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【11】歳月不待~ぼくら運命の出会い
ちょっとだけ君が判ったかな
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御堀を寮に届けた翌日は日曜日で、その日も朝から部活だった。
ウィステリアでの実践が功をなしたのか、幾久は御堀に対し、緊張することがなくなった。
演技を見て、久坂と高杉の二人が「へえ」「ほう」と感嘆の声を上げたくらいには、御堀と幾久の息はぴったりになっていた。
「どうした幾久、急に良くなったの」
「そっすか?」
高杉は驚きつつも、拍手をしてくれた。
「御堀に対してずっと控え目じゃったのに、今日は全くそれがのうなっちょる。これならええぞ」
高杉の言葉にほっとしつつ、肩の荷が下りたような気がする。
「やっとハル先輩に褒められたぁ」
「ま、全体から言ったらまだまだ文句はあるが」
「勘弁して下さい。これが精いっぱいッス」
「伸び代はまだまだあるって事だね。頑張れいっくん」
にこにこ笑って久坂が言うが、幾久はげんなりとした表情になる。
「無茶言わないで下さい。ホント、これがいまの精一杯っすよ」
でも、伸び代があると言われたのは嬉しい。
(もっと頑張ろうっと)
一端、下がって椅子に腰かけると、山田に背を叩かれた。
「幾、マジでめちゃくちゃ良くなってんじゃん!」
「そーだよいっくん。急になにがあったの?女子?女子になんかされた?」
三吉がくいついてくるが、幾久は苦笑した。
「なにもされてないよ。でも誉のおかげっていうのが大きいかな」
幾久が言うと、三吉と山田が顔を見合わせる。
「お前らさ、なんか急に接近してないか?」
「え?」
「そうだよ。みほりん、昨日寮に帰ってからもすっごい楽しそうにしてたし。いっくんの事、幾、幾って嬉しそうに喋ってるし」
「うーん、接近っちゃ接近かな。お互いに苗字はやめようって決めてさ」
御堀の言うとおり、互いの呼び方を変えただけで距離が縮んだ気がしたし、実際御堀の知らない部分を知って、親近感が湧いたのも事実だ。
「オレ、誉の事を誤解してた。いろいろと」
主席で入学して、ずっと鳳でトップを走り続けて、老舗のお坊ちゃんで、ユースで、雪充にも高杉にも期待されるできる後輩で、人種が違うのだと思い込んでいたけれど。
(実際はけっこう嘘つき?いや、嘘はついてないのか)
本当はロミオの経験があったりとか、頑張って優等生やっているとか、無理してるとか、スマホをわざと忘れるとか。
(ってことは、そういう誉の事、同じ寮でも知らないのか)
御堀がよくスマホを忘れている、と三吉は言っていたが、あれがわざとだと気づいている様子はない。
幾久だって言われなければ気づかなかっただろう。
「なに?いっくん、なに笑ってんの?」
「いや、いろいろ面白いなって」
一緒の寮で同じクラスでも知らないことがある。
最近まで名前すらよく知らなかったのに、知っていることがある。
無理矢理に参加させられた地球部だけど、これはこれで面白いのかも、と幾久は思った。
「悪い、ちょっと入るよ」
そう言って部室の扉を開けたのは雪充だ。
「雪ちゃん先輩!」
思わず立ち上がると、雪充が笑顔を見せた。
「ちょっと御堀に聞きたいことがあって。いいかな」
「……はい」
静かに御堀が立ち上がるも、幾久はその声と表情に、御堀が乗り気でないことに気が付いた。
「あの、雪ちゃん先輩」
「ん?」
「誉、じゃなくて御堀君ですけど、今日、これから連れ出したりとかします?」
幾久の問いに、雪充は少し考えた。
「できれば、だけど。ひょっとして、御堀は忙しいのかな?」
「はいっす」
幾久が思い切り頷くと、御堀は驚いて幾久を見た。
