13 / 48
13
しおりを挟む
~レオニール回想~
『フィー!時間をかけ過ぎだ!』
『魔法無しってジンが言ったからでしょ!』
『これぐらいの試練なら簡単に乗り越えろ』
『確かに無駄な動きが多かったわよ』
フィオナ嬢の戦闘はいつの間に終わっていて令嬢とは思えない砕けた口調で言い合っていた。
3人とも黒髪・・・この3人はあの有名な『異界の使者』じゃないのか?
SSランクが2人とSランクが1人。冒険者の間だけでなく、国の上層部にまで名の知れた有名なパーティー『異界の使者』
この国にたった4人しかいないSSランクの冒険者の内2人が『異界の使者』だと聞いた。
ではフィオナ嬢がSランクなのだろうか?
話の内容を聞けば、剣だけでこの階層まで来られて、剣だけで魔物を屠れる実力があるということだ。
ははっ、最後に見た彼女の力強い目はそのままだが、随分変わったな。
あれが本来のフィオナ嬢なのか・・・よかったな。ちゃんと感情を出せるようになったんだな。
呆然としていたメンバーの瞳に光が戻ってきた。
彼らも気付いたのだろう。
目の前で言い争っているのが『異界の使者』だと。
『助けていただいきありがとうございました』
代表してリオネル殿下がお礼を言い、俺たちも頭を下げた。
『ああ、気にするな。俺はジン、歩けるだけの体力は残っているか?』
『はい』
『じゃあ着いてこい』
本当に着いていくだけだった。
結局、80階のボスまでフィオナ嬢1人で倒してしまった。
コレがSランクか・・・レベルが違いすぎる。
フィオナ嬢がボスを倒してくれて現れた転移魔法陣で無事地上に戻ってくることができた俺たちは『異界の使者』にお礼を言って別れた。
・・・最後まで俺を、いや俺たちを見なかったな。
今日はこのまま宿を取ることにし、そのままギルドの酒場で軽い食事をすることになった。
『ねえ、すっごく可愛い子だったね。僕、口説いちゃおっかな~』
アンバーは見た目もいいが、ネストール子爵家の3男で大商会の子息だけあり金は持っている。
そして女の扱いが上手い。女性には甘く優しくをモットーに、来る者拒まずで色んな女性と付き合いがある。
『ええ、とても魅力的な女性でしたね。私に婚約者がいなければお近づきになりたいと思うほどでした』
ルーブル侯爵家の嫡男で父親が宰相をしているラシュベル。
真面目で周りをよく見て気配りもできる。頭脳明晰で卒業後はリオネル殿下の側近に決まっている。
『確かに見た目は可愛らしい女性だったが、俺はか弱い令嬢の方が好ましく思う』
ラオス伯爵家の次男で父親は騎士団長のグレン。
少し乱暴なところはあるが正義感が強く、幼い頃からリオネル殿下に忠誠を誓っているらしい。
『私は気に入ったよ。あの娘、言葉遣いは悪かったが、どこか気品があったな。・・・それに誰かと似ている気がするのだが・・・』
そうだな。リオネル殿下が昔一目惚れをしたエルシア嬢の妹だからな。何度婚約の申し込みを断られてもずっと思いを寄せ続けているが・・・今のままでは伝わることはないだろう。
そんな会話をしていると、何やら周りが騒がしくなった。
『おい、あそこにいるの死神の使者だぜ』
『違うだろ魔王の使者だろ』
『いや、悪魔の使者って聞いたぜ』
フィオナ嬢とパーティーメンバーのジンが周囲の視線をものともせず俺たちの座っていたテーブルの隣に座ったようだった。
衝立があって会話は聞こえるが様子は伺えないことを少し残念に思いながら聞き耳を立ててしまう。
それは他のメンバーも同じで隣から聞こえる会話に集中していた。
