10 / 69
第一章
<とにかく、寝床の確保だな>
しおりを挟む
<順調だな>
ナイは順調にダンジョンを進んでいた。
ナイの体感時間だとそろそろ半日を過ぎて夜になるころだろうか。
そのわずかな時間で、すでに十四層まで到達している。
人間の冒険者であれば異例の早さだ。ベテラン冒険者でもなかなか真似のできない早さだろう。
これはナイが魔獣と一切遭遇しないことと、罠も作動しないおかげだ。
ダンジョンの魔獣と罠は人間にしか反応しない。そのため、散歩感覚でダンジョンの中を進むことができた。
さらにナイは賢者ブリアックが所蔵していたダンジョン内の地図を記憶していた。
初心者ダンジョンであるここは、最も内部構造が知られているダンジョンで、その気になればダンジョンすべての地図を手に入れることは簡単だった。
人間に見つからないように人の気配を避けて行動しているが、それでも進むスピードは速い。
そして、ここによく入っている初心者たちは訓練も兼ねているので、よほど凶悪なエリア以外は地図に頼らず探索しながら進む。そのため、早くても一日で二層くらいが限度であり、ナイのように早く進むことは絶対に不可能だった。
ナイはクハーーーと大きく欠伸をした。
<そろそろどこかで休まねばなぁ。食事を持ち込まなかったのは大きなミスだった。どこかで得られるといいのだが。かろうじて水は何とかなったがな>
ナイは好奇心に任せて行動していたため、エサのことまで考えていなかった。
いつもダンジョンに入るときは、飼い主の賢者ブリアックが準備していたため、完全に失念していたのだ。
元々、ブリアックが研究に没頭してエサの準備を忘れることが多かったため、飢えには強い。それに最近の野良猫生活で慣れている。
水だけは、結露なのか地下水が染み出しているのか、時々水たまりができているおかげで確保できる。
人間にはまったく足りない量だが、猫のナイには十分な量だ。
明日朝までにエサが得られなければ引き返せばいいかと気楽に考えて、そのまま歩みを進めた。
<とにかく、寝床の確保だな>
ダンジョン内は迷路のように入り組んだ構造になっている。
ほとんどは安全な場所だが、冒険者が近づかない通路も多くあるのだ。
そういった場所で眠ればいいかと、ナイは気楽に足を向けた。
もっとも、ナイは気楽に行くことを決めているが、普通の冒険者にはそういった誰も近づかない場所は危険地帯である。
魔獣が一気に大量に出てくる場所や、退路を断たれやすい場所、致命的な罠がある場所である。
そのどれも反応しない猫のナイだからこそ、寝床にできる場所といっていいだろう。
少し経ち、ナイが寝床に決めたのはモンスターハウスと呼ばれる小部屋だった。
ナイ好みの、棚のような出っ張りまである。
モンスターハウスは人間が入った途端に入り口の扉が閉まり、大量の魔獣が召喚転移されてくる場所だ。
初心者ダンジョン上層で倒しやすいゴブリンばかりしか出て来ないとはいえ、ベテラン冒険者でも対処を間違えば全滅する。
数の暴力はそれほどまでに怖い。
初心者たちには立ち入り禁止エリアとして、口を酸っぱくして注意される場所だ。
<さて、眠るか>
ナイは棚の上に駆け上がると、体を丸め眠りについた。
薄暗い部屋の中で真っ黒なナイに気づく人間はいないだろう。
ナイは順調にダンジョンを進んでいた。
ナイの体感時間だとそろそろ半日を過ぎて夜になるころだろうか。
そのわずかな時間で、すでに十四層まで到達している。
人間の冒険者であれば異例の早さだ。ベテラン冒険者でもなかなか真似のできない早さだろう。
これはナイが魔獣と一切遭遇しないことと、罠も作動しないおかげだ。
ダンジョンの魔獣と罠は人間にしか反応しない。そのため、散歩感覚でダンジョンの中を進むことができた。
さらにナイは賢者ブリアックが所蔵していたダンジョン内の地図を記憶していた。
初心者ダンジョンであるここは、最も内部構造が知られているダンジョンで、その気になればダンジョンすべての地図を手に入れることは簡単だった。
人間に見つからないように人の気配を避けて行動しているが、それでも進むスピードは速い。
そして、ここによく入っている初心者たちは訓練も兼ねているので、よほど凶悪なエリア以外は地図に頼らず探索しながら進む。そのため、早くても一日で二層くらいが限度であり、ナイのように早く進むことは絶対に不可能だった。
