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三百二十八話 クリア3

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「アイラス島の開拓についてはドッペさん
とビルメから、あと二、三ヶ月程で
人々の移住が可能になると
報告がありました。」


「そう、順調みたいね。」


「フリーズランドの方はどうなのだよ。
吹雪姫とは仲良くしているのか?」


「はい、勿論です。」


タチアナが吹雪姫と交わした約束は
後継者であるアルナがしっかりと
果たしているようだった。


「流石に今のところは、島に侵入して
来ようとする者はいませんが、もしもの
時の為に私の騎士団をフリーズランドに
配置しています。」


「島の開拓が進んで行けば、それだけ
島と島の間を行き来することが
可能になる。と言っても、フリーズランド
はそう簡単に足を踏み入れられる
ところではないが、油断は禁物なのだよ。」


「はい。」


騎士の隊長であるアルナの近況報告が
終わり、次にヨーテルはガンナーの隊長
に話を振った。


「で、牛喜は? 魚人族との関係は
上手くいってんの?」


「勿論。」


牛喜

帝国精鋭隊  
職業ガンナー最高位職 ガンマン
レベル640
性別 男性
隼人の魔法によって復活した
彼は、バーゼンから、自分は
ヨーテルの援護に専念したい
と言われ、ガンナーの隊長の座を
譲り受けた。
今はエレディア村及び魚人族が、
下の大陸の人間達と良好な関係を
築けるように尽力している。


「元々、魚人族は
ジュラ島の地下に住むエレディア村の
人間と関係があった為、平和条約の
締結はとてもスムーズにいきました。」


「......ふーん、それで......長老には
会った?」


ヨーテルが本当に聞きたかったのは
それだった。


「はい。我輩がエレディア村に
足を運んだ時、とても優しく我輩を
迎えてくれました。魚人族と平和条約
を結べたのも、長老が直接人魚姫様に
お願いしてくれたお陰です。」


「......そっか......長老は長老で、
今の人生を歩んでるのね......」


自分のことを本当の子供のように
育ててくれた長老が、職業者を
止めてエレディア村に移住すると
言い出した時、ヨーテルは
それに反対した。

だが、長老の口から、自分には
この生涯が終わる前にどうしても
会いにいきたい人がいると言われた時、
ヨーテルにはもう何も言えなかった。

けれど、だからこそ、ヨーテルは
長老から譲り受けたこの地位を、
この平和な世界を守り続けなければ
ならない。彼の意志を継ぐものとして
ヨーテルはこの役職に就いたのだ。


「あれ? もしかして、ヨーテルさん、
泣いてますか?」


すると、首を傾げてそう言った男がいた。


「うるさいわね、ルドルフ。
殺すわよ。」


ルドルフ

帝国精鋭隊
職業弓使い最高位職 狩人
レベル689
性別 男性
隼人と出会ったことで、心を入れ換えた
彼は、もう回復魔法士を馬鹿にする
ことはなくなった。
だが、相変わらず目立ちたがり屋な
性格は変わらず、いつもヨーテルを
イラつかせていた。


「怖いですよ......そんなに睨まないで
ください......」 


「......何笑ってんのよ。」


「笑ってませんよ。苦笑いです。」


「......あんた、もうすぐ自分の
子供が生まれるからって
ちょっと浮かれてんじゃない
でしょうね。」


「いや~、そりゃ浮かれちゃいますよ。」


「あー! ムカつく!!!」


アハハッ!! と心の底から嬉しそうに
笑うルドルフに対して、ヨーテルの
堪忍袋の緒が切れそうだった。


「落ち着くのだよ。それよりも
次だ。サーマクリフエントロマナーニ。
報告を.........ああ、そうか。
彼女は......」


すっかりと自分の仕事を忘れてしまった
ヨーテルの代わりに、バーゼンは
サッちゃんにそう話を振ったが、
回復魔法士の隊長が座っている
はずの席には誰もいなかった。


サーマクリフエントロマナーニ


職業回復魔法士最高位職 聖職者
レベル570
性別 女性
この世界の回復魔法士で最もレベルの
高い彼女はいつも回復魔法士の隊長と
して、会議に出席していたが、
今回この会議を欠席した理由は、
医者から


「今は大切な時期なので、あまり
過度な運動はしないように。」


と言われていたからだった。
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