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第一部 離宮編
20.これから
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「……ふわぁ~………んん?もう昼か…?」
ヤバい、寝過ぎた。
昨日は城に帰ってから大騒ぎだった。
酒も振る舞われて、もう全員でドンチャン騒ぎ。
俺は未成年だから飲んでなかったけど、達成感で舞い上がってしまった。
酔っ払い達と一緒になって、叫んで踊って食べまくって、ついでに部屋の中でパルクールを披露してみた。
テーブルや窓枠をヒョイヒョイと飛び越えて壁を蹴って回転したりすると大歓声が上がって、俺はご機嫌になってガンガン技を披露した。
疲れて座り込んだところで大興奮した兵士達に囲まれ、飲み物を注がれてグビグビ飲んだら目が回って、そこから記憶が無い。
どうやら間違って酒を注がれたらしい。
最後に目に入ったライド王子の顔がスゲー焦ってたな。
でも頭も痛くないし、吐き気やムカつきも無い。
幸いにも二日酔とか急性アルコール中毒にはなっていないようだ。
ラッキー、俺ってば飲める体質かもな。
食堂に行くと、そこかしこに屍が突っ伏していた。
あ~、はっちゃけ過ぎたよね。
まあ昨日はしょうがないよな。
俺は普通に腹が減っていたので、いつも通りのボリューム満点朝食を頼んでご機嫌で食べ始めた。
そこへライド王子とテッセルが入って来た。
「お~、おはよう。ライド王子、テッセル」
「おはようございます、アキラ。昨日倒れたので心配していたのですが……大丈夫のようですね」
ライド王子は少し顔が青いが、酷い二日酔いではなさそうだ。
俺の皿に盛られた食事のボリュームを見て、苦笑している。
「そんなに飲んではいなかったようですし、疲れの方が強かったのでしょう。気付け薬は必要ありませんな」
テッセルは、ほっほと笑って、死んでる兵士達に二日酔いの薬を配りにいってしまった。
用意万端だな~、さすがはテッセル。
ライド王子は給仕にスープだけ頼むと、俺の向かいに座った。
「頭は痛いですが、こんなに清々しい朝は初めてですよ」
「だな。俺も」
ニコニコしてる王子に、俺もつられて笑う。
まだ問題は山積みだけど、まず第一歩は大成功だもんな。
ニヤけるって。
水のグラスで軽く乾杯してると、ザウスとリネルも食堂にやって来た。
リネルは頭を押さえて呻いてるけど、ザウスはケロリとしてる。
昨日浴びるように飲んでたってのに、バケモノ並みの酒豪だな。
一番飲んでたぞ?こいつ。
「おはよう、ザウス。リネル、テッセルに薬を貰うといい」
「おはようございます王子、アキラ。そうします~」
ヨロヨロとテッセルに薬を貰いにいくリネルを苦笑しながら見送ったライド王子は、ザウスに午後一番に主要メンバーを会議室に集めるように指示した。
「了解しました。現在の状況もまとめて報告させましょう」
ザウスに一緒に朝食を食べようと言ったら、もう済ませていて、これから町の見回りをしてくるんだと言って食堂を出て行った。
マジか、マジもんのバケモノか。
「ザウスが酔っぱらったところは一度も見たことがないよ」
俺の凝視にライド王子が苦笑しながら答えてくれる。
……マジもんだった。
「さて、まずは現在の進捗の報告を」
午後の会議室は、全員キリッとした顔で集合していた。
テッセルの二日酔い薬はスゴく優秀みたいだ。
「広場の水場は、朝から通常稼働しています。水位も安定していますが、定期的に担当に確認と報告を上げるよう指示してあります。リルの木は朝一で大工達が解体して畑の資材として運んで行きました」
大工達、仕事はやっ。
「畑の方は?」
「そちらも順調です。野菜と薬草は順次出荷され、選果場の横にリルの石鹸を作る工場を建設中です」
お~、いいね。
そこでも香り付き石鹸を作るようになれば、それも出荷できる。
スイカは離宮の菜園に専用区画を作ってるけど、そこも人を雇って作業してもらうことになる。
雇用も安定するな。
特産品としては、十分な種類が確保できた。
「そういえば、城の水は今後どうするのですか?」
リネルがはっとしたように聞いてきた。
もちろん、それも考えてある。
「本当は城の方でも井戸を掘れれば一番いいんだが、時間がない。なので城の菜園には広場から水路を引いてくる」
水路の敷設は、兵士達も慣れたものだから、すぐに出来るだろう。
一元管理した方が管理も楽だしたしな。
「ただ、城自体は高い位置にあるから、そこには別の方法で水を引く」
俺は離宮の菜園の横にも貯水池を作る案を出した。
そして、そこから風車と水車を組み合わせる方法を説明した。
ここは岩山に当たる風が常時吹いてるので、それを利用して風車と歯車を組み合わせて、更に水車を接続すれば人力を使わずに水が汲み上げられる。
「おお……こんな効率的な方法があるとは…」
簡単な図を書いて説明すると、おお~と感嘆の声が上がる。
とにかく、省人化しないとな。
人手は有限だ。
建設に関しては、ザウスに適任を選んでもらおう。
俺達は次の問題に着手しないとならないから。
ライド王子達と別の部屋に移動しようとドアを開けると、階段から伝令の兵士がバタバタと上がってきた。
うお!慌て過ぎて、足がもつれてるぞ。
そこでコケたら下まで落ちるから。
「たっ、大変です!アデル様が……アデル様がいらっしゃいました!」
「なんだって!?」
王子もみんなもビックリして慌てている。
えっと………アデルさんって、誰?
