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転移で戻った私の顔を見て『無事でよかった』と抱きしめてきたのは今にも泣きそうな顔のレオニールだった。
どうも、私たちが転移で飛ぶ瞬間に部屋に飛び込んできたらしい。
行き先が分からないため追いかけることもできず、お母様に聞いても大丈夫としか言ってくれなくて、ずっと不安なまま帰ってくるのを待っていたらしい。
どうしてレオニールが我が家に先触れもなく、許可もない状況で飛び込んできたのは、たまたいま我が家の前を馬車で通った時に、馬車の窓から見える邸が夜とはいえ異様に黒かったそうだ。
ああ!オルセロー嬢は影を邸全体に纏わせていたから外からはそう見えたんだ。
元々ベルティナ様とリナ様が誰もいない場所で突き飛ばされたという証言からレオニールたちは黒魔法が使用されたのではと推測していたのもあり、次に狙われたのが私だと何故か確信したらしい。そうなるといてもたってもいられず門番の静止も聞かず、それどころか昏睡させて邸に飛び込んだそうだ。
⋯⋯心配してくれたのは有り難いけれど、一歩間違えたら罪に問われるからね?
「おい。いつまでフィオナの手を握っているんだ?」
いつものお父様とは違う低い声で言われてから視線を落とすと確かに手を握られている。
あんまり意識していなかった。というか、違和感がなかった。
「あなた、いいじゃない。レオニールくんはフィオナの旦那様になっていたかもしれないのよ?」
私の手を握るレオニールの手に力が入ったのが分かった。
確かに私がフィオナになった日は婚約する話し合いが行われた日だった。
「まあ皆んな疲れているでしょうからお茶でも飲みましょう」
⋯⋯まだレオニールが手を離さないから必然で隣に座ることになった。
お母様はニコニコしているけれど、お父様は珍しく眉間にしわを寄せている。
そのお父様をチラチラと気遣うように見ているのはジン。
面白そうな顔のサラ。
尊敬の眼差しでお父様を見るエル姉様とアル兄様。
「あ、あの、オルセロー嬢がそこに転がっているのは?」
当然気になるよね~
なんて言って説明すればいいのか⋯⋯全部は話せないよね。
「ああ、彼女はゴロツキを使って我が家を襲撃してきたんだ。まずは我が家の見習い執事に私を毒殺させ、その後フィオナを殺すつもりだったようだ」
「⋯⋯は?」
なんでもない事のように話すお父様にレオニールは理解が追いつかないようだ。
「ま、見習い執事とゴロツキ共は地下牢に閉じ込めている。我が家の護衛にかかれば今頃すべて白状しているだろう」
へぇ~この邸に地下牢なんてあったんだ。
「⋯⋯え?」
「まあ、男爵令嬢如きが公爵家当主と令嬢を殺そうとしたんだ。証言も証人もいる言い逃れは出来ない」
どんどんレオニールの握る手が強くなって痛い⋯⋯けれど、いつも冷静なレオニールが怒っているのが伝わってきて何も言えない。
どうも、私たちが転移で飛ぶ瞬間に部屋に飛び込んできたらしい。
行き先が分からないため追いかけることもできず、お母様に聞いても大丈夫としか言ってくれなくて、ずっと不安なまま帰ってくるのを待っていたらしい。
どうしてレオニールが我が家に先触れもなく、許可もない状況で飛び込んできたのは、たまたいま我が家の前を馬車で通った時に、馬車の窓から見える邸が夜とはいえ異様に黒かったそうだ。
ああ!オルセロー嬢は影を邸全体に纏わせていたから外からはそう見えたんだ。
元々ベルティナ様とリナ様が誰もいない場所で突き飛ばされたという証言からレオニールたちは黒魔法が使用されたのではと推測していたのもあり、次に狙われたのが私だと何故か確信したらしい。そうなるといてもたってもいられず門番の静止も聞かず、それどころか昏睡させて邸に飛び込んだそうだ。
⋯⋯心配してくれたのは有り難いけれど、一歩間違えたら罪に問われるからね?
「おい。いつまでフィオナの手を握っているんだ?」
いつものお父様とは違う低い声で言われてから視線を落とすと確かに手を握られている。
あんまり意識していなかった。というか、違和感がなかった。
「あなた、いいじゃない。レオニールくんはフィオナの旦那様になっていたかもしれないのよ?」
私の手を握るレオニールの手に力が入ったのが分かった。
確かに私がフィオナになった日は婚約する話し合いが行われた日だった。
「まあ皆んな疲れているでしょうからお茶でも飲みましょう」
⋯⋯まだレオニールが手を離さないから必然で隣に座ることになった。
お母様はニコニコしているけれど、お父様は珍しく眉間にしわを寄せている。
そのお父様をチラチラと気遣うように見ているのはジン。
面白そうな顔のサラ。
尊敬の眼差しでお父様を見るエル姉様とアル兄様。
「あ、あの、オルセロー嬢がそこに転がっているのは?」
当然気になるよね~
なんて言って説明すればいいのか⋯⋯全部は話せないよね。
「ああ、彼女はゴロツキを使って我が家を襲撃してきたんだ。まずは我が家の見習い執事に私を毒殺させ、その後フィオナを殺すつもりだったようだ」
「⋯⋯は?」
なんでもない事のように話すお父様にレオニールは理解が追いつかないようだ。
「ま、見習い執事とゴロツキ共は地下牢に閉じ込めている。我が家の護衛にかかれば今頃すべて白状しているだろう」
へぇ~この邸に地下牢なんてあったんだ。
「⋯⋯え?」
「まあ、男爵令嬢如きが公爵家当主と令嬢を殺そうとしたんだ。証言も証人もいる言い逃れは出来ない」
どんどんレオニールの握る手が強くなって痛い⋯⋯けれど、いつも冷静なレオニールが怒っているのが伝わってきて何も言えない。
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