追い出された万能職に新しい人生が始まりました

東堂大稀(旧:To-do)

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閑話

クリストフ・レポート 4(書籍二巻後半ダイジェスト)

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 これはクリストフの回顧録である。

 ※これはクリストフから見た物語のダイジェストになります。クリストフ視点のため、メインストーリーでない部分が中心であったり、物語中に無いシーンが含まれていたりします。また、クリストフがその時点で知りえない情報は含まれていません。
 ※文中の『バカ』『バカリーダー』『リーダー』は全てディートリヒのことです。


●月●日

 目を覚ますと、コルネリアをベルンハルトが抱きしめているのが目に入った。
 何やってんだバカップルの真似かよ……と思ったら、グリフォンが指導した訓練の一環らしい。
 ロアは魔法薬作りをしながら同時進行でスープを作っていた。器用なやつだ。
 魔法薬作りは尋常じゃない集中力を必要とするはずだから、片手間でやるなどありえない。ありえないものを見る目で凝視していたら、ロアはそれに気付いて呑気に挨拶をしていた。

 魔獣の森の中で、しかもゴーレムに襲われて命の危険を感じた後だというのにロアは落ち着いている。
 たぶん、グリフォンと魔狼たちが傍らにいるおかげだろう。
 従魔たちがいる今の状態こそが、ロアの本来の姿に違いない。

 激ウマなスープを食った後、オレも訓練をさせられた。
 性悪グリフォンに正面から見つめられ指導されたら、言われたとおりにするしかないだろ……。
 なんでロアはこんな化け物を相手にして平気なんだろう?しかも尻に敷いてるし。
 
 オレたちが気絶したのは、グリフォンが秘術を使って魔力を身体に取り込む経路を無理やり広げたせいらしい。
 秘術を使ってやったのだから感謝しろと、礼を強要された。
 すぐに意識が途切れたのでほとんど覚えてはいないが、本当に痛かった。
 一瞬で気絶するほどの激痛を、いくら使える魔力が増えるからと言っても平気で他人に与えられるとか、本当にあのグリフォンは性悪だ。
 リーダーがまだ目を覚まさないのは、性悪グリフォンがオレたちより強めに痛みを与えたに違いない。
 リーダーはああみえて痛みに強いし、体力もある。
 いつもなら倒れても真っ先に起き上がるのだ。そして、オレたちを守ろうとしてくれる。
 間違いなく、恨みを込めて特別強くされたんだろう。

 結局、この訓練のおかげでオレたちはミスリルゴーレムを倒すことができた。
 しかし、実はこの訓練やミスリルゴーレムとの戦いよりも、この後の方が地獄だった。

 ロア、あいつはやっぱり色々とおかしい。
 なんであんなことをやらかすんだ?
 そして、なんで森の中に散らばったゴーレムの素材を回収するのに駆けずり回って体力が持つんだ?
 訳が分からない。
 オレたちだって相当鍛錬をしているのに。

 オレたちはその後、やっと森を出ることができた。
 疲労困憊な様子に、森の外にいた冒険者たちは優しかった。

 やっと終わったという安心感で判断が鈍っていたのだろう。オレたちはいつの間にか、グリフォンを枕にして眠るという暴挙を犯していた。



●月●日
 
 まだゴーレムの生き残りがいた。
 いったい、どれだけ増えてるんだよ!!?と愚痴りたくなった。
 それを周りにいた人間たちに伝えるために性悪グリフォンがオレに恥をかかせる行動をしたのだが……割愛する。
 あれ、ただの嫌がらせだよな?
 
 オレたち、というかグリフォンを追いかけてきたゴーレムは、ゴーレムなのにゴーレムじゃなくなっていた。

 オレも意味が分からないが、事実だ。
 そもそもゴーレムは錬金生物で、元になった魔獣が存在するのだ。
 姿が変わっていてもおかしいことじゃない。そう、思うことにした。

 オレたちはその魔獣の姿を遠く離れた高台の上で見ていた。
 オレたちはグリフォンに迎撃のメンバーから外され、避難するように指示されたのだ。
 戦いに邪魔だと追い払われてしまった。

 そして、出現したゴーレムのなれの果てを目にした時に、オレたちではまったく対処できないことを思い知った。
 あれは人間が対応できる存在ではない。
 あそこにいたら、足手まといにしかならない。

 「ありえないだろ……」

 誰が呟いたのか分からないが、それを見たとき誰もが同じことを考えた。
 山のごとく巨大なその姿。
 しかも、物理攻撃がまったく効かない。戦う手段どころか身を守る術すら、オレたちは持ち合わせていなかった。
 それを、グリフォンと二匹の魔狼と、そしてロアが倒した。

 あのとどめを刺した魔法。
 使ったのは間違いなくグリフォンだろう。
 数キロにわたる巨大な竜巻。詳細はわからないが、ただの竜巻ではありえない凶悪なものだった。
 小さな街くらいなら一瞬で消し去ってしまうだろう。

 あの人知を超える大魔法を、性悪グリフォンが使っている。それだけで不安が押し寄せてくる。
 あのグリフォンはロアに何かあれば平気で人を殺すだろう。
 街どころか国でも平気で滅ぼすに違いない。
 むしろ、ロアが禁止しても目の届かないところでやらかすかもしれない。

 ……危険だ。

 オレはグリフォンの危険性を再認識した。
 今はロアが抑えているが、今後はどうなるか分からない。
 ……と、なるとだ。

 オレはめちゃくちゃ嫌なことに気付いてしまった。
 オレが監視することになるんじゃないだろうか?あの性悪グリフォンとロアを。
 マジで?

 きっと真面目に本国に報告を上げたら、本国は危険性を認識してしまう。
 間違いなく、全力でオレに監視役を押し付けるに違いない。
 人員を派遣してもらいたいが、今のところロアたちの懐に入って監視できる立場にいるのはオレたちだけだ。
 そして、他のメンバーはそいういった裏の任務には向かない。

 まってくれ、オレはバカリーダーの監視だけで手一杯だぞ?無理だ。
 それにグリフォンだけでなくロアも色々とやばい。
 この数日だけでどれだけのことをやらかしてくれたか。
 なにより、ロアにはそれなりの借りがあるのだ。監視などしたくない。そして、監視しているとバレた時のグリフォンの行動が予測できないのがなにより怖い。

 この瞬間、オレは報告書に全力で嘘を書くことに決めた。
 しかし、報告書を読むのは女王だ。
 上手くやらないとすぐにバレる。
 絶対バレる。
 ……本当のことだけ書いて、ヤバい内容は無かったことにするか?

 あ、胃が痛くなってきた。
 





 
  
 
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