まあ話しの内容は俺とアンバーには関係のない話しだったが、話が進むにつれリオネル殿下とラシュベル、それにグレンの顔色がどんどん悪くなっていった。
そうだろうな。この3人は気になる相手にヤキモチを妬かせたいが為に、婚約者以外の令嬢と親しげに振る舞っている姿をワザと婚約者に見せつけていたからな。
リオネル殿下にはまだ婚約者いないが、エルシア嬢の気を引こうとしていたのは一目瞭然なのだが・・・
殿下に優しくされて勘違いする令嬢は後を絶たない。
そして、ラシュベルとグレンに至っては自分の婚約者に素直に気持ちを伝えられないくせに、ヤキモチは妬いてほしいが為の馬鹿な行動をしていた。
・・・よかった。俺は綺麗な身体だ。
いや、何がよかっただ。
とっくにフィオナ嬢との縁は切れているというのに・・・
まっ、殿下もエルシア嬢に一途だし、ラシュベルとグレンも自分の婚約者にベタ惚れだから間違いは犯したことはない。と、思う・・・
ただ、行動がな。
まあ、盗み聞きとはいえフィオナ嬢が言った女性目線を知れたのは、この3人にとってはよかったのだろう。
だが、知ったところで・・・間に合っていればよいのだが・・・
そして今日、フィオナ嬢が学院に入学してくる。
最後に会ったのは5年以上前だが、俺のことを覚えてくれているだろうか・・・
一度は俺の婚約者になるはずだった彼女だからなのか、フィオナ嬢が気になって仕方がない。
何か困ったことがあれば助けになってやりたいと思うのは余計なお世話だろうか?
俺には無関心だったフィオナ嬢、あの日兄姉に微笑んだ彼女の笑顔を俺にも向けて欲しいと思うのは俺の我儘だろうか?
『フィー!時間をかけ過ぎだ!』
『魔法無しってジンが言ったからでしょ!』
『これぐらいの試練なら簡単に乗り越えろ』
『確かに無駄な動きが多かったわよ』
フィオナ嬢の戦闘はいつの間に終わっていて令嬢とは思えない砕けた口調で言い合っていた。
3人とも黒髪・・・この3人はあの有名な『異界の使者』じゃないのか?
SSランクが2人とSランクが1人。冒険者の間だけでなく、国の上層部にまで名の知れた有名なパーティー『異界の使者』
この国にたった4人しかいないSSランクの冒険者の内2人が『異界の使者』だと聞いた。
ではフィオナ嬢がSランクなのだろうか?
話の内容を聞けば、剣だけでこの階層まで来られて、剣だけで魔物を屠れる実力があるということだ。
ははっ、最後に見た彼女の力強い目はそのままだが、随分変わったな。
あれが本来のフィオナ嬢なのか・・・よかったな。ちゃんと感情を出せるようになったんだな。
呆然としていたメンバーの瞳に光が戻ってきた。
彼らも気付いたのだろう。
目の前で言い争っているのが『異界の使者』だと。
『助けていただいきありがとうございました』
代表してリオネル殿下がお礼を言い、俺たちも頭を下げた。
『ああ、気にするな。俺はジン、歩けるだけの体力は残っているか?』
『はい』
『じゃあ着いてこい』
本当に着いていくだけだった。
結局、80階のボスまでフィオナ嬢1人で倒してしまった。
コレがSランクか・・・レベルが違いすぎる。
フィオナ嬢がボスを倒してくれて現れた転移魔法陣で無事地上に戻ってくることができた俺たちは『異界の使者』にお礼を言って別れた。
・・・最後まで俺を、いや俺たちを見なかったな。
今日はこのまま宿を取ることにし、そのままギルドの酒場で軽い食事をすることになった。
『ねえ、すっごく可愛い子だったね。僕、口説いちゃおっかな~』