幾久は雪充に訴えた。
「オレ、ずっと芝居がうまくできなくてメッチャ焦ってたんすけど、御堀君のおかげで今日すごい調子いいんス。できればこのままやりたいんで、どーしても、絶対に、御堀君が必要でどうしようもない、っていうのじゃないのなら、今日は勘弁して貰えませんか」
すると雪充は少し考えて、「うーん、」と小さく唸ったが、幾久に「判った」と告げた。
「じゃあ、御堀、悪いけど今から十五分だけ時間貰えるかな?一気に確認をすませて、あとはこっちでどうにかしよう」
「ありがとうございます」
御堀はほっとした笑顔を見せ、幾久に笑った。
そっか、やっぱり嫌だったんだ、と幾久は自分の判断が御堀の救いになったのだと思うと急に誇らしい気持ちにすらなったのだった。
そうして思う存分、御堀と幾久は互いに集中して演技を続け、セリフや他の皆との連携も確認することが出来た。
呼び出しがもうないせいか、御堀は役に集中することが出来、幾久も随分とそれに引っ張られ、皆がまるで本番さながらに演技を行う。
終わるころには全員で思わずハイタッチをしたくらいに、充実した稽古をすることが出来たのだった。
「へえ、うまく行ってんだ。良かったじゃん」
「うん。ホントどうなるかと思ったけど」
夕食を終えたあとの御門寮で、幾久はいつものように庭で軽くボールを蹴っていた。
すでに時期は中間試験の前週間となり、放課後の部活は禁止されている時期だ。
児玉も勿論、軽音部の練習は出来ないのだが、アコースティックギターを練習で弾いている。
児玉はグラスエッジの大ファンというだけあって、ロックが好きらしい。
幾久はロックというジャンルにも音楽そのものもあまり興味はなかったが、児玉が聞くのならとつきあいで聞くようになっていた。
グラスエッジは確かにカッコいいのだが、あの面倒で騒がしい人たちのバンドというのがどうも一致せず、いい曲だなと思ってもそれだけの感想しかなかった。
「グラスエッジのコピーやるんだっけ?」
「そう。全部じゃねーけどな」
軽音部も桜柳祭で発表があるので児玉も当然それに出場する。
「弾くのはエレキギターだけど、アコギもかっこいいし、やっぱ人に聞かせないと度胸はつかないよな」
「ふーん、そういうもんなのか」
「やったことねージャンルだからさ。それにこの環境だと、ガツガツ勉強するのもなあって思ってさ」
試験週間となっても先輩たちは必死に勉強をするという事がなく、夕食を終えてそれぞれ自分勝手に一休みして、それから勉強に入っている。
なんとなく時間割みたいなものが寮の中で出来上がっていて、児玉もそれに合わせて行動していた。
ここ最近、幾久がボールを蹴る間に児玉も一緒に外に出て、指が鈍らないようにギターを爪弾く。
「タマ、寒くね?気にせず寮の中で弾いたらいいのに」
高杉も久坂も吉田も、楽器については文句が出たことがない。
しかし児玉は首を横に振った。
「山縣先輩が受験勉強中だろ?気を使うよ」
「どうせあの部屋防音なのに。気にしすぎ」
なぜなのか理由は知らないが、山縣の部屋は防音室になっている。
山縣がそうしたわけではなく、最初からそうだったのだという。
幾久も入ったことはあるが、本当に完璧な防音で、外からの音も内からの音も、完全シャットアウトされている。
たまにノックしても返事がないのでいきなり開けると、かなりの音量でアニメソングを鳴らしながら踊っていることもあった。
「防音でもやっぱ部屋の出入りとかで気になるかもしれないだろ。楽器の音って、好きな人にはいいけど、俺なんかメッチャ下手だしさあ」
言いながら児玉はギターコードを押さえる。
「軽音の先輩が地球部の音響担当だろ?この試験終わったら地球部に参加して、効果音使って本格的に舞台チェックするって言ってたからさ、ずっとバンドにかかりきりもできないだろ?だったら俺も曲仕上げておかないと、下手でもみっともないトコ見せるのヤダし」
