20 / 48
20
しおりを挟む
驚いて固まったままのレオニールに後ろから声がかかった。
「おーい、レオニール誰が来たの?」
・・・・・・。
「あの~、呼ばれていますよ?」
「あ、ああ」
反応が薄いままだし、このままお礼を言えばいいか。
「え~と、昨日医務室に運んでいただいたと聞きましたの。どうもありがとうございました」
「ああ」
お礼も言ったしもういいよね。
「それでは失礼します」
「あ~~!フォーライト姉妹じゃん!エルシア様は今日も女神のように美しいね。妹のフィオナちゃんも評判通りの可愛らしさだね」
痺れを切らしたのかレオニールの後ろから顔を出した軽そうな男。
ああ、この人転生者と仲良くしていた人だ。
いや、転生者だけでなく女なら誰にでも声をかけていた。もちろんフィオナにも・・・無理だ。私はチャラ男は好きじゃない。
で、次に出てきたのはリオネル殿下。
生徒会長だもんね・・・居てもおかしくはない。
「エルシア嬢!来てくれたんだね!さあ早く中に入って!ラシュベルお茶の用意を!」
殿下にはエル姉様しか見えていないんだね。
デカい私を素通りして後ろのエル姉様にそれはもう満面の笑みを向けている。嬉しさが隠しきれていないよ。
やっぱりワンコだ。
「いえ、お気遣いなく。それにもう用は済みましたので失礼しますわ」
エル姉様・・・通常運転だね。
引き止めるリオネル殿下に失礼しますと頭を下げて背を向けて歩き出そうとした時、今まで固まっていたレオニールに手首を掴まれた。
「フィー、フィオナ嬢はもう大丈夫なのか?」
「え、あ、はい」
「そうか・・・」
「・・・」
心配してくれていたんだ。
それにしてもレオニールって背が高い。私より頭ひとつ分は高い。これだったらお姫様抱っこも余裕でできたか?
「おいレオニールいつまでフィオナ嬢の手を握っているんだ?」
そうだった。手首を掴まれたままだった。
リオネル殿下に言われても離す気配がない。
「あの「そろそろ離して下さいませ」」
「・・・わ、悪い!」
エル姉様の声に反応してやっと離してくれた。
もう一度お礼を言って、エル姉様に手を引かれてその場を後にした。
結局何だったんだろう?体調が悪かったのかな?
「レオニールが令嬢の手首を掴むなんて驚いた」
「私はレオニールは女性に興味がないのかと思っていましたよ」
「だよな」
実際興味はない。
・・・いや、フィオナ嬢のことだけは気になる。
今日は昨日と違って顔色も良かった。
まさか、お礼を言うためにわざわざ俺に会いに来てくれるなんてな。
目が会った瞬間、時間が止まったような不思議な感覚がした。彼女の藍色の瞳が真っ直ぐに俺に向けられたのは今日が初めてかもしれない。
あの時ですら俺は彼女の目の端に映っていただけだった。
「フィオナちゃんって実物はすっごく可愛かったね。でも僕がどんなに頑張っても彼女は相手にしてくれなさそうだよね。残念」
彼女に下手に手を出したら死ぬぞ?
「エルシア嬢の妹に遊びで手を出すのはやめてくれよ」
同感だ。
「アンバーには最近お気に入りの子がいるだろ」
「・・・でもその女俺にも色目使ってきたぞ」
なるほどね。
アンバーと仲良くし、あわよくばその繋がりから高位貴族の子息との婚姻でも目論んでいそうだな。
「ああ!あの子ね。隠しているつもりなんだろうけど、下心見え見えでお馬鹿で可愛いんだよ。それにあの子可愛い顔してかなりえげつない性格しているよ」
どんな女だよ。
「・・・私にもよろけた振りしてより掛かろうとしてきた」
「実は私にも上目遣いを使ってきましたが、面倒なことになる前に無視を決め込みました」
おいおい、俺以外全員じゃないか。
凄い女だな。
「あの日、『異界の使者』の会話を聞いてなかったら私はその阿呆な令嬢を利用してエルシア嬢に親しいところを見せつけていたかもしれない」
殿下の言葉にラシュベルとグレンも気まずそうに頷いている。
「私も取り返しのつかないことになっていたでしょうね」
「俺も捨てられていたかもしれない」
・・・・・・。
もう遅い気がするが・・・。
「で、えげつないってどんな風にだ?」
「自分に振り向かない男はどんな手を使っても手に入れようとするね。・・・僕があの子の側にいたら君たちに近づけないように出来るでしょう?」
「それで近くに居たのか・・・」
「アンバーには悪いがそんな強かな女と関わったら今度こそリナに婚約破棄されてしまいます」
「俺もベルティナに捨てられるのは御免だ」
「なるべくあの子を見張っておくよ。でもフィオナちゃんだけど、どこかで会ったことがある気がするんだよね~」
「ここでアンバーの口説きの常套句を使っても意味がないぞ」
「いやいや本当に!」
まあ、実際会っているからな。しかも全員。
確かにあの女のフィオナ嬢を見る目は異常だった。
なぜあんな憎しみの籠った目で睨んでいたんだ?
俺の知る限り、フィオナ嬢は今まで社交の場には一度も出ていない。それに彼女は人から恨まれるような人間ではない。
Sランク冒険者まで上り詰めるような人間が小物を相手にするとも考えられない。
フッ、それにしても丁寧なお礼を言っていたが、俺はフィーの飾らない令嬢らしくない言葉遣いの方が好きだな。
彼女には俺など必要ないだろうが、陰ながら見守るぐらいは許してくれるだろうか・・・
いつかあの女がとんでもない事をフィオナ嬢に仕出かしそうな予感がするんだ。
(今度こそ必ず君を守るから・・・)
は?