ナイはクハーーーと大きく欠伸をした。
<そろそろどこかで休まねばなぁ。食事を持ち込まなかったのは大きなミスだった。どこかで得られるといいのだが。かろうじて水は何とかなったがな>
ナイは好奇心に任せて行動していたため、エサのことまで考えていなかった。
いつもダンジョンに入るときは、飼い主の賢者ブリアックが準備していたため、完全に失念していたのだ。
元々、ブリアックが研究に没頭してエサの準備を忘れることが多かったため、飢えには強い。それに最近の野良猫生活で慣れている。
水だけは、結露なのか地下水が染み出しているのか、時々水たまりができているおかげで確保できる。
人間にはまったく足りない量だが、猫のナイには十分な量だ。
明日朝までにエサが得られなければ引き返せばいいかと気楽に考えて、そのまま歩みを進めた。
<とにかく、寝床の確保だな>
ダンジョン内は迷路のように入り組んだ構造になっている。
ほとんどは安全な場所だが、冒険者が近づかない通路も多くあるのだ。
そういった場所で眠ればいいかと、ナイは気楽に足を向けた。
もっとも、ナイは気楽に行くことを決めているが、普通の冒険者にはそういった誰も近づかない場所は危険地帯である。
魔獣が一気に大量に出てくる場所や、退路を断たれやすい場所、致命的な罠がある場所である。
そのどれも反応しない猫のナイだからこそ、寝床にできる場所といっていいだろう。
少し経ち、ナイが寝床に決めたのはモンスターハウスと呼ばれる小部屋だった。
ナイ好みの、棚のような出っ張りまである。
モンスターハウスは人間が入った途端に入り口の扉が閉まり、大量の魔獣が召喚転移されてくる場所だ。
初心者ダンジョン上層で倒しやすいゴブリンばかりしか出て来ないとはいえ、ベテラン冒険者でも対処を間違えば全滅する。
数の暴力はそれほどまでに怖い。
初心者たちには立ち入り禁止エリアとして、口を酸っぱくして注意される場所だ。
<さて、眠るか>
ナイは棚の上に駆け上がると、体を丸め眠りについた。
薄暗い部屋の中で真っ黒なナイに気づく人間はいないだろう。
0
お気に入りに追加
195
あなたにおすすめの小説
真夜中の仕出し屋さん~料理上手な狛犬様と暮らすことになりました~
椿蛍
キャラ文芸
「結婚するか、化け物屋敷を管理するか」
仕事を辞めた私に、父は二つの選択肢を迫った。
料亭『吉浪』に働いて六年。
挫折し、料理を作れなくなってしまった――
結婚を断り、私が選んだのは、化け物屋敷と父が呼ぶ、亡くなった祖父の家へ行くことだった。
祖父が亡くなって、店は閉まっているはずだったけれど、なぜか店は開いていて――
初出:2024.5.10~
※他サイト様に投稿したものを大幅改稿しております。

最強の職業は付与魔術師かもしれない
カタナヅキ
ファンタジー
現実世界から異世界に召喚された5人の勇者。彼等は同じ高校のクラスメイト同士であり、彼等を召喚したのはバルトロス帝国の3代目の国王だった。彼の話によると現在こちらの世界では魔王軍と呼ばれる組織が世界各地に出現し、数多くの人々に被害を与えている事を伝える。そんな魔王軍に対抗するために帝国に代々伝わる召喚魔法によって異世界から勇者になれる素質を持つ人間を呼びだしたらしいが、たった一人だけ巻き込まれて召喚された人間がいた。
召喚された勇者の中でも小柄であり、他の4人には存在するはずの「女神の加護」と呼ばれる恩恵が存在しなかった。他の勇者に巻き込まれて召喚された「一般人」と判断された彼は魔王軍に対抗できないと見下され、召喚を実行したはずの帝国の人間から追い出される。彼は普通の魔術師ではなく、攻撃魔法は覚えられない「付与魔術師」の職業だったため、この職業の人間は他者を支援するような魔法しか覚えられず、強力な魔法を扱えないため、最初から戦力外と判断されてしまった。
しかし、彼は付与魔術師の本当の力を見抜き、付与魔法を極めて独自の戦闘方法を見出す。後に「聖天魔導士」と名付けられる「霧崎レナ」の物語が始まる――
※今月は毎日10時に投稿します。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

異世界でリサイクルショップ!俺の高価買取り!