アンバーは見た目もいいが、ネストール子爵家の3男で大商会の子息だけあり金は持っている。
そして女の扱いが上手い。女性には甘く優しくをモットーに、来る者拒まずで色んな女性と付き合いがある。
『ええ、とても魅力的な女性でしたね。私に婚約者がいなければお近づきになりたいと思うほどでした』
ルーブル侯爵家の嫡男で父親が宰相をしているラシュベル。
真面目で周りをよく見て気配りもできる。頭脳明晰で卒業後はリオネル殿下の側近に決まっている。
『確かに見た目は可愛らしい女性だったが、俺はか弱い令嬢の方が好ましく思う』
ラオス伯爵家の次男で父親は騎士団長のグレン。
少し乱暴なところはあるが正義感が強く、幼い頃からリオネル殿下に忠誠を誓っているらしい。
『私は気に入ったよ。あの娘、言葉遣いは悪かったが、どこか気品があったな。・・・それに誰かと似ている気がするのだが・・・』
そうだな。リオネル殿下が昔一目惚れをしたエルシア嬢の妹だからな。何度婚約の申し込みを断られてもずっと思いを寄せ続けているが・・・今のままでは伝わることはないだろう。
そんな会話をしていると、何やら周りが騒がしくなった。
『おい、あそこにいるの死神の使者だぜ』
『違うだろ魔王の使者だろ』
『いや、悪魔の使者って聞いたぜ』
フィオナ嬢とパーティーメンバーのジンが周囲の視線をものともせず俺たちの座っていたテーブルの隣に座ったようだった。
衝立があって会話は聞こえるが様子は伺えないことを少し残念に思いながら聞き耳を立ててしまう。
それは他のメンバーも同じで隣から聞こえる会話に集中していた。
まあ話しの内容は俺とアンバーには関係のない話しだったが、話が進むにつれリオネル殿下とラシュベル、それにグレンの顔色がどんどん悪くなっていった。
そうだろうな。この3人は気になる相手にヤキモチを妬かせたいが為に、婚約者以外の令嬢と親しげに振る舞っている姿をワザと婚約者に見せつけていたからな。
リオネル殿下にはまだ婚約者いないが、エルシア嬢の気を引こうとしていたのは一目瞭然なのだが・・・
殿下に優しくされて勘違いする令嬢は後を絶たない。
そして、ラシュベルとグレンに至っては自分の婚約者に素直に気持ちを伝えられないくせに、ヤキモチは妬いてほしいが為の馬鹿な行動をしていた。
・・・よかった。俺は綺麗な身体だ。
いや、何がよかっただ。
とっくにフィオナ嬢との縁は切れているというのに・・・
まっ、殿下もエルシア嬢に一途だし、ラシュベルとグレンも自分の婚約者にベタ惚れだから間違いは犯したことはない。と、思う・・・
ただ、行動がな。
まあ、盗み聞きとはいえフィオナ嬢が言った女性目線を知れたのは、この3人にとってはよかったのだろう。
だが、知ったところで・・・間に合っていればよいのだが・・・
そして今日、フィオナ嬢が学院に入学してくる。
最後に会ったのは5年以上前だが、俺のことを覚えてくれているだろうか・・・
一度は俺の婚約者になるはずだった彼女だからなのか、フィオナ嬢が気になって仕方がない。
何か困ったことがあれば助けになってやりたいと思うのは余計なお世話だろうか?
俺には無関心だったフィオナ嬢、あの日兄姉に微笑んだ彼女の笑顔を俺にも向けて欲しいと思うのは俺の我儘だろうか?
759
お気に入りに追加
1,918
あなたにおすすめの小説
どうして別れるのかと聞かれても。お気の毒な旦那さま、まさかとは思いますが、あなたのようなクズが女性に愛されると信じていらっしゃるのですか?
