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三百九話 光9
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姉の乗った船がヤナハの港を
出港してから三ヶ月が経とうとして
いた頃。
ようやく政府内では、呪覆島に遠征に
向かった者達の生存を確認する為、
もう一度何人かの職業者を
遠征に向かわせるかどうかが審議
されていた。
だが、もしもう一度職業者
を遠征に向かわせるとなれば、
問題となってくるのが今度は
誰をリーダーに抜擢するかなのだが、
そこで政府は本来であれば姉の
代わりに船に乗るはずだった
バーゼンに依頼した。
バーゼンはその依頼を快く受け
それから十日後、呪覆島へと
出港した。
頼む......姉様......無事でいてくれ......!
その思いも虚しく、彼を待ち受けていた
のは人の気配など一切無い、霧に
包まれた不気味な島だった。
バーゼンと共に来ていた9名の
職業者達と島の探索を行ったが、
この霧のせいで人の形跡など全く
発見できなかった。
それから三日が経ち、いよいよ
帰りの分の食糧も危うくなって
きたころ。
「姉様!!!」
バーゼンは声が枯れるまで霧の中で
叫び続けていた。
何でもいいから、姉様がここにいた
という形跡が見たかった。
姉様が確かに人間の為に尽力したという
証が欲しかった。
これでは、姉様が本当に無駄死に
しただけではないか。
何か......何でもいい。
姉様が残した物を......!!
姉様の死は無駄では無かったという
証拠を!!
「誰かぁぁあ!! 誰でもいい!!
生きてる者はいないかあああ!!!」
バーゼンはきっと姉様の残した物が何か
あると信じて必死に叫んだ。
カンッ......カンッ......
その時、霧の奥で石と石のぶつかる
音が聞こえてきた。
自然に出ている音ではない。
明らかに誰かが鳴らしている。
バーゼンは暗夜に灯を見る心地で
その音の方へと走り出した。
誰だ? いや、誰でもいい。
きっと生存者だ。
たとえそこにいるのが、自分の姉で
無くとも、彼女の残したものがきっと
ある。
その思いで、走り続けた。
石と石のぶつかる音はどんどん大きく
なっていく。
そして、バーゼンはそれに出会った。
「なっ──」
だが、バーゼンはそれを見るやいなや
言葉を失った。
彼を待っていたのは、何かの小動物を
乱暴に石で殴り続ける全裸の少女
だった。
「?」
バーゼンが耳にした音の正体は、
えぐられた小動物の骨に、その少女の
持っていた石をぶつけて出た物だった。
バーゼンに気がついたその金髪の
少女は不思議そうにこちらを見ていた。
警戒しているわけでもなく、かといって
特に怖がっている様子でも無い。
ただ、無表情でこちらをじっーと
見ていた。
本来であれば、何故この少女が
こんなところに一人でいるのかを
疑問に思うはずだが、バーゼンには
そんなことはもうどうでもよかった。
「......よかった......」
姉様の死は無駄では無かった。
バーゼンは感涙にむせび泣きながら、
姉の残したものを大切に抱き締めた
のだった。
出港してから三ヶ月が経とうとして
いた頃。
ようやく政府内では、呪覆島に遠征に
向かった者達の生存を確認する為、
もう一度何人かの職業者を
遠征に向かわせるかどうかが審議
されていた。
だが、もしもう一度職業者
を遠征に向かわせるとなれば、
問題となってくるのが今度は
誰をリーダーに抜擢するかなのだが、
そこで政府は本来であれば姉の
代わりに船に乗るはずだった
バーゼンに依頼した。
バーゼンはその依頼を快く受け
それから十日後、呪覆島へと
出港した。
頼む......姉様......無事でいてくれ......!
その思いも虚しく、彼を待ち受けていた
のは人の気配など一切無い、霧に
包まれた不気味な島だった。
バーゼンと共に来ていた9名の
職業者達と島の探索を行ったが、
この霧のせいで人の形跡など全く
発見できなかった。
それから三日が経ち、いよいよ
帰りの分の食糧も危うくなって
きたころ。
「姉様!!!」
バーゼンは声が枯れるまで霧の中で
叫び続けていた。
何でもいいから、姉様がここにいた
という形跡が見たかった。
姉様が確かに人間の為に尽力したという
証が欲しかった。
これでは、姉様が本当に無駄死に
しただけではないか。
何か......何でもいい。
姉様が残した物を......!!
姉様の死は無駄では無かったという
証拠を!!
「誰かぁぁあ!! 誰でもいい!!
生きてる者はいないかあああ!!!」
バーゼンはきっと姉様の残した物が何か
あると信じて必死に叫んだ。
カンッ......カンッ......
その時、霧の奥で石と石のぶつかる
音が聞こえてきた。
自然に出ている音ではない。
明らかに誰かが鳴らしている。
バーゼンは暗夜に灯を見る心地で
その音の方へと走り出した。
誰だ? いや、誰でもいい。
きっと生存者だ。
たとえそこにいるのが、自分の姉で
無くとも、彼女の残したものがきっと
ある。
その思いで、走り続けた。
石と石のぶつかる音はどんどん大きく
なっていく。
そして、バーゼンはそれに出会った。
「なっ──」
だが、バーゼンはそれを見るやいなや
言葉を失った。
彼を待っていたのは、何かの小動物を
乱暴に石で殴り続ける全裸の少女
だった。
「?」
バーゼンが耳にした音の正体は、
えぐられた小動物の骨に、その少女の
持っていた石をぶつけて出た物だった。
バーゼンに気がついたその金髪の
少女は不思議そうにこちらを見ていた。
警戒しているわけでもなく、かといって
特に怖がっている様子でも無い。
ただ、無表情でこちらをじっーと
見ていた。
本来であれば、何故この少女が
こんなところに一人でいるのかを
疑問に思うはずだが、バーゼンには
そんなことはもうどうでもよかった。
「......よかった......」
姉様の死は無駄では無かった。
バーゼンは感涙にむせび泣きながら、
姉の残したものを大切に抱き締めた
のだった。
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