今度こそってなんだ?
「おーい、レオニール誰が来たの?」
・・・・・・。
「あの~、呼ばれていますよ?」
「あ、ああ」
反応が薄いままだし、このままお礼を言えばいいか。
「え~と、昨日医務室に運んでいただいたと聞きましたの。どうもありがとうございました」
「ああ」
お礼も言ったしもういいよね。
「それでは失礼します」
「あ~~!フォーライト姉妹じゃん!エルシア様は今日も女神のように美しいね。妹のフィオナちゃんも評判通りの可愛らしさだね」
痺れを切らしたのかレオニールの後ろから顔を出した軽そうな男。
ああ、この人転生者と仲良くしていた人だ。
いや、転生者だけでなく女なら誰にでも声をかけていた。もちろんフィオナにも・・・無理だ。私はチャラ男は好きじゃない。
で、次に出てきたのはリオネル殿下。
生徒会長だもんね・・・居てもおかしくはない。
「エルシア嬢!来てくれたんだね!さあ早く中に入って!ラシュベルお茶の用意を!」
殿下にはエル姉様しか見えていないんだね。
デカい私を素通りして後ろのエル姉様にそれはもう満面の笑みを向けている。嬉しさが隠しきれていないよ。
やっぱりワンコだ。
「いえ、お気遣いなく。それにもう用は済みましたので失礼しますわ」
エル姉様・・・通常運転だね。
引き止めるリオネル殿下に失礼しますと頭を下げて背を向けて歩き出そうとした時、今まで固まっていたレオニールに手首を掴まれた。
「フィー、フィオナ嬢はもう大丈夫なのか?」
「え、あ、はい」
「そうか・・・」
「・・・」
心配してくれていたんだ。
それにしてもレオニールって背が高い。私より頭ひとつ分は高い。これだったらお姫様抱っこも余裕でできたか?
「おいレオニールいつまでフィオナ嬢の手を握っているんだ?」
そうだった。手首を掴まれたままだった。
リオネル殿下に言われても離す気配がない。
「あの「そろそろ離して下さいませ」」
「・・・わ、悪い!」
エル姉様の声に反応してやっと離してくれた。
もう一度お礼を言って、エル姉様に手を引かれてその場を後にした。
結局何だったんだろう?体調が悪かったのかな?
「レオニールが令嬢の手首を掴むなんて驚いた」
「私はレオニールは女性に興味がないのかと思っていましたよ」
「だよな」
実際興味はない。
・・・いや、フィオナ嬢のことだけは気になる。
今日は昨日と違って顔色も良かった。
まさか、お礼を言うためにわざわざ俺に会いに来てくれるなんてな。
目が会った瞬間、時間が止まったような不思議な感覚がした。彼女の藍色の瞳が真っ直ぐに俺に向けられたのは今日が初めてかもしれない。
あの時ですら俺は彼女の目の端に映っていただけだった。
「フィオナちゃんって実物はすっごく可愛かったね。でも僕がどんなに頑張っても彼女は相手にしてくれなさそうだよね。残念」
彼女に下手に手を出したら死ぬぞ?
「エルシア嬢の妹に遊びで手を出すのはやめてくれよ」
同感だ。
「アンバーには最近お気に入りの子がいるだろ」
「・・・でもその女俺にも色目使ってきたぞ」
なるほどね。
アンバーと仲良くし、あわよくばその繋がりから高位貴族の子息との婚姻でも目論んでいそうだな。
「ああ!あの子ね。隠しているつもりなんだろうけど、下心見え見えでお馬鹿で可愛いんだよ。それにあの子可愛い顔してかなりえげつない性格しているよ」
どんな女だよ。
「・・・私にもよろけた振りしてより掛かろうとしてきた」
「実は私にも上目遣いを使ってきましたが、面倒なことになる前に無視を決め込みました」
おいおい、俺以外全員じゃないか。
凄い女だな。
「あの日、『異界の使者』の会話を聞いてなかったら私はその阿呆な令嬢を利用してエルシア嬢に親しいところを見せつけていたかもしれない」
殿下の言葉にラシュベルとグレンも気まずそうに頷いている。
「私も取り返しのつかないことになっていたでしょうね」
「俺も捨てられていたかもしれない」
・・・・・・。
もう遅い気がするが・・・。
「で、えげつないってどんな風にだ?」
「自分に振り向かない男はどんな手を使っても手に入れようとするね。・・・僕があの子の側にいたら君たちに近づけないように出来るでしょう?」
「それで近くに居たのか・・・」
「アンバーには悪いがそんな強かな女と関わったら今度こそリナに婚約破棄されてしまいます」
「俺もベルティナに捨てられるのは御免だ」
「なるべくあの子を見張っておくよ。でもフィオナちゃんだけど、どこかで会ったことがある気がするんだよね~」
「ここでアンバーの口説きの常套句を使っても意味がないぞ」
「いやいや本当に!」
まあ、実際会っているからな。しかも全員。
確かにあの女のフィオナ嬢を見る目は異常だった。
なぜあんな憎しみの籠った目で睨んでいたんだ?
俺の知る限り、フィオナ嬢は今まで社交の場には一度も出ていない。それに彼女は人から恨まれるような人間ではない。
Sランク冒険者まで上り詰めるような人間が小物を相手にするとも考えられない。
フッ、それにしても丁寧なお礼を言っていたが、俺はフィーの飾らない令嬢らしくない言葉遣いの方が好きだな。
彼女には俺など必要ないだろうが、陰ながら見守るぐらいは許してくれるだろうか・・・
いつかあの女がとんでもない事をフィオナ嬢に仕出かしそうな予感がするんだ。
(今度こそ必ず君を守るから・・・)
は?
今度こそってなんだ?
755
お気に入りに追加
1,963
あなたにおすすめの小説

