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★新規開拓(4)
しおりを挟む遠出をしてさすがに疲れたのか、帰ってからのマナトはソファーで横になって目を閉じている。
眠いなら部屋で休んだらいいのに、時々目を開ける。それから、リモコンを操作してテレビ画面に映るユーチューブの動画を切り替えて、アニメのギャグに「ふふっ」と笑う。
「疲れた?」
「ううん……。少し食べ過ぎちゃって……」
夜はなんだか蕎麦が食べたい、と言っていたのに、蕎麦屋でメニューを眺めながら熟考した後「カツ丼ください」と言うマナトはやっぱり惚けていて可愛かった。
一言もいじってなんかいないのに、「カツ丼には小さい蕎麦も付いてくるからすごく得だよね……!」と自分で自分を必死でフォローしている姿に心が和んだ。
「部屋に戻る?」
「うーん……。ユウイチさんも、こっちに来て……」
元々、むにゃむにゃした柔らかい口調をしているのに、くつろいでいる状態になるとマナトの声は、甘えているようにしか聞こえなかった。
覆い被さるようにしてソファーに寝そべると、マナトが抱き付いてきた。帰りも運転をしないといけないため、食事の時は一滴だって飲んでいないのに、ずいぶん甘えてくる。
ひょっとしたら、そういう気分なんだろうか、と背中を撫でてみるとモゾモゾとマナトが身を捩った。
「したいのかな……? する?」
「ん……。あの、でも、俺、さっきは普通にシャワーを浴びて体を洗っただけで……」
リモコンでテレビを消した後、言いにくそうに言葉を濁す様子から、「察して」というマナトの気持ちが読み取れた。
「こうやって、抱き合っているだけでも幸せだからいいよ」
「うん……」
「マナトが、気持ちいいと思ってくれたらもっと嬉しいけれど……」
「ん、んん……」
セックスする、イコール挿入のイメージがあるからなのか、恥ずかしそうにしながらも、マナトはどこかすまなさそうだった。
マナトが気持ちいいと感じるのが一番だよ、本当だよ、と言い聞かせながら部屋着越しの硬い胸を揉んだ。
初めはくすぐったそうにしていたものの、安心したのかさっきよりはずいぶんリラックスした顔で、マナトは何度か頷いた。
十代、二十代が好んで着るダボッとした服を着ているマナトもカジュアルで可愛いけれど、今日みたいにスリムなシルエットの服を着ている姿は新鮮だった。
初めて知り合った時は今よりもずっと細くて頼りない体つきだったのに、学生の頃から体を使うアルバイトをしていたため、ずいぶん逞しい引き締まった体になった。
シワ一つ無いシャツをマナトが試着すると、背中の部分がピンと張っていて、服越しでも若い、綺麗な体をしているのがわかった。
思い出しただけで妙にそそられてしまう。恥ずかしい、とイヤイヤするマナトを「大丈夫だから」と宥めて着ている服を一気に捲りあげた。
「……ユウイチさん、あんまり見ないで」
「大丈夫だよ。見てないよ、全然見てないよ」
「乳首、ジロジロ見ないでよ……」
隠されてしまう前に、そっと両方の手首を押さえていたため、ウルウルした大きな目で「恥ずかしい」とマナトが見つめてくる。
顔が可愛い、履いているパンツがど派手、というだけでも興奮するのに、そのうえ乳首まで小さいのだから、マナトの存在はほとんど奇跡に近かった。
小さくてとても可愛い乳首をしているのに、いまだに一緒に風呂に入る時はさりげなく隠そうとする。そんな恥ずかしがりやのマナトが「見ちゃ嫌だ」と口にしながら、無防備に上体を晒している姿は堪らない。
まだ直接触れていないのに、すでに硬く芯を持ちつつある小さな乳首を、片方だけ指の腹で撫でると、マナトはますます目を潤ませた。
すぐにでも口に含んで、それから舐めて吸ってやりたい。何度も胸を上下させるマナトの耳の側へ唇を寄せた。
「こういう時は、どんなふうにおねだりをするんだった?」
「いやっ……、やだあっ……」
「可愛い声で、言ってみて……」
「あっ……! やだっ、いやっ……」
外耳に唇で触れると、マナトは顔を背けた。すでに、頬どころか耳まで赤くなっていて、心なしか体も火照っている。太ももには固いものが時々擦り付けられる。