「試験前なのに頑張るなあ」
「それ言うなら幾久もそうだろ?サッカーなんかやって余裕じゃん」
笑う児玉に幾久も笑って言う。
「オレのは気晴らしみたいなもん」
「俺もだよ」
互いに笑って、幾久は足を止めて児玉の座っている大きな石の上に腰を下ろした。
「気のせいかもしれないけどさ、なんか鳳、ちょっといけるんじゃないかって思ってる」
幾久の言葉に児玉もギターを鳴らしながら頷く。
「実は俺も」
「だよね。なんかさ、あーこれ絶対に無理って事もないんじゃないかって」
「判る判る」
児玉が手を止めて、ギターに肘をついた。
「前期の俺って、なんであんなに必死で一生懸命で、無理しまくってたのかなって。今なら雪ちゃん先輩が、そのやり方じゃ駄目だって言ったのが、少しわかる気がするんだ」
環境が児玉の味方でなかったから、それで意地を張って勉強に集中しようとしていたのかもしれない。
鳳じゃなければ駄目だ、と思い込んでいたせいもあるかもしれない。
「先輩らができる人のせいかなあ。自分のやり方っていうのを面倒でも探して、試行錯誤して、それでやっていくしかないって思ったら、逆に気が楽になったっていうか」
御門の二年生は三人とも、トップテン、高杉と久坂の二人に関しては常にツートップを争うばかりのエリートだ。
だけどその二人も、勿論勉強はしてはいるけれど、ガツガツやっているというよりは、互いに一緒に教科書や参考書を並べ、途中話し合いながら問題を解いていくといった感じでやっている。
吉田はバイトと寮の仕事をやりつつ、それに途中から参加して、あとは自分で時間の合間を見ながら家事の合間にやっているといった感じだ。
児玉が言った。
「前期の俺がいまの俺見たらさ、発狂するぜ絶対。試験前に何ギターなんか弾いてるんだって。遊んでんじゃねーぞ、そんなんで鳳に戻れんのかよって」
「言いそう、言いそう」
幾久も楽しそうに笑う。
ウィステリアでの実践が功をなしたのか、幾久は御堀に対し、緊張することがなくなった。
演技を見て、久坂と高杉の二人が「へえ」「ほう」と感嘆の声を上げたくらいには、御堀と幾久の息はぴったりになっていた。
「どうした幾久、急に良くなったの」
「そっすか?」
高杉は驚きつつも、拍手をしてくれた。
「御堀に対してずっと控え目じゃったのに、今日は全くそれがのうなっちょる。これならええぞ」
高杉の言葉にほっとしつつ、肩の荷が下りたような気がする。
「やっとハル先輩に褒められたぁ」
「ま、全体から言ったらまだまだ文句はあるが」
「勘弁して下さい。これが精いっぱいッス」
「伸び代はまだまだあるって事だね。頑張れいっくん」
にこにこ笑って久坂が言うが、幾久はげんなりとした表情になる。
「無茶言わないで下さい。ホント、これがいまの精一杯っすよ」
でも、伸び代があると言われたのは嬉しい。
(もっと頑張ろうっと)
一端、下がって椅子に腰かけると、山田に背を叩かれた。
「幾、マジでめちゃくちゃ良くなってんじゃん!」
「そーだよいっくん。急になにがあったの?女子?女子になんかされた?」
三吉がくいついてくるが、幾久は苦笑した。
「なにもされてないよ。でも誉のおかげっていうのが大きいかな」
幾久が言うと、三吉と山田が顔を見合わせる。
「お前らさ、なんか急に接近してないか?」
「え?」
「そうだよ。みほりん、昨日寮に帰ってからもすっごい楽しそうにしてたし。いっくんの事、幾、幾って嬉しそうに喋ってるし」
「うーん、接近っちゃ接近かな。お互いに苗字はやめようって決めてさ」
御堀の言うとおり、互いの呼び方を変えただけで距離が縮んだ気がしたし、実際御堀の知らない部分を知って、親近感が湧いたのも事実だ。