わたしを捨てた騎士様の末路
夜桜
恋愛
令嬢エレナは、騎士フレンと婚約を交わしていた。
ある日、フレンはエレナに婚約破棄を言い渡す。その意外な理由にエレナは冷静に対処した。フレンの行動は全て筒抜けだったのだ。
※連載

【完結】「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と言っていた婚約者と婚約破棄したいだけだったのに、なぜか聖女になってしまいました
As-me.com
恋愛
完結しました。
とある日、偶然にも婚約者が「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」とお友達に楽しそうに宣言するのを聞いてしまいました。
例え2番目でもちゃんと愛しているから結婚にはなんの問題も無いとおっしゃっていますが……そんな婚約者様がとんでもない問題児だと発覚します。
なんてことでしょう。愛も無い、信頼も無い、領地にメリットも無い。そんな無い無い尽くしの婚約者様と結婚しても幸せになれる気がしません。
ねぇ、婚約者様。私はあなたと結婚なんてしたくありませんわ。絶対婚約破棄しますから!
あなたはあなたで、1番好きな人と結婚してくださいな。
※この作品は『「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と婚約者が言っていたので、1番好きな女性と結婚させてあげることにしました。 』を書き直しています。内容はほぼ一緒ですが、細かい設定や登場人物の性格などを書き直す予定です。

