悪役令嬢なのにイケメン新キャラとチートなヒロインに振り回されてるんですが⁉

倉桐ぱきぽ

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イケメン新キャラがグイグイくる

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 先に教室に来ていたアリシアは、クラスメイトとわいわいしゃべっていた。彼女の周りには、自然と攻略対象が集まっている。
 
 それにしても、アリシアの本命は誰なのか。

 個人的には、推しのリヒトとくっついて欲しい。
 リメイク版では絵師さんが変わったのか、以前にも増して、キラキラの王子様キャラだし。CVも人気声優さんだし。遠くからでいい、あのスチルのシーンを覗きたい!

 でも……。

 私は、リヒトの隣にいる大型わんこルークをこっそり見る。アリシアの幼なじみでありながら、好感度次第では、ストーカーに豹変する超危険人物。彼には何度、バッドエンドに落とされたことか。
 平穏な学園生活という意味では、ルークもありかもしれない。

 そんなふうに考えていたけど。

 アリシア、アリシア、アリシアと。攻略対象が呼ぶのに、思わず、ため息が出た。リヒトにいたっては、アリシアって。
 ……いつまで経っても、好感度が低すぎる!
 ルート分岐まで、あと二ヶ月。そろそろ、愛称シア呼びの攻略対象が、一人や二人、いてもいい頃なのに。

 もしかして、誰ともくっつかない魔導院の特別研究員ノーマルエンド狙いとか?
 ふと、そんな疑問が頭をよぎる。
 確かに、この世界じゃ、特別研究員は超エリートで、そこを目指している生徒も多い。
 でも!
 そもそも、乙女ゲームって、イケメンとイチャラブするためのもので。ノーマルエンドの優先順位って低いはず……だよね?

「……ラ? イザベラ!」
「え?」

 気づけば、アリシアが顔をのぞき込んでいて。

「どうしたの? ぼんやりしちゃって。もしかして、体調、悪い? 保健室で休ませてもらう?」

 ちょっとイラッとした。誰のせいだと思っているのか。

「けっこうよ!」

 少しきつめに言い返した。その言葉尻に、レオンの声が重なる。

「俺が連れて行こう」
「え?」

 と、振り向いた時には、腕を引っ張られていて、次の瞬間には、抱き上げられていた。俗に言う、お姫様抱っこ。
 きゃあと、教室のあちこちで悲鳴が上がる。いや、私だって、小っ恥ずかしいんですけど。

「あの、下ろしてくださらない?」

 頼んでみたものの、さくっと「却下」されてしまった。そのまま、ゴーツー保健室。それはそれは優しく、ベッドに降ろされる。
 イケメンで頭もよくて、優しくて。だから、なおさら思う。

「レオン。あなた、もう少し、アリシアと仲良くした方がよろしくてよ」
「それは、聞き捨てならないな。アリシアが、俺にそう言えと?」
「いいえ」
「ということは、君の意思か?」
「ええ。そうよ」 

 私は、うなずいた。
 アリシアの好感度が一番低い攻略対象者は、私のパートナーとなる。そうなれば、ゲームの終盤、アリシアと敵対し、最後の最後には一緒に処刑されてしまう。
 これからも私は、静かに、平凡に生きていくつもりだけど。それでも、私には関わらない方がいい。

「……そうか」

 レオンがつぶやいた。

「だとしたら、事態はもっと深刻だな」
「どういう意味?」

 問い返すと、レオンはベッドに手をついて、体を寄せてきた。必然的に顔も近くなって、ドキッとする。

「な、何なの?」
「イザベラ。君は俺が、」
 
 そこで、ガチャッとドアが開いた。

「あらあら。ごめんなさいねぇ。席を外していて。どうしたの?」

 保健医がやって来て、話は途切れた。
 全然、元気なんだけど。私はベッドで休ませてもらうことになり、レオンは教室に戻って行った。
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