恥ずかしがりながらも、マナトはいつだって欲求に正直だった。もう少し押せば、きっといつものように「俺のおっぱいをペロペロして……?」とマナトは可愛い声で言ってくれる。焦る気持ちを押さえながら、耳や胸だけに刺激を与え続けていると、「ユウイチさん、俺っ……」とマナトがひときわ大きな声を出した。
「ん……?」
思っていたよりもずっと、マナトは真剣な顔をしていた。
さっきまで、子犬のようにプルプル震えながら小さな声を漏らしていたのに、切羽詰まった様子で、何か言いたそうにしている。
初めてのセックスの時は緊張と不安で顔を強張らせていたマナトも、ここ最近は「好き好き、気持ちいい」とうっとりした顔を見せてくれるようになっていたから、こんな表情はずいぶん珍しい。
「あの、俺……。もう、そういうのはやめる……」
「えっ……!?」
「俺、今年24歳になるし……。そういうの、そろそろキツくなってきたっていうか……」
「そ、そういうのって……?」
「……。は、恥ずかしいおねだり……」
「そ、そんな……」
今まで、マナトに「おっぱいをペロペロしてください」と可愛い声でおねだりさせるのが何よりも楽しみだった。
目を閉じればいついかなる時でも、マナトの上擦った声を脳内で再生することは可能で、なんなら「おっぱい」の「お」を発声する前の微かな一呼吸も覚えている。それくらい、俺にとっては大切なものだった。
それなのに、マナトの意思は固く、「もう無理。だって24歳になるから」の一点張り。
可愛い可愛い、といつだって大切にしてきたつもりだけど、立派な大人の男性のマナトにだって、もちろん自分の意思があるし、時間の経過と共に体だけでなく心だって、どんどん成熟していく。
今までしていたことを「もうしたくない」と感じるようになったのも、きっと自然なことだ。
だから一応、「なるほど……」と頷きはしたものの、本当の本当は、何か大きな、大切なものを失ってしまったような気がして「どうか、そんなこと言わないで……」とシクシク泣きたいほどだった。
「マナトなら全然イケるのに……。ほら、最近は、下積みを積んで25歳や26歳でアイドルデビューする人もいるくらいだし……」
「……それは関係ないと思う」
「……初めて会った時からマナトはずっと可愛いよ」
「でも……。あとで、思い出すとすごく恥ずかしいから……」
「なるほど……。そうか……」
嫌がっているのに無理強いすることは出来ない。……それに今までマナトが口にしてきた「食べて?」「おっぱい舐めて」「おちんちん、入れて」といった可愛いおねだりなら、全て声の微かな震えまで完全に記憶しているから何の問題もない。そういう意味で「大丈夫だよ。これからは恥ずかしい事は言わなくてもいいよ」と、マナトを励ました。
「本当……?」
「なるべく、マナトのして欲しい事に気付けるようにする。だから、大丈夫……」
「ユウイチさん、好き。ん……」
好き、と顔を近付けてくるマナトの唇を受け止めた。良かった、好きは恥ずかしがらずに言葉にして伝えてくれるんだな……ということに安堵しつつ、マナトの舌を舌で絡めとる。
ぎゅうっとしがみついてくるマナトの体は、まだ熱い。
いやらしい言葉でおねだりをしてもらえなくなったとしても、こんなに可愛く「好き好き」と甘えてくれるのなら、それで充分じゃないかという気がした。
「好きだよ、可愛い……」
「ユウイチさん、あの……」
ここ、とぽーっとした顔でマナトは自分の乳首を指の先で摘まんだ。
「ここ……」
ここ、の後は何も言葉は続かない。けれど、上体を反らして胸を突き出すようにしながら、「ここ」と自分の乳首を差し出してくるマナトの姿に、激震が走った。
「……舐めてもいい?」
そう問いかけると、マナトは無言でこくりと頷いた後、「あっ」と小さな声をあげた。どうやら自分で触っただけでも、敏感に反応してしまったらしい。
「なんてことだ……」
さっきまで確かに「寂しい」「悲しい」と思っていたのに、今感じているのは「これはこれでめちゃくちゃ良いな……!?」ということだった。言葉にされなくても、マナトの表情が、乳首が「食べて、ペロペロして」と誘っているのがわかって、心臓が激しい音を立てて弾んだ。
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