【完結】私は側妃ですか? だったら婚約破棄します
hikari
恋愛
レガローグ王国の王太子、アンドリューに突如として「側妃にする」と言われたキャサリン。一緒にいたのはアトキンス男爵令嬢のイザベラだった。
キャサリンは婚約破棄を告げ、護衛のエドワードと侍女のエスターと共に実家へと帰る。そして、魔法使いに弟子入りする。
その後、モナール帝国がレガローグに侵攻する話が上がる。実はエドワードはモナール帝国のスパイだった。後に、エドワードはモナール帝国の第一皇子ヴァレンティンを紹介する。
※ざまあの回には★がついています。

ご自慢の聖女がいるのだから、私は失礼しますわ
ネコ
恋愛
伯爵令嬢ユリアは、幼い頃から第二王子アレクサンドルの婚約者。だが、留学から戻ってきたアレクサンドルは「聖女が僕の真実の花嫁だ」と堂々宣言。周囲は“奇跡の力を持つ聖女”と王子の恋を応援し、ユリアを貶める噂まで広まった。婚約者の座を奪われるより先に、ユリアは自分から破棄を申し出る。「お好きにどうぞ。もう私には関係ありません」そう言った途端、王宮では聖女の力が何かとおかしな騒ぎを起こし始めるのだった。

訳ありヒロインは、前世が悪役令嬢だった。王妃教育を終了していた私は皆に認められる存在に。でも復讐はするわよ?
naturalsoft
恋愛
私の前世は公爵令嬢であり、王太子殿下の婚約者だった。しかし、光魔法の使える男爵令嬢に汚名を着せられて、婚約破棄された挙げ句、処刑された。
私は最後の瞬間に一族の秘術を使い過去に戻る事に成功した。
しかし、イレギュラーが起きた。
何故か宿敵である男爵令嬢として過去に戻ってしまっていたのだ。

もう一度あなたと?
キムラましゅろう
恋愛
アデリオール王国魔法省で魔法書士として
働くわたしに、ある日王命が下った。
かつて魅了に囚われ、婚約破棄を言い渡してきた相手、
ワルター=ブライスと再び婚約を結ぶようにと。
「え?もう一度あなたと?」
国王は王太子に巻き込まれる形で魅了に掛けられた者達への
救済措置のつもりだろうけど、はっきり言って迷惑だ。
だって魅了に掛けられなくても、
あの人はわたしになんて興味はなかったもの。
しかもわたしは聞いてしまった。
とりあえずは王命に従って、頃合いを見て再び婚約解消をすればいいと、彼が仲間と話している所を……。
OK、そう言う事ならこちらにも考えがある。
どうせ再びフラれるとわかっているなら、この状況、利用させてもらいましょう。
完全ご都合主義、ノーリアリティ展開で進行します。
生暖かい目で見ていただけると幸いです。
小説家になろうさんの方でも投稿しています。

あなたの妻にはなりません
風見ゆうみ
恋愛
幼い頃から大好きだった婚約者のレイズ。
彼が伯爵位を継いだと同時に、わたしと彼は結婚した。
幸せな日々が始まるのだと思っていたのに、夫は仕事で戦場近くの街に行くことになった。
彼が旅立った数日後、わたしの元に届いたのは夫の訃報だった。
悲しみに暮れているわたしに近づいてきたのは、夫の親友のディール様。
彼は夫から自分の身に何かあった時にはわたしのことを頼むと言われていたのだと言う。
あっという間に日にちが過ぎ、ディール様から求婚される。
悩みに悩んだ末に、ディール様と婚約したわたしに、友人と街に出た時にすれ違った男が言った。
「あの男と結婚するのはやめなさい。彼は君の夫の殺害を依頼した男だ」

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる