追い出された万能職に新しい人生が始まりました

東堂大稀(旧:To-do)

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閑話

クリストフ・レポート 14(書籍八巻ダイジェスト)

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  これはクリストフの回顧録である。

 ※これはクリストフから見た物語のダイジェストになります。クリストフ視点のため、メインストーリーでない部分が中心であったり、物語中に無いシーンが含まれていたりします。また、クリストフがその時点で知りえない情報は含まれていません。
 ※文中の『バカ』『バカリーダー』『リーダー』は全てディートリヒのことです。また『陰険グリフォン』「残虐グリフォン』などは全てグリおじさんで、『腹黒ウサギ』や『狡猾ウサギ』などはピョンちゃんのことです。



●月●日
 なんやかんやあって、ロアを誘拐した連中を撤退させられた。
 と言っても、オレたちはまだ海賊島から脱出は出来てない。アダドの連中が逃げていったというだけだ。

 ロアは、残念グリフォンを抱きしめて慰めている。
 残念グリフォンは、ロアの腕の中に頭を埋めてピーピーと情けない声で鳴いている。……いや、この場合は泣いているというのが正しいのか?……とにかく、パニックになって役に立たない状態だ。
 原因は例によって、虫だ。

 力なく泣いている姿は可愛そうに見えなくもないが、同情はできない。調子に乗り過ぎて自ら痛い目に合ってるだけだ。

 残念グリフォンがまともなら、空を飛んですぐに帰れたのに。
 リーダーたちは心配してるだろうな。
 仲間を大切にするリーダーの事だ、ロアの事はもちろん、オレの事も心配し過ぎるくらい心配しているはずだ。助けに来ようと、尽力してくれているかもしれない。
 早く無事を伝えたいが、伝える手段が無くて焦る。

 それにしても、どうしてこの残念グリフォンは、デカい図体をして小さな虫を怖がるんだろう?ロアに聞いてみても知らないと言われた。
 「小さい時に耳でも齧れたんですかね?」と返されたが、何かの例えだろうか?船乗りが船に住み着いたネズミに耳や指先を齧られるって話はよく聞くが、虫は齧らないだろう。

 そうこうしている内に、撤退したアダドの連中が、海賊島ごと破壊してオレたちを殺すと言ってきた。

 前述のとおり性悪グリフォンは役に立たない。船のないオレたちは、海賊島から逃げ出すこともできない。
 どうするべきかと悩んでいると、ロアが自分が何とかすると言い出した。

 ロアが、空中に向けて叫び、奇妙な行動を取っている。
 オレは、呆然と見ているしかできなかった。
 ロアの覚悟が伝わってきたから。今のロアなら、不可能を可能にしてくれると信じられた。
 それほどまでに、ロアは真剣だった。

 気付けば、オレは腹黒ウサギに「チャラい苦労人」と呼ばれていた。
 何がどうなったのか、オレにも分からない。時間が無いからと、説明すらしてもらえなかった。

 オレが分かるのは、突然ピョンちゃんとかいう腹黒ウサギの声が頭に響いてきて、うさん臭い自己紹介をされたという事実だけだ。
 性悪グリフォン以上に性格の悪そうな声のウサギは、本体は城塞迷宮シタデルダンジョン近くの森に潜んでいて声だけ届けることでロアに協力してくれるらしい。
 そんなことができるのかオレにはよく分からないが、するというからにはできるのだろう。

 ロアは、性悪グリフォンの魔力を使って魔法を使うことにしたようだ。
 なんでも、海賊島全体を覆う守りの魔法を作り出すらしい。

 しかし、問題がある。
 魔法を作り出すには時間がかかる。しかも、作業中はロアは無防備になる。
 ロアを守っていた、ガーゴイルの魔法も使えなくなるらしい。

 海賊島の中には、まだロアの命を狙う連中が潜んでいた。
 無防備なロアは、格好の標的になるだろう。

 ロアの命を守るのは、オレの仕事だ。リーダーがオレに任せてくれた、大切な仕事。

 敵は多数。武器も持っている。
 オレには敵から奪った、ナマクラな一本の剣だけ。
 虫でパニックを起こして動けない性悪と、声だけの腹黒には頼れない。
 オレは一人で戦うしかない。

 怖くないと言えば、嘘になる。だけど、逃げ出す選択はない。

 オレは、覚悟を決めた。

 ……その結果、何とかなった。
 何とか出来てしまった。死を覚悟したが、オレ自身も大きな傷すら負ってない。
 腹黒ウサギの助言と、ガーゴイルの助力のお陰だが、オレは満足だった。
  
 オレが戦ってる途中で目を覚ました陰険グリフォンが、<実践に勝る鍛錬はない>などと偉そうなことを言っていたが、終わってみればその通りだと思う。守り切れたという満足感からか、オレは自分が一回り成長したように感じた。

 だが、ロアを守り切り、アダドの連中は退けたというのに、まだ危機は終わっていなかった。

 今度は天災だって?
 もしかして、今度はオレたちの国の危機なんじゃないか?
 なんでそうなる?

 そんな規模の話になると、オレには何もできない。
 一回り成長したと思ったのに、すぐに自分の無力を思い知らされることになった。

 いや、オレだって何もしなかったわけじゃない。
 ロアと従魔たちが総出で対処している間、怪しい動きをしているアダドの人間がいたので追いかけて戦った。
 それが少しはロアたちの助けになったとは思う。

 だけど、全てが終わった後に、男爵にされるほどの貢献はしてない!
 ロアのオマケで爵位が貰えたことは理解している。オレに押し付けられた理由も、かなり納得はいかないものの、理解した。

 だけど、元々の騎士爵の地位ですら手に余ってたんだ。
 男爵って、世襲貴族だぞ?オレの子供も貴族になるの?
 身の程に合ってない地位に圧し潰されそうだ。

 まあ、オレが引き受けることでロアが喜んでるし仕方ないか。






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