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最初の試練
初めての冒険⑥~宝のニオイ~
しおりを挟むデグーのさした方向へとぐんぐん進んでいくと,だんだんとあたりが明るくなってきた。木々は変わらず茂っているが,陽の光が強くなったのだろうか。上を見上げても何も変化は感じられないが,木の葉の隙間が広くなってきたのかもしれない。
このまま森の向こう側へと抜けるのだろうかと考えていると,ジャンが不意に立ち止まった。
「おい,あそこ見てみろよ」
ジャンは左手にある崖の向こう側を指さしている。よく見ると,くぼみの向こうに日が続いているようだ。ただ,そこ行くためには迂回してさらに出口とは逆の方向に進まないといけないだろう。さっきの男のことも気になるし,食料や寝床が確保できていないまま未知の空間へと進んでいくのは少し不安があった。
「なんだか道がありそうだね。だけど遠いし,お腹もすいてきたよ。今日は先に休む場所を確保しよう」
陽が沈む前にこの森を抜けたかった。冒険にワクワクしながら出てきたが,心のどこかで初めての冒険に対する不安もあったのかもしれない。まだ何もしたという気はしないが身体に疲労がたまっていた。
ただ,旅に慣れているジャンは違った。
「何だよソラ。意外と臆病なんだな。あれだけ冒険を楽しみにしていたくせによ。その場所で運命的な出会いがあるのが冒険だぞ。それに・・・・・・ほら,なんだか宝と男のロマンのニオイがあそこからしないか?」
ジャンは鼻をひくひくさせながら歩いた。もちろん乾いた木と土のにおい以外は何もしない。あそこに何かあるのだろうか。せっかくだから探検し尽くしてみよう。
ジャンと共に奥へと進み始めた。デグーは首元でキュゥ,と小さく鳴いた。
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