理太郎
ファンタジー
坂木 新はリサイクルショップの店員だ。
ある日、買い取りで査定に不満を持った客に恨みを持たれてしまう。
仕事帰りに襲われて、気が付くと見知らぬ世界のベッドの上だった。
おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる
シンギョウ ガク
ファンタジー
※2019年7月下旬に第二巻発売しました。
※12/11書籍化のため『Sランクパーティーから追放されたおっさん商人、真の仲間を気ままに最強SSランクハーレムパーティーへ育てる。』から『おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる』に改題を実施しました。
※第十一回アルファポリスファンタジー大賞において優秀賞を頂きました。
俺の名はグレイズ。
鳶色の眼と茶色い髪、ちょっとした無精ひげがワイルドさを醸し出す、四十路の(自称ワイルド系イケオジ)おっさん。
ジョブは商人だ。
そう、戦闘スキルを全く習得しない商人なんだ。おかげで戦えない俺はパーティーの雑用係。
だが、ステータスはMAX。これは呪いのせいだが、仲間には黙っていた。
そんな俺がメンバーと探索から戻ると、リーダーのムエルから『パーティー追放』を言い渡された。
理由は『巷で流行している』かららしい。
そんなこと言いつつ、次のメンバー候補が可愛い魔術士の子だって知ってるんだぜ。
まぁ、言い争っても仕方ないので、装備品全部返して、パーティーを脱退し、次の仲間を探して暇していた。
まぁ、ステータスMAXの力を以ってすれば、Sランク冒険者は余裕だが、あくまで俺は『商人』なんだ。前衛に立って戦うなんて野蛮なことはしたくない。
表向き戦力にならない『商人』の俺を受け入れてくれるメンバーを探していたが、火力重視の冒険者たちからは相手にされない。
そんな、ある日、冒険者ギルドでは流行している、『パーティー追放』の餌食になった問題児二人とひょんなことからパーティーを組むことになった。
一人は『武闘家』ファーマ。もう一人は『精霊術士』カーラ。ともになぜか上級職から始まっていて、成長できず仲間から追放された女冒険者だ。
俺はそんな追放された二人とともに冒険者パーティー『追放者《アウトキャスト》』を結成する。
その後、前のパーティーとのひと悶着があって、『魔術師』アウリースも参加することとなった。
本当は彼女らが成長し、他のパーティーに入れるまでの暫定パーティーのつもりだったが、俺の指導でメキメキと実力を伸ばしていき、いつの間にか『追放者《アウトキャスト》』が最強のハーレムパーティーと言われるSSランクを得るまでの話。
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです
ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。
女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。
前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る!
そんな変わった公爵令嬢の物語。
アルファポリスOnly
2019/4/21 完結しました。
沢山のお気に入り、本当に感謝します。
7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。
2021年9月。
ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。
10月、再び完結に戻します。
御声援御愛読ありがとうございました。
神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜
シュガーコクーン
ファンタジー
女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。
その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!
「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。
素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯
旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」
現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる