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二百八十一話 ヨーテルと長老4

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「おい、人間がいるぞ。」


「......さっき見つかった時は
もう仲間を呼ばれて駄目かと思ったが、
俺達は運がいい。」


「どうする? 二人で殺っちまうか?」


「いや、あれは俺が始末する。
お前は他の四人を呼んでこい。
直ぐにここを移動しよう。」


「ラジャー。」
















「えらく静かね......鳥の鳴き声も
聞こえないけど......」


シーンと静まり返った森に違和感を
覚えつつも、先に進むヨーテル
だったが......


「!?」


突如として鎖のような物がこちらに
飛んでくる。

ヨーテルは間一髪のところで交わした。


「誰よ! 隠れてないでてきなさい!」


「ヒヒャヒャ! これは驚いた。
まさか交わされるとは......」


森の茂みから姿を現したのは、
全身鱗に覆われ、さっきの鎖のような
物がお尻に生えた化け物だった。


魔族!? こんなところにどうして!?


「だが! これはどうかな!」


その魔族は口から黄色い
唾液のような物をヨーテルに飛ばす。


「汚いわね! もう許さないわ!」


だが、そんな物でヨーテルが
怖じけづくはずもなく


「ファイヤーボール!」


ほうきを構えて直ぐに攻撃した。


「!? こ、こいつ強──」


バァン!


ヨーテルの攻撃はその魔族に直撃し、
魔族は口から煙を吐きながらその場に
倒れた。


「ふんっ! そこで一生寝ときなさい!」


「ほぉーう、こいつ中々やるなー。」


敵を倒して安心したヨーテルだったが、
後ろから謎の声がして振り向こうとする。


しかし、体が動かない。


「ヒヒャヒャ! ようやく効いてきたな!」


すると、倒したと思っていた魔族が
ひょこっと体を起こす。


「なんだ。もう来たのか。」


「ああ、案外近くにいた。」


どうして......体が動かないの!?


「無駄だよ。お前は俺の毒で体が
麻痺ってんだ。」


「もう毒食らわしたのかよ。俺らにも
楽しませろ。」


「そうだよ。せっかく駆けつけて
やったのに。」


後ろでは何人かの魔族が話をしている
ようだ。


「で、こいつどうすんだ?」


「殺すか。見たところ一人みたい
だしな。」


「一人? こんなところに一人で
来ちゃ危ないよ~お嬢ちゃん。」


魔族の一人がヨーテルに向かって
馬鹿にしたように言う。


「おい、さっさとその人間を殺せ。
忘れたのか? 僕たちの任務を。」


「......そうだったな。俺達は
この下の大陸に、人間達に見つ
からない魔族の拠点を作るんだったな。」


魔族の拠点ですって!?


「じゃ、こいつ俺に殺らしてくれ。
いいだろ? 俺が毒食らわしたんだ。」


「早くしろよ。」


「ああ。」


そう言って仲間に了承を得た鱗の
魔族はヨーテルをどうやって殺そうかと、
ニヤニヤしながら見つめる。


「決めた。」


鱗の魔族に生えていた鎖が
まるで尻尾のように動き、
ヨーテルの首を絞める。


「一番苦しい死に方をさせてやろう。」


「ぅぐ!!」


こんなところで私、死ぬの......

弱者に馬鹿にされたまま、
見返すこともできず、このまま......


誰か......助けて......


「なるほど、お主らの目的は
わかった。」


グサッ!


「!? て、てめぇ......」


ヨーテルが諦めかけたそのとき、
突如として目の前にあの老人が
現れた。
その老人はどこから拾ってきたのか、
木の枝を鱗の魔族の首もとに
ぶっ刺す。


「敵だ!!!」


「こいつ! どっから!」


老人に気づいた五体の魔族は
一斉にして、老人に襲いかかる。


「ガハッガハッ! あ、あんた逃げ──」


鎖から解放されたヨーテルは、
意識が飛びそうな中、老人に言う。


しかし、老人は逃げも隠れもせず、
五体の魔族に立ち向かう。


「ゴホッ!」


「アアアッ!!」


そして、あっという間に
五体の魔族を片付けてしまった。


「う、嘘......」


ヨーテルはその光景に目を疑う。


「怪我は......してるようじゃな。」


困惑しているヨーテルに、長老は
優しく手を差しのべた。
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