石河 翠
恋愛
主人公のモニカは、既婚者にばかり声をかけるはしたない女性として有名だ。愛人稼業をしているだとか、天然の毒婦だとか、聞こえてくるのは下品な噂ばかり。社交界での評判も地に落ちている。
ある日モニカは、溺愛のあまり茶会や夜会に妻を一切参加させないことで有名な愛妻家の男性に声をかける。おしどり夫婦の愛の巣に押しかけたモニカは、そこで虐げられている女性を発見する。
彼女が愛妻家として評判の男性の奥方だと気がついたモニカは、彼女を毎日お茶に誘うようになり……。
八方塞がりな状況で抵抗する力を失っていた孤独なヒロインと、彼女に手を差し伸べ広い世界に連れ出したしたたかな年下ヒーローのお話。
ハッピーエンドです。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID24694748)をお借りしています。
彼が愛した王女はもういない
黒猫子猫(猫子猫)
恋愛
シュリは子供の頃からずっと、年上のカイゼルに片想いをしてきた。彼はいつも優しく、まるで宝物のように大切にしてくれた。ただ、シュリの想いには応えてくれず、「もう少し大きくなったらな」と、はぐらかした。月日は流れ、シュリは大人になった。ようやく彼と結ばれる身体になれたと喜んだのも束の間、騎士になっていた彼は護衛を務めていた王女に恋をしていた。シュリは胸を痛めたが、彼の幸せを優先しようと、何も言わずに去る事に決めた。
どちらも叶わない恋をした――はずだった。
※関連作がありますが、これのみで読めます。
※全11話です。
【完結】彼の瞳に映るのは
たろ
恋愛
今夜も彼はわたしをエスコートして夜会へと参加する。
優しく見つめる彼の瞳にはわたしが映っているのに、何故かわたしの心は何も感じない。
そしてファーストダンスを踊ると彼はそっとわたしのそばからいなくなる。
わたしはまた一人で佇む。彼は守るべき存在の元へと行ってしまう。
★ 短編から長編へ変更しました。
[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・
青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。
婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。
「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」
妹の言葉を肯定する家族達。
そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。
※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。
泣き虫令嬢は自称商人(本当は公爵)に愛される
琴葉悠
恋愛
エステル・アッシュベリーは泣き虫令嬢と一部から呼ばれていた。
そんな彼女に婚約者がいた。
彼女は婚約者が熱を出して寝込んでいると聞き、彼の屋敷に見舞いにいった時、彼と幼なじみの令嬢との不貞行為を目撃してしまう。
エステルは見舞い品を投げつけて、馬車にも乗らずに泣きながら夜道を走った。
冷静になった途端、ごろつきに囲まれるが謎の商人に助けられ──
完結 貴族生活を棄てたら王子が追って来てメンドクサイ。
音爽(ネソウ)
恋愛
王子の婚約者になってから様々な嫌がらせを受けるようになった侯爵令嬢。
王子は助けてくれないし、母親と妹まで嫉妬を向ける始末。
貴族社会が嫌になった彼女は家出を決行した。
だが、有能がゆえに王子妃に選ばれた彼女は追われることに……
(完結)その女は誰ですか?ーーあなたの婚約者はこの私ですが・・・・・・
青空一夏
恋愛
私はシーグ侯爵家のイルヤ。ビドは私の婚約者でとても真面目で純粋な人よ。でも、隣国に留学している彼に会いに行った私はそこで思いがけない光景に出くわす。
なんとそこには私を名乗る女がいたの。これってどういうこと?
婚約者の裏切りにざまぁします。コメディ風味。
※この小説は独自の世界観で書いておりますので一切史実には基づきません。
※ゆるふわ設定のご都合主義です。
※元サヤはありません。
私を運命の相手とプロポーズしておきながら、可哀そうな幼馴染の方が大切なのですね! 幼馴染と幸せにお過ごしください
迷い人
恋愛
王国の特殊爵位『フラワーズ』を頂いたその日。
アシャール王国でも美貌と名高いディディエ・オラール様から婚姻の申し込みを受けた。
断るに断れない状況での婚姻の申し込み。
仕事の邪魔はしないと言う約束のもと、私はその婚姻の申し出を承諾する。
優しい人。
貞節と名高い人。
一目惚れだと、運命の相手だと、彼は言った。
細やかな気遣いと、距離を保った愛情表現。
私も愛しております。
そう告げようとした日、彼は私にこうつげたのです。
「子を事故で亡くした幼馴染が、心をすり減らして戻ってきたんだ。 私はしばらく彼女についていてあげたい」
そう言って私の物を、つぎつぎ幼馴染に与えていく。
優しかったアナタは幻ですか?
どうぞ、幼馴染とお幸せに、請求書はそちらに回しておきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる