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AI vs アナログな旅人たち
助っ人参上③~助っ人参上~
しおりを挟む素早い足音の後に「ふんっ」と体幹に力を入れるような声がしたかと思うと,大きな音がした。きっと,現れたあの男が相手を突き飛ばしたのだ。
「バオウなの? どうしてここに? 助けに来てくれたの!? どうしてこの町に!?」
「質問が多い。喋っている暇があったら手伝え! 不意打ちでぶっ飛ばしたが,さすがにおれでも一人じゃきつい。もう立てるだろ。自分で立て。立って戦え!」
体が軽くなっている。見上げると,状況は一変していた。ロボットの商人は壁に打ち付けられ,ヒューゴとバオウは組み合っていた。強い。バオウもだが,ヒューゴは老いぼれと思って向かうべき相手ではない。科学の力も恐ろしいが,バオウと対等憎み合っているところから,きっと彼も身体を改造している。ヒューゴの腕は,みしみしと筋線維とは全く異なる音をたてていた。
ジャンが背後に回り,ヒューゴの脇腹に蹴りを入れた。ヒューゴは商人とは反対の方向の壁に叩きつけられた。
「助太刀助かる。君が来ないと危ないところだった。礼を言うよ。その・・・・・・」
「バオウだ。勘違いしないでほしい。おれはあんたの敵だ。いつかあんたの命を奪う。ただ,おれ以外のやつにやられると癪なんでね」
吐き捨てるようにして,目も合わせずにジャンに言った。ジャンは口元に笑みを浮かべている。
「そうか。まあとにかく,ありがとなバオウ。うちの坊ちゃんはまだ腰が抜けているみたいだから,二人でチャチャっとやっちまおうか」
「ちょっと! やれるから! 仲間外れにすんなっつーの」
足元をつつかれたと思って,目線を提げると,ミュウが足から方へと駆け上がってきた。「お前が連れて来てくれたのか。ありがとな,偉い子だ」と頭をなでると,嬉しそうに泣き声を上げた。
役者はそろった。ここからだ。
「さあ,形勢逆転だ。こっから痛い目見せてやろう」
「俺様が来たからもう大丈夫だ。坊ちゃんはネズミと寝てな」
この野郎,ちょっとは強くなったところを見せてやる。そう意気込んで剣を握る手に力を込めた。ヒューゴと商人はたいしてダメージではなかったのか,何でもないようにこちらに体を向けている。
「楽しそうなところ悪いが,わしは理想郷を作るために貴様らを排除する。覚悟せい!」
雰囲気が変わった。ただ,おそらくヒューゴも分かったうえで命を捨てる覚悟で先頭に臨んだのだろう。勝負は見えていた。
「あのじじいはおれがやる。ジャンさんは坊ちゃんとあのロボットをやってくれ」
少し迷った末,「分かった,お手並み拝見といこう」と頭を書きながらジャンはバオウに声をかけた。指導教官を相手に夢想していたバオウの姿がフラッシュバックして,思わず身震いした。
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