上 下
270 / 351

二百七十話 魔王城3

しおりを挟む
「!? んだこれぇ!! か、体が
重い......」


カクバ、ヨーテル、バーゼンの
三人はそろって地に跪く。


「またこれ!? 一体何なのよ!」


「糞......身動きが取れないのだよ。」


「当然だぞ。なぜなら、お前たちに
かかっている重力を重くしたから
だぞ。」


「重力......だと」


必死に立ち上がろうとする
バーゼンの頭を、そのピエロは
無表情でふんずける。


「ぐっ!」


「よくも......俺の親友である
アグリーを......!」


途轍も無く重い足で、ピエロは
バーゼンを何度も踏み続ける。


「てめぇ! 止めろ!」


「止めないぞ。次はお前も
こうなるぞ。」


何とか立ち上がってピエロを一発ぶん
殴ろうと試みるカクバだったが、
どうしても体が動かない。
まるで地面に体が縛りつけられて
いるかのようだった。
呼吸もしずらい。
ただそこにいるだけで、三人の
意識が段々遠退いていく。


糞っ!! 動けよ!!
じゃねぇとこのまま......


「忍法 放炎」


とその時、鬼灯の放った炎の球が
ピエロ目掛けて飛んでくる。


「俺に炎は効かないぞ。」


しかし、そのピエロは身動き一つせず、
堂々とその炎を受け止め、やがて
炎は消えた。


「......」


鬼灯は炎をくらっても傷一つ
負っていないピエロから
一旦距離を取るため姿を消す。


「......」


鬼灯の姿を消す速さに、
相手もなかなかのやり手だと
察したピエロは、バーゼンの頭から
足を退けて警戒体制に入る。


「忍法 放炎」


が、鬼灯が放ってきたのは
同じ炎系の忍法だった。


「警戒して損したぞ。
所詮は人間。学習を
しない馬鹿めが。」



そう言いながら余裕の表情で
その炎を受け止めたピエロだったが


「馬鹿はお主じゃ。」


と、その炎の中に潜伏していた
長老によって殴り飛ばされた。

「グアアアアッ!!!」


長老の本気のパンチで
そのピエロは空高くまで
飛ばされ、やがて見えなくなった。


「......うまくいった......」


「ナイスじゃ、鬼灯ちゃん。」


「......長老......ちょっと火傷してる......」


「わしのことはいいんじゃ。先に
カクバ君達の回復が先じゃ。」


服は焼け、肌に火傷を負ってしまった
長老は意識を失った三人に
駆け寄り、回復ポーションを
飲ませていく。


「......回復ポーションだけじゃ......
完治するの時間かかる......」


「そうじゃの......サッちゃん
がいてくれればこれほどの犠牲
を出さすに済んだんじゃがの。」


五千体もの敵に対して、人間は約三十人。
帝国精鋭隊が敵をほぼほぼ壊滅した
とはいえ、その間に八名もの職業者達が
戦死した。


アルナや牛喜を含む生き残った
職業者達は、その戦死して
しまった八名の職業者達を
敵の死体の山から掘り出して
担ぎ上げ、長老達の元へと
集まってくる。


「長老さん。我輩達は
これからどうすれば......」 


「とりあえず、この三人が
目覚めるのを待つしかないのう。」


急ぎたいところでもあるし、
ここは魔王城の目の前。
安全な場所ではない。
が、カクバやバーゼン、ヨーテル
無しで魔王城に突入しても
人間の敗北は目に見えてる。


牛喜はそうですねとだけ言って
不安な表情を浮かべた。


「......牛喜。俺の部下が
そんな顔をするのは許さないのだよ。」


と、ここで一番ダメージを負っていた
はずのバーゼンが目を覚ます。


「隊長!!」


「......もう目覚めたのか、バーゼン君。」


「ええ、助かりました。長老。
呪覆島の時といい......貴方には
何度も──」


「いいんじゃよ、バーゼン君。
それよりもカクバ君とヨーテルちゃん
にポーションを飲ませるのを
手伝ってくれ。」


「はい。」


「君達にも手伝ってもらっても
構わぬか? 」


と長老は他の職業者達を呼び掛け、
一度全員を一ヶ所に集合させる。


「......馬鹿はお前達だぞ。」


それを見計らっていたかの
ように、奴は再び現れた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

次期当主の高貴な魔族に選ばれた新婦

日和
恋愛
平凡な高校生・愛乃は、両親から不当に扱われ、妹の美矢だけが愛されていた。大事なものを壊され、家族とのトラブルで愛乃は傷つく。絶望した愛乃は家を飛び出し、魔王の次期当主・ダルフェルトと出会う。見つけた愛乃のことを「俺の新婦」と告げたーー。

