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神様と行く、うどんの旅とその切っ掛け
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しおりを挟む下道に降りたはずなのに、ナビに従って走ればまた高速に乗せられた。と、思いきや、そこは「湖西道路」という名の無料の道路だった。こんな道があるの!? と雪乃は驚いたが、そういえば福岡と熊本にも有明湾岸道路があったなと思い出す。まあなんにせよ、信号や歩行者を気にせずに走る事ができるのは気が楽でいい。
それでもしばらく走れば一般道と合流した。どうやらまだ工事中であるようだ。ちらりと見えた青看板には「敦賀」の文字があり、少し考えた後にそれが福井の地名だと思い出す。
「え、滋賀から福井に行けるの!? っていうかこれ最終的に繋がるの!?」
うわーすごーい!! と語彙力の欠片もない感想を脳内で上げつつ車を進ませると、ようやく目的の場所へと辿り着いた。
思っていたよりも大きな神社だった。駐車場も運良く空いており、雪乃は車を停めると外へ出る。まずはきちんと本殿にお参りをして、と思うものの気持ちは目の前――道路を挟んだ先の湖の中に立つ大鳥居に目が行ってしまう。
「うわあ……」
写真で見た通り、いや、それ以上かもしれない。規模はどうしたって宮島の大鳥居に軍配が上がってしまう気もするが、その分こちらはより一層地元に根付いている感じがする。
「素敵なのはどっちも同じだけど、宮島は観光地すぎて人が多かったんだもんなあ」
それでもここも人気の場所の様で、湖岸に面したガードレールぎりぎりに立つ人が多い。そしてそこへ向かうために、車の切れ目を狙って車道を渡っている。
雪乃も是非とも近くで見たいと周囲を見渡すが、確認できる範囲で横断歩道はない。これはやはり、皆に倣って自分も車道を突っ切るしかないのか。うん、なさそう、と雪乃はタイミングを計る。
そうやって動かした視界の先。同じ歩道上に茶色の塊がある。え、と雪乃は数度瞬きをした。茶色の塊、もとい、肩まで伸びた茶色の髪の毛を風に揺らしながら、ふくふくと可愛らしい女の子が立っている。年の頃は五歳くらいだろうか、雪乃と同じ様にキョロキョロと周囲を見ているが、それは車道を渡ろうというよりか道を探している様に見える。
子どもをどうして茶色の塊などと思ってしまったのか。それになんだか妙な感じがする、と雪乃はその子どもをつい見つめてしまう。子どもは両手に一杯の花束を抱えているが、花屋で売っている様な綺麗なラッピングをされたものではない。剥き出しの葉っぱに茎と、まるで付近の土手から持ってきた様に思えてしまう。
まあ田舎であれば全く見ない光景というものではない。この神社の立つエリアも、国道にこそ面しているので交通量は多いが緑の多い土地だ。車を走らせている時に見えた景色ものどかな田舎の風景に近い。
あれ、でもそうしたらこの子はどこから来たの……? この辺、民家っていう民家なかったような?
通りから奥の方へ行けば住宅街があるのかもしれない。車で来る途中、国道ぎりぎりではなかろうか、という程の至近距離に住宅街もあった。もしかしたらそこに住んでいる子どもなのか。しかしそうするとこの神社からは距離がある。小さな子どもの足ではそうそう歩けるものではないだろう。
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