしながら微笑んでる顔が見れて安心した。

偶然を装って「ティア」と声をかけるとパァと満面の笑みでこっちに寄って来るなり、「ルイ様!お見舞いの品ありがとうございました。気を使っていただいて感謝致します。」と見事なカーテシーを見せてくれた。
一瞬見惚れて思考が遥か彼方に飛び掛けたがライアンの「さぁ一緒にランチにしよう」と赤髪を誘っている。
否定する間もなく自然にエスコートするライアン恐るべし!
ダンゼルもそれに続いて緑髪をエスコートする。
おい!お前らどこでそんな技術を身に付けたんだ!
もちろん俺も流れに乗って腕を出す。
恥ずかしそうに「ルイ様ありがとうございます」と小さな声が聞こえた「俺がティアをエスコートするのは当たり前だろ」と空いてる方の手でそっとティアの頭をポンポンと撫でてみた。
調子に乗りすぎたかと不安になったが、ティアは真っ赤になって上目遣いで見上げてきた。可愛い過ぎる!きっと俺の顔も真っ赤だろうな。

食堂に入った時、雰囲気がいつもと違った。
またティアの噂だ。
ティアの耳に入れたくなく鋭い目付きで周りを見渡すと、察したのか目線を逸らし違う会話にシフトしたようだ。

この食堂は誰もが使用することができる。
メニューも豊富で美味しいと評判だ。

各自が並んで好きな料理をトレーに乗せていくのが通常だ。

ティアはスープとサラダ、サンドイッチを選んだようだ。
デザートの並んだコーナーでは少し迷ってチーズケーキを選んだ。
俺はかぶらないように生クリームたっぷりのシフォンケーキを選んだ。
もちろんティア用だ。
チーズケーキかシフォンケーキで迷ってるのが視線でわかったからな。

俺がシフォンケーキを手に取ると、大きな目をパチクリさせて俺を見上げた。前に甘い物は食べないことを覚えてくれてたんだなと笑みが出た。「これはティアの分だよ」と屈んでティアの耳元で囁くとビクッと肩が揺れたあと真っ赤になりコクコクと頷いて、「ありがとうございます。もう食いしん坊がバレてしまって恥ずかしです」と下を向いてしまった。

今日も可愛い!
もちろん席は俺の隣だ。


「怪我の状態はどうなんだ?」と聞くとまだ痛みはあるが大丈夫だと、学園を休んだのも過保護なレオンと父親の公爵が大騒ぎをするから納得させる為に休んだようなものだと教えてくれた。

予鈴が鳴るまで会話を楽しみ今回はティアの教室まで送った。もちろんエスコートは忘れないぞ!
ティアの教室を覗き周りを人睨みしてから、皆に聞こえるように「ティア何かあれば俺に言うんだよ」と頭を撫でて教室を後にした。
これで教室内は大丈夫だと思うのだが。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約者を想うのをやめました

かぐや
恋愛
女性を侍らしてばかりの婚約者に私は宣言した。 「もうあなたを愛するのをやめますので、どうぞご自由に」 最初は婚約者も頷くが、彼女が自分の側にいることがなくなってから初めて色々なことに気づき始める。 *書籍化しました。応援してくださった読者様、ありがとうございます。

家出した伯爵令嬢【完結済】

弓立歩
恋愛
薬学に長けた家に生まれた伯爵令嬢のカノン。病弱だった第2王子との7年の婚約の結果は何と婚約破棄だった!これまでの尽力に対して、実家も含めあまりにもつらい仕打ちにとうとうカノンは家を出る決意をする。 番外編において暴力的なシーン等もありますので一応R15が付いています 6/21完結。今後の更新は予定しておりません。また、本編は60000字と少しで柔らかい表現で出来ております