ヤバい、寝過ぎた。
昨日は城に帰ってから大騒ぎだった。
酒も振る舞われて、もう全員でドンチャン騒ぎ。
俺は未成年だから飲んでなかったけど、達成感で舞い上がってしまった。
酔っ払い達と一緒になって、叫んで踊って食べまくって、ついでに部屋の中でパルクールを披露してみた。
テーブルや窓枠をヒョイヒョイと飛び越えて壁を蹴って回転したりすると大歓声が上がって、俺はご機嫌になってガンガン技を披露した。
疲れて座り込んだところで大興奮した兵士達に囲まれ、飲み物を注がれてグビグビ飲んだら目が回って、そこから記憶が無い。
どうやら間違って酒を注がれたらしい。
最後に目に入ったライド王子の顔がスゲー焦ってたな。
でも頭も痛くないし、吐き気やムカつきも無い。
幸いにも二日酔とか急性アルコール中毒にはなっていないようだ。
ラッキー、俺ってば飲める体質かもな。
食堂に行くと、そこかしこに屍が突っ伏していた。
あ~、はっちゃけ過ぎたよね。
まあ昨日はしょうがないよな。
俺は普通に腹が減っていたので、いつも通りのボリューム満点朝食を頼んでご機嫌で食べ始めた。
そこへライド王子とテッセルが入って来た。
「お~、おはよう。ライド王子、テッセル」
「おはようございます、アキラ。昨日倒れたので心配していたのですが……大丈夫のようですね」
ライド王子は少し顔が青いが、酷い二日酔いではなさそうだ。
俺の皿に盛られた食事のボリュームを見て、苦笑している。
「そんなに飲んではいなかったようですし、疲れの方が強かったのでしょう。気付け薬は必要ありませんな」
テッセルは、ほっほと笑って、死んでる兵士達に二日酔いの薬を配りにいってしまった。
用意万端だな~、さすがはテッセル。
ライド王子は給仕にスープだけ頼むと、俺の向かいに座った。
「頭は痛いですが、こんなに清々しい朝は初めてですよ」
「だな。俺も」
ニコニコしてる王子に、俺もつられて笑う。
まだ問題は山積みだけど、まず第一歩は大成功だもんな。
ニヤけるって。
水のグラスで軽く乾杯してると、ザウスとリネルも食堂にやって来た。
リネルは頭を押さえて呻いてるけど、ザウスはケロリとしてる。
昨日浴びるように飲んでたってのに、バケモノ並みの酒豪だな。
一番飲んでたぞ?こいつ。
「おはよう、ザウス。リネル、テッセルに薬を貰うといい」
「おはようございます王子、アキラ。そうします~」
ヨロヨロとテッセルに薬を貰いにいくリネルを苦笑しながら見送ったライド王子は、ザウスに午後一番に主要メンバーを会議室に集めるように指示した。
「了解しました。現在の状況もまとめて報告させましょう」
ザウスに一緒に朝食を食べようと言ったら、もう済ませていて、これから町の見回りをしてくるんだと言って食堂を出て行った。
マジか、マジもんのバケモノか。
「ザウスが酔っぱらったところは一度も見たことがないよ」
俺の凝視にライド王子が苦笑しながら答えてくれる。
……マジもんだった。
「さて、まずは現在の進捗の報告を」
午後の会議室は、全員キリッとした顔で集合していた。
テッセルの二日酔い薬はスゴく優秀みたいだ。
「広場の水場は、朝から通常稼働しています。水位も安定していますが、定期的に担当に確認と報告を上げるよう指示してあります。リルの木は朝一で大工達が解体して畑の資材として運んで行きました」
大工達、仕事はやっ。
「畑の方は?」
「そちらも順調です。野菜と薬草は順次出荷され、選果場の横にリルの石鹸を作る工場を建設中です」
お~、いいね。
そこでも香り付き石鹸を作るようになれば、それも出荷できる。
スイカは離宮の菜園に専用区画を作ってるけど、そこも人を雇って作業してもらうことになる。
雇用も安定するな。
特産品としては、十分な種類が確保できた。
「そういえば、城の水は今後どうするのですか?」
リネルがはっとしたように聞いてきた。
もちろん、それも考えてある。
「本当は城の方でも井戸を掘れれば一番いいんだが、時間がない。なので城の菜園には広場から水路を引いてくる」
水路の敷設は、兵士達も慣れたものだから、すぐに出来るだろう。
一元管理した方が管理も楽だしたしな。
「ただ、城自体は高い位置にあるから、そこには別の方法で水を引く」
俺は離宮の菜園の横にも貯水池を作る案を出した。
そして、そこから風車と水車を組み合わせる方法を説明した。
ここは岩山に当たる風が常時吹いてるので、それを利用して風車と歯車を組み合わせて、更に水車を接続すれば人力を使わずに水が汲み上げられる。
「おお……こんな効率的な方法があるとは…」
簡単な図を書いて説明すると、おお~と感嘆の声が上がる。
とにかく、省人化しないとな。
人手は有限だ。
建設に関しては、ザウスに適任を選んでもらおう。
俺達は次の問題に着手しないとならないから。
ライド王子達と別の部屋に移動しようとドアを開けると、階段から伝令の兵士がバタバタと上がってきた。
うお!慌て過ぎて、足がもつれてるぞ。
そこでコケたら下まで落ちるから。
「たっ、大変です!アデル様が……アデル様がいらっしゃいました!」
「なんだって!?」
王子もみんなもビックリして慌てている。
えっと………アデルさんって、誰?
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