「オレ、誉の事を誤解してた。いろいろと」
主席で入学して、ずっと鳳でトップを走り続けて、老舗のお坊ちゃんで、ユースで、雪充にも高杉にも期待されるできる後輩で、人種が違うのだと思い込んでいたけれど。
(実際はけっこう嘘つき?いや、嘘はついてないのか)
本当はロミオの経験があったりとか、頑張って優等生やっているとか、無理してるとか、スマホをわざと忘れるとか。
(ってことは、そういう誉の事、同じ寮でも知らないのか)
御堀がよくスマホを忘れている、と三吉は言っていたが、あれがわざとだと気づいている様子はない。
幾久だって言われなければ気づかなかっただろう。
「なに?いっくん、なに笑ってんの?」
「いや、いろいろ面白いなって」
一緒の寮で同じクラスでも知らないことがある。
最近まで名前すらよく知らなかったのに、知っていることがある。
無理矢理に参加させられた地球部だけど、これはこれで面白いのかも、と幾久は思った。
「悪い、ちょっと入るよ」
そう言って部室の扉を開けたのは雪充だ。
「雪ちゃん先輩!」
思わず立ち上がると、雪充が笑顔を見せた。
「ちょっと御堀に聞きたいことがあって。いいかな」
「……はい」
静かに御堀が立ち上がるも、幾久はその声と表情に、御堀が乗り気でないことに気が付いた。
「あの、雪ちゃん先輩」
「ん?」
「誉、じゃなくて御堀君ですけど、今日、これから連れ出したりとかします?」
幾久の問いに、雪充は少し考えた。
「できれば、だけど。ひょっとして、御堀は忙しいのかな?」
「はいっす」
幾久が思い切り頷くと、御堀は驚いて幾久を見た。
幾久は雪充に訴えた。
「オレ、ずっと芝居がうまくできなくてメッチャ焦ってたんすけど、御堀君のおかげで今日すごい調子いいんス。できればこのままやりたいんで、どーしても、絶対に、御堀君が必要でどうしようもない、っていうのじゃないのなら、今日は勘弁して貰えませんか」
すると雪充は少し考えて、「うーん、」と小さく唸ったが、幾久に「判った」と告げた。
「じゃあ、御堀、悪いけど今から十五分だけ時間貰えるかな?一気に確認をすませて、あとはこっちでどうにかしよう」
「ありがとうございます」
御堀はほっとした笑顔を見せ、幾久に笑った。
そっか、やっぱり嫌だったんだ、と幾久は自分の判断が御堀の救いになったのだと思うと急に誇らしい気持ちにすらなったのだった。
そうして思う存分、御堀と幾久は互いに集中して演技を続け、セリフや他の皆との連携も確認することが出来た。
呼び出しがもうないせいか、御堀は役に集中することが出来、幾久も随分とそれに引っ張られ、皆がまるで本番さながらに演技を行う。
終わるころには全員で思わずハイタッチをしたくらいに、充実した稽古をすることが出来たのだった。
「へえ、うまく行ってんだ。良かったじゃん」
「うん。ホントどうなるかと思ったけど」
夕食を終えたあとの御門寮で、幾久はいつものように庭で軽くボールを蹴っていた。
すでに時期は中間試験の前週間となり、放課後の部活は禁止されている時期だ。
児玉も勿論、軽音部の練習は出来ないのだが、アコースティックギターを練習で弾いている。
児玉はグラスエッジの大ファンというだけあって、ロックが好きらしい。
幾久はロックというジャンルにも音楽そのものもあまり興味はなかったが、児玉が聞くのならとつきあいで聞くようになっていた。
グラスエッジは確かにカッコいいのだが、あの面倒で騒がしい人たちのバンドというのがどうも一致せず、いい曲だなと思ってもそれだけの感想しかなかった。
「グラスエッジのコピーやるんだっけ?」
「そう。全部じゃねーけどな」
軽音部も桜柳祭で発表があるので児玉も当然それに出場する。
