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三百二十一話 決断7

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「い、いいのか? そんな直ぐに
決めても......」


「いいのだ。」


「ほ、本当か? 後悔しないか?」


「何をそんなに動揺しているのだ。
その考えを私に提案したのは隼人だろ?」


「い、いや......まあ、そうなんだが......
てっきり俺は断られるかと思ってたんだ。
こんな成功するかもわからない、かけ
みたいなものを、タチアナが受け入れて
くれるのか。」


「何を言う。駄目で元々だ。
それに、私は君のその考えにとても
ワクワクしているし、君が私に提案して
くれて本当に嬉しい。」


「そうか......わかった。」


俺はタチアナの嘘偽りのない言葉を
聞いて安心した。
後はこの考えを実行に移すのみ。
頼むから......成功してくれよ......
そう思いながら、俺がレッドブックを
手に持った時だった。


「......タチ......アナ......本当に......それで
いいの?」


どこからか、今にも消えそうな小さな
声が聞こえてくる。
その声の主を目で探ると、俺の
視界には地面にうつ伏せで倒れながらも、
必死にタチアナに問いかける鬼灯の
姿が入った。
同じくタチアナも彼女を見つけたようで


「隼人! 早く治療を!」


と、俺の手を引っ張る。。


「ヒール。」


そして、俺がヒールをかけると
鬼灯の体はあっという間に完治した。



「タチアナ!」


体が治るやいなや、鬼灯は
タチアナに抱きついた。


「......いいの? 本当に......それで......」


「......いいのだ。寧ろこれが私に
とって一番の幸せではないかと
思っている。」


「......」


鬼灯はタチアナの胸に顔を埋めたまま
顔を上げようとしない。
きっと泣いているのだろう。


「......わかった......タチアナが......
幸せなら......私も......幸せ。」


「ありがとう、鬼灯。君が私の
友人になってくれて本当によかった。」


タチアナは頬を伝っている
鬼灯の涙を指で拭いてあげた。


「それと、鬼灯。私は君にいくつか
頼みたいことがあるのだが......いい
だろうか?」


「何でも言って! 私に......できる
ことなら。」


「ありがとう、鬼灯。」


そしてタチアナは鬼灯にいくつかの
頼み事と、別れの挨拶を言った。


「では......私はもう行くよ。
鬼灯、後のことは頼んだぞ。」


その言葉に、また鬼灯は
涙を流してしまった。
止まらない涙を鬼灯は
必死に拭うが、今度の
タチアナは何もしなかった。

きっと自分の力で克服して欲しい
のだろう。
もうタチアナは彼女の側に居てやれない
のだから。

すると、そのタチアナの思いが
通じたのか、鬼灯はまだ涙を流しつつも、
笑ってこう言った。


「異世界に行っても頑張って......!」
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