とある文官のひとりごと

きりか
BL
貧乏な弱小子爵家出身のノア・マキシム。 アシュリー王国の花形騎士団の文官として、日々頑張っているが、学生の頃からやたらと絡んでくるイケメン部隊長であるアベル・エメを大の苦手というか、天敵認定をしていた。しかし、ある日、父の借金が判明して…。 基本コメディで、少しだけシリアス? エチシーンところか、チュッどまりで申し訳ございません(土下座) ムーンライト様でも公開しております。

白銀の英雄と落第魔導士(仮題)

カシマカシマシ
ファンタジー
 剣と魔法を極めた少年は、命をかけて魔王を討ち世界を救った。本当に守りたかった存在を失ったことを後悔し、守れなかった己を責めながら、少年は元居た世界での生涯を終える。  少年の物語は終わらなかった。  魔力を失い、愛しい妹に似た魔力と声に導かれて辿り着いたのは、少年の知る魔法が技術体系の一つとして確立された日本。  彼を使い魔として召喚したのは、周囲から落ちこぼれの誹りを受け続ける少女。  少女の苦難を知り、その優しき信念を知ったとき。少年は少女の剣になると決意する。  「今は魔力を失ったこんな身でも、世界一つ救った英雄だ。そんな俺を使い魔にしたんだから、君にはこの世界で一番の魔導士になってもらう!」  これは異世界で救世を為した英雄が、落ちこぼれ魔導士と高みを目指す学園魔導ファンタジー。  小説家になろうでも投稿しております。感想やアドバイス、一言でもいただければ幸いです。

愛された事のない男は異世界で溺愛される~嫌われからの愛され生活は想像以上に激甘でした~

宮沢ましゅまろ
BL
異世界ミスリルメイズ。 魔物とヒトの戦いが激化して、300年。 この世界では、無理矢理に召喚された異世界人が、まるで使い捨てのように駒として使われている。 30歳になる、御厨斗真(トーマ)は、22歳の頃に異世界へと召喚されたものの、異世界人が有する特殊な力がとても弱かった事。色々あり、ローレンス辺境伯の召使として他の異世界人たちと共に召し抱えられてることになったトーマは時間をかけてゆっくりと異世界に馴染んでいった。 しかし、ローレンスが寿命で亡くなったことで、長年トーマを狙っていた孫のリードから危害を加えられ、リードから逃げる事を決意。リードの妻の助けもあって、皆で逃げ出すことに成功する。 トーマの唯一の望みは「一度で良いから誰かの一番になってみたい」という事。 天涯孤独であり、過去の恋人にも騙されていただけで本当の愛を知らないトーマにとっては、その愛がたとえ一瞬の過ぎたる望みだったとしても、どうしても欲しかった。 「お前みたいな地味な男、抱けるわけがないだろう」 逃げだした先。初対面でそう言い切った美丈夫は、トーマの容姿をそう落とした。 好きになれるわけがない相手――本当ならそう思ってもおかしくないのに。 トーマはその美丈夫を愛しく思った。 どこかやさぐれた雰囲気の美丈夫の名前は、フリードリヒという。 この出会いが、誰にも愛されなかったトーマの人生を変える事になるとは、この時はまだ知らなかった。 辺境の国の王太子×内気平凡異世界人 ※二章から二人の恋愛に入ります。一章最後当て馬(?)がちらりと出るあたりでちょっとムカつくかもしれませんので、気になる方は二章始まるまで待機をお勧めします。◆平日は1回更新、休日は2回更新を目指しています。 イラスト:モルト様