「弾くのはエレキギターだけど、アコギもかっこいいし、やっぱ人に聞かせないと度胸はつかないよな」
「ふーん、そういうもんなのか」
「やったことねージャンルだからさ。それにこの環境だと、ガツガツ勉強するのもなあって思ってさ」
試験週間となっても先輩たちは必死に勉強をするという事がなく、夕食を終えてそれぞれ自分勝手に一休みして、それから勉強に入っている。
なんとなく時間割みたいなものが寮の中で出来上がっていて、児玉もそれに合わせて行動していた。
ここ最近、幾久がボールを蹴る間に児玉も一緒に外に出て、指が鈍らないようにギターを爪弾く。
「タマ、寒くね?気にせず寮の中で弾いたらいいのに」
高杉も久坂も吉田も、楽器については文句が出たことがない。
しかし児玉は首を横に振った。
「山縣先輩が受験勉強中だろ?気を使うよ」
「どうせあの部屋防音なのに。気にしすぎ」
なぜなのか理由は知らないが、山縣の部屋は防音室になっている。
山縣がそうしたわけではなく、最初からそうだったのだという。
幾久も入ったことはあるが、本当に完璧な防音で、外からの音も内からの音も、完全シャットアウトされている。
たまにノックしても返事がないのでいきなり開けると、かなりの音量でアニメソングを鳴らしながら踊っていることもあった。
「防音でもやっぱ部屋の出入りとかで気になるかもしれないだろ。楽器の音って、好きな人にはいいけど、俺なんかメッチャ下手だしさあ」
言いながら児玉はギターコードを押さえる。
「軽音の先輩が地球部の音響担当だろ?この試験終わったら地球部に参加して、効果音使って本格的に舞台チェックするって言ってたからさ、ずっとバンドにかかりきりもできないだろ?だったら俺も曲仕上げておかないと、下手でもみっともないトコ見せるのヤダし」
「試験前なのに頑張るなあ」
「それ言うなら幾久もそうだろ?サッカーなんかやって余裕じゃん」
笑う児玉に幾久も笑って言う。
「オレのは気晴らしみたいなもん」
「俺もだよ」
互いに笑って、幾久は足を止めて児玉の座っている大きな石の上に腰を下ろした。
「気のせいかもしれないけどさ、なんか鳳、ちょっといけるんじゃないかって思ってる」
幾久の言葉に児玉もギターを鳴らしながら頷く。
「実は俺も」
「だよね。なんかさ、あーこれ絶対に無理って事もないんじゃないかって」
「判る判る」
児玉が手を止めて、ギターに肘をついた。
「前期の俺って、なんであんなに必死で一生懸命で、無理しまくってたのかなって。今なら雪ちゃん先輩が、そのやり方じゃ駄目だって言ったのが、少しわかる気がするんだ」
環境が児玉の味方でなかったから、それで意地を張って勉強に集中しようとしていたのかもしれない。
鳳じゃなければ駄目だ、と思い込んでいたせいもあるかもしれない。
「先輩らができる人のせいかなあ。自分のやり方っていうのを面倒でも探して、試行錯誤して、それでやっていくしかないって思ったら、逆に気が楽になったっていうか」
御門の二年生は三人とも、トップテン、高杉と久坂の二人に関しては常にツートップを争うばかりのエリートだ。
だけどその二人も、勿論勉強はしてはいるけれど、ガツガツやっているというよりは、互いに一緒に教科書や参考書を並べ、途中話し合いながら問題を解いていくといった感じでやっている。
吉田はバイトと寮の仕事をやりつつ、それに途中から参加して、あとは自分で時間の合間を見ながら家事の合間にやっているといった感じだ。
児玉が言った。
「前期の俺がいまの俺見たらさ、発狂するぜ絶対。試験前に何ギターなんか弾いてるんだって。遊んでんじゃねーぞ、そんなんで鳳に戻れんのかよって」
「言いそう、言いそう」
幾久も楽しそうに笑う。
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