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二百七十二話 魔王城5

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「お前には俺の後を継いでもらおう
と思っていたのだよ......」


バーゼンは目を開けたまま
息を引き取った牛喜に歩み寄り、
そっと手で彼の目を閉じる。


「惜しい人材を無くして
しまったの......」


長老は少し落ち込んでいる様子
だったが、それでも手を休めること無く
せっせと意識を失ってしまった
職業者達に回復ポーションを飲ませ
ていく。


すると、次々と職業者達は意識を
取り戻し、ようやく生存者全員が
傷を治して万全の状態になった。


「牛喜......さん......」


目を覚まし事情を聞いたアルナは
亡くなった牛喜の元に行き、泣き崩れて
しまった。
アルナの他にも何人か亡くなった者を
惜しんで泣いている者がちらほら
目に入る。
バーゼンはその光景を見ながら、
ふとピエロの死体へと視線を
移す。


「手強い相手だったのだよ。」


「おそらく幹部クラスじゃろうな。」


「長老。」


「これほどのレベルが魔王城の
入り口で現れたんじゃ。
城の中には更なる強敵が
わしらを待ち受けているやもしれぬ。」


「そうですね。俺の妹にも早く
合流してほしいところですが......」


「そうじゃの......」


長老は重圧によって痛めてしまった
腰を擦りながら、フリーズランドが
ある方向を眺める。


隼人君にも早く応援に駆けつけて
ほしいところなのじゃが......


そう思っていたその時。


ギィーーーーー


突如として長老達の目の前に
立ちはだかっていた魔王城の
扉が、重たい音を立てながら
開き始める。
まるで、それは自分達に
ここに入れと挑発している
かのようだった。


「なぜじゃ......なぜ勝手に──」


『よく来た。我に歯向かう
愚かな人間共よ。』


すると、魔王城の中から熱風が
吹き荒れ、それと共に男の
声が響き渡る。


『我の自慢の部下であるパサロを
こうも簡単に倒したこと、誉めて
やろう。』


「これって魔王の声!?」


「そ、そんなまさか。」


職業者達の中で不安なざわめきが
目立ち始める。


『さあ、来い。己の強さを
過信する哀れな人間共よ。
我は逃げも隠れもせん。
我を倒したくば、この城に
足を踏み入れるがいい!!
だが、この城が
貴様らの墓場になることを
我は警告してやる。』


フハハハッと不気味な笑い声が
職業者達の不安を掻き立てて、
魔王の声は止んだ。


「行くぞ。」


しかし、今さらこんなことで
怖じ気づく者など誰もいない。
最初に先陣を切って足を踏み入れた
カクバを筆頭に、生存者全員が続々と
城の中へ入っていくのだった。


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