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しおりを挟むアンネの悪縁を絶ち、子どもらに降り懸かっていた不幸を絶ち、国にとっても悪しき存在でしかなった集団を絶ったという事で、セレスの名は多くの国民に広まった。
「本当に……セレス様にはなんとお詫びをしたらいいのか……」
「いいえアンネ様それは違います。何度も言っていますが、これに関しては悪いのは全部あのくそや……ええと、元・婚約者の彼であって、アンネ様に非は一切ありませんから!」
「でも」
「アンネ様と出会えたことは、わたしにとってとても嬉しいんです。良縁なんですよ。だから、そんな風にご自分を責めないでください」
「……ええ、そうね、わたくしにとってもセレス様と出会えた事は本当に……良きご縁が、結ばれたと思うわ」
「俺とも縁ができましたしね」
「あなたとの縁はできれば今すぐ切りたいところですが」
「ほんとつれねえなあ聖女サマ」
くつくつと喉の奥で笑う騎士と、それを腹立たしげに睨み付ける聖女、そんな二人を楽しそうに見つめるご令嬢。そんないつもの光景であったが、その内一人の様子が徐々に変化していく。
「アンネ様?」
美しい笑みがいつの間にか消え、アンネは何やら思い詰めた様に表情を硬くしている。そんな彼女の様子にセレスはどうかしたのかと声を掛けるが、アンネは視線こそ向けるものの唇は閉じたままだ。
「なにか……お悩みごとですか? 後ろの人邪魔なら出て行ってもらいます?」
アンネは静かに首を横に振る。邪魔扱いされたシークは無言のままアンネを見つめており、セレスは否応なしに面倒ごとの気配を察してしまった。
どれ程面倒くさかろうと、その原因がアンネであるのならばセレスは喜んで手を貸すつもりだ。むしろ自分が役に立つのならば、遠慮せずにどんどん使って欲しい。それくらいアンネの存在は大切であり、勝手ながらも友人だとも思っている。友を助けるのは当然なのだからと、そう言ってやりたい気持ちは山々なれど、後ろにある存在がそんなセレスの友情を押しとどめる。
今から話をされる中身に関わってしまったが最後、とんでもない結末を迎える気がしてならない。セレスに先読みの力は無く、これは完全なるただの勘だ。しかしながら聖女として某かの力は持っているわけであるからして、勘の一つと括るには軽すぎる。
とはいえ目の前のアンネも最後の一歩を踏み出せずに苦しんでいるのだから、セレスはゆっくりと呼吸をし、そして覚悟を決めた。
「なんでも言ってくださいアンネ様。聖女としての役目はもちろんですが、わたしはアンネ様の友人でもあるつもりなんです。友達が困っていて、それにわたしの手が必要だったら、わたしは喜んで手を貸しますよ」
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