お客様はあやかしです~神様に指名されてあやかし限定のツアコンやってます~

新高

文字の大きさ
上 下
6 / 26
神様と行く、うどんの旅とその切っ掛け

しおりを挟む



 下道に降りたはずなのに、ナビに従って走ればまた高速に乗せられた。と、思いきや、そこは「湖西道路」という名の無料の道路だった。こんな道があるの!? と雪乃は驚いたが、そういえば福岡と熊本にも有明湾岸道路があったなと思い出す。まあなんにせよ、信号や歩行者を気にせずに走る事ができるのは気が楽でいい。
 それでもしばらく走れば一般道と合流した。どうやらまだ工事中であるようだ。ちらりと見えた青看板には「敦賀」の文字があり、少し考えた後にそれが福井の地名だと思い出す。

「え、滋賀から福井に行けるの!? っていうかこれ最終的に繋がるの!?」 

 うわーすごーい!! と語彙力の欠片もない感想を脳内で上げつつ車を進ませると、ようやく目的の場所へと辿り着いた。
 思っていたよりも大きな神社だった。駐車場も運良く空いており、雪乃は車を停めると外へ出る。まずはきちんと本殿にお参りをして、と思うものの気持ちは目の前――道路を挟んだ先の湖の中に立つ大鳥居に目が行ってしまう。

「うわあ……」

 写真で見た通り、いや、それ以上かもしれない。規模はどうしたって宮島の大鳥居に軍配が上がってしまう気もするが、その分こちらはより一層地元に根付いている感じがする。

「素敵なのはどっちも同じだけど、宮島は観光地すぎて人が多かったんだもんなあ」

 それでもここも人気の場所の様で、湖岸に面したガードレールぎりぎりに立つ人が多い。そしてそこへ向かうために、車の切れ目を狙って車道を渡っている。
 雪乃も是非とも近くで見たいと周囲を見渡すが、確認できる範囲で横断歩道はない。これはやはり、皆に倣って自分も車道を突っ切るしかないのか。うん、なさそう、と雪乃はタイミングを計る。
 そうやって動かした視界の先。同じ歩道上に茶色の塊がある。え、と雪乃は数度瞬きをした。茶色の塊、もとい、肩まで伸びた茶色の髪の毛を風に揺らしながら、ふくふくと可愛らしい女の子が立っている。年の頃は五歳くらいだろうか、雪乃と同じ様にキョロキョロと周囲を見ているが、それは車道を渡ろうというよりか道を探している様に見える。

 子どもをどうして茶色の塊などと思ってしまったのか。それになんだか妙な感じがする、と雪乃はその子どもをつい見つめてしまう。子どもは両手に一杯の花束を抱えているが、花屋で売っている様な綺麗なラッピングをされたものではない。剥き出しの葉っぱに茎と、まるで付近の土手から持ってきた様に思えてしまう。
 まあ田舎であれば全く見ない光景というものではない。この神社の立つエリアも、国道にこそ面しているので交通量は多いが緑の多い土地だ。車を走らせている時に見えた景色ものどかな田舎の風景に近い。

 あれ、でもそうしたらこの子はどこから来たの……? この辺、民家っていう民家なかったような?

 通りから奥の方へ行けば住宅街があるのかもしれない。車で来る途中、国道ぎりぎりではなかろうか、という程の至近距離に住宅街もあった。もしかしたらそこに住んでいる子どもなのか。しかしそうするとこの神社からは距離がある。小さな子どもの足ではそうそう歩けるものではないだろう。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

狼神様と生贄の唄巫女 虐げられた盲目の少女は、獣の神に愛される

茶柱まちこ
キャラ文芸
 雪深い農村で育った少女・すずは、赤子のころにかけられた呪いによって盲目となり、姉や村人たちに虐いたげられる日々を送っていた。  ある日、すずは村人たちに騙されて生贄にされ、雪山の神社に閉じ込められてしまう。失意の中、絶命寸前の彼女を救ったのは、狼と人間を掛け合わせたような姿の男──村人たちが崇める守護神・大神だった。  呪いを解く代わりに大神のもとで働くことになったすずは、大神やあやかしたちの優しさに触れ、幸せを知っていく──。  神様と盲目少女が紡ぐ、和風恋愛幻想譚。 (旧題:『大神様のお気に入り』)

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

真夜中の仕出し屋さん~料理上手な狛犬様と暮らすことになりました~

椿蛍
キャラ文芸
「結婚するか、化け物屋敷を管理するか」 仕事を辞めた私に、父は二つの選択肢を迫った。 料亭『吉浪』に働いて六年。 挫折し、料理を作れなくなってしまった―― 結婚を断り、私が選んだのは、化け物屋敷と父が呼ぶ、亡くなった祖父の家へ行くことだった。 祖父が亡くなって、店は閉まっているはずだったけれど、なぜか店は開いていて―― 初出:2024.5.10~ ※他サイト様に投稿したものを大幅改稿しております。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

皇太后(おかあ)様におまかせ!〜皇帝陛下の純愛探し〜

菰野るり
キャラ文芸
皇帝陛下はお年頃。 まわりは縁談を持ってくるが、どんな美人にもなびかない。 なんでも、3年前に一度だけ出逢った忘れられない女性がいるのだとか。手がかりはなし。そんな中、皇太后は自ら街に出て息子の嫁探しをすることに! この物語の皇太后の名は雲泪(ユンレイ)、皇帝の名は堯舜(ヤオシュン)です。つまり【後宮物語〜身代わり宮女は皇帝陛下に溺愛されます⁉︎〜】の続編です。しかし、こちらから読んでも楽しめます‼︎どちらから読んでも違う感覚で楽しめる⁉︎こちらはポジティブなラブコメです。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

処理中です...