オレが最凶の邪神? 身に覚えがございません

ジオラマ
ファンタジー
「お帰りなさい、ご主人様」  死んだオレに話しかけてきたのは、メイドの姿をした神ゼウスだった。オレは三千年前地球に封印されていた邪神で、ゼウスのご主人様らしい。本当かよ。そんな記憶はないけれど。  そのゼウスに「この世を危機から救ってほしい」と嘆願されて、異世界に転生する。  普通の人間のオレがどうやって? と思ったが、徐々に記憶が戻って、邪神の力も解放されていく。  転生先では二人の少女・古龍バジルと転生者パセリ、さらに黒猫が仲間になった。  転生者抹殺を目的とする白装束集団、「ミカエルの使徒」と戦いを繰り返しながら、三千年前の事件の真相にたどり着いていく。 ①主人公最強。典型的な俺TUEEEE.ただし、潜在能力を出し切れずピンチになることもあります。 ②爽快バトルもの。ダークな物語の背景はあるものの、ライトなテーストです。 ③謎解きもの。なぜ、邪神が転生したのか。一つの謎が解明するごとに新しい謎が生じる。その中で物語の核心に迫っていきます。

初恋の幼馴染兼世界を救った騎士に『恋愛対象外』だと思われている件について

皇 翼
恋愛
「フェルって本当、脳筋ゴリラだよな~。もうそこいらの男より強いじゃん?そんなんじゃ恋愛対象外認定で貰い手見つからなかったりしてな」 魔王討伐後の仲間内での祝勝会。今現在恋心を抱いている相手から言われたその言葉によって、フェリシアの心はズタズタに切り裂かれた。知っていた。この失礼で女たらしの騎士は自分のことを誰にでも基本的に『脳筋ゴリラ』や『恋愛対象外』などと言いふらして、女として見ていない事など。なにせフェリシアは彼の幼馴染だ。 しかし幼馴染だからこそそれを肯定するようなことも、テキトーに返事を返して引き下がるようなことも出来なかった。 「そんなんなら今からでも貰い手見つけてやるわよ!!」 お酒が入っていた所為だろう。気が大きくなってしまった彼女は『出来もしない』ことを片思い中の騎士・ディランに宣言してしまう。 ****** ・『私の片思い中の勇者が妹にプロポーズするみたいなので、諦めて逃亡したいと思います(完結済み)』のディランルート的な何かです。前々から連載希望がチラホラあったので、調子に乗って連載を始めました。 ・ちゃんと単体でも読めるように執筆していくつもりです。 ・でも多分、前作読んでいたほうが読みやすいかとは思います。(前作URL:https://www.alphapolis.co.jp/novel/496593841/609317899) ・前作とは別次元のお話だと思って見てやってください。(恋愛ADVゲーム的な) ・感想欄は連載終了後に開く予定です。 ・ダラダラ更新します。

嫌われ者の僕

みるきぃ
BL
学園イチの嫌われ者で、イジメにあっている佐藤あおい。気が弱くてネガティブな性格な上、容姿は瓶底眼鏡で地味。しかし本当の素顔は、幼なじみで人気者の新條ゆうが知っていて誰にも見せつけないようにしていた。学園生活で、あおいの健気な優しさに皆、惹かれていき…⁈ 学園イチの嫌われ者が総愛される話。 嫌われからの愛されです。ヤンデレ注意。 ※他サイトで書いていたものを修正してこちらで書いてます。

悩ましき騎士団長のひとりごと

きりか
BL
アシュリー王国、最強と云われる騎士団長イザーク・ケリーが、文官リュカを伴侶として得て、幸せな日々を過ごしていた。ある日、仕事の為に、騎士団に詰めることとなったリュカ。最愛の傍に居たいがため、団長の仮眠室で、副団長アルマン・マルーンを相手に飲み比べを始め…。 ヤマもタニもない、単に、イザークがやたらとアルマンに絡んで、最後は、リュカに怒られるだけの話しです。 『悩める文官のひとりごと』の攻視点です。 ムーンライト様にも掲載しております。 よろしくお願いします。

処理中です...