愛する貴方の愛する彼女の愛する人から愛されています

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
「ユスティーナ様、ごめんなさい。今日はレナードとお茶をしたい気分だからお借りしますね」 先に彼とお茶の約束していたのは私なのに……。 「ジュディットがどうしても二人きりが良いと聞かなくてな」「すまない」貴方はそう言って、婚約者の私ではなく、何時も彼女を優先させる。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 公爵令嬢のユスティーナには愛する婚約者の第二王子であるレナードがいる。 だがレナードには、恋慕する女性がいた。その女性は侯爵令嬢のジュディット。絶世の美女と呼ばれている彼女は、彼の兄である王太子のヴォルフラムの婚約者だった。 そんなジュディットは、事ある事にレナードの元を訪れてはユスティーナとレナードとの仲を邪魔してくる。だがレナードは彼女を諌めるどころか、彼女を庇い彼女を何時も優先させる。例えユスティーナがレナードと先に約束をしていたとしても、ジュディットが一言言えば彼は彼女の言いなりだ。だがそんなジュディットは、実は自分の婚約者のヴォルフラムにぞっこんだった。だがしかし、ヴォルフラムはジュディットに全く関心がないようで、相手にされていない。どうやらヴォルフラムにも別に想う女性がいるようで……。

婚約者が病弱な妹に恋をしたので、私は家を出ます。どうか、探さないでください。

待鳥園子
恋愛
婚約者が病弱な妹を見掛けて一目惚れし、私と婚約者を交換できないかと両親に聞いたらしい。 妹は清楚で可愛くて、しかも性格も良くて素直で可愛い。私が男でも、私よりもあの子が良いと、きっと思ってしまうはず。 ……これは、二人は悪くない。仕方ないこと。 けど、二人の邪魔者になるくらいなら、私が家出します! 自覚のない純粋培養貴族令嬢が腹黒策士な護衛騎士に囚われて何があっても抜け出せないほどに溺愛される話。

一番悪いのは誰

jun
恋愛
結婚式翌日から屋敷に帰れなかったファビオ。 ようやく帰れたのは三か月後。 愛する妻のローラにやっと会えると早る気持ちを抑えて家路を急いだ。 出迎えないローラを探そうとすると、執事が言った、 「ローラ様は先日亡くなられました」と。 何故ローラは死んだのは、帰れなかったファビオのせいなのか、それとも・・・

見捨てられたのは私

梅雨の人
恋愛
急に振り出した雨の中、目の前のお二人は急ぎ足でこちらを振り返ることもなくどんどん私から離れていきます。 ただ三人で、いいえ、二人と一人で歩いていただけでございました。 ぽつぽつと振り出した雨は勢いを増してきましたのに、あなたの妻である私は一人取り残されてもそこからしばらく動くことができないのはどうしてなのでしょうか。いつものこと、いつものことなのに、いつまでたっても惨めで悲しくなるのです。 何度悲しい思いをしても、それでもあなたをお慕いしてまいりましたが、さすがにもうあきらめようかと思っております。

【完結】婚約者を寝取られた公爵令嬢は今更謝っても遅い、と背を向ける

高瀬船
恋愛
公爵令嬢、エレフィナ・ハフディアーノは目の前で自分の婚約者であり、この国の第二王子であるコンラット・フォン・イビルシスと、伯爵令嬢であるラビナ・ビビットが熱く口付け合っているその場面を見てしまった。 幼少時に婚約を結んだこの国の第二王子と公爵令嬢のエレフィナは昔から反りが合わない。 愛も情もないその関係に辟易としていたが、国のために彼に嫁ごう、国のため彼を支えて行こうと思っていたが、学園に入ってから3年目。 ラビナ・ビビットに全てを奪われる。 ※初回から婚約者が他の令嬢と体の関係を持っています、ご注意下さい。 コメントにてご指摘ありがとうございます!あらすじの「婚約」が「婚姻」になっておりました…!編集し直させて頂いております。 誤字脱字報告もありがとうございます!

【完結】お姉様の婚約者

七瀬菜々
恋愛
 姉が失踪した。それは結婚式当日の朝のことだった。  残された私は家族のため、ひいては祖国のため、姉の婚約者と結婚した。    サイズの合わない純白のドレスを身に纏い、すまないと啜り泣く父に手を引かれ、困惑と同情と侮蔑の視線が交差するバージンロードを歩き、彼の手を取る。  誰が見ても哀れで、惨めで、不幸な結婚。  けれど私の心は晴れやかだった。  だって、ずっと片思いを続けていた人の隣に立てるのだから。  ーーーーーそう、だから私は、誰がなんと言おうと、シアワセだ。

処理中です...