上 下
233 / 351

二百三十三話 仲間の捜索31

しおりを挟む
ラーバの自爆は機械獣の自爆ほど
周りに威力は無く、皆ほぼ無傷だった。
しかし、最後に吐き捨てた
謎の言葉と、敵の目の前で堂々と
命を絶ったラーバに対して
全員が呆然と立ち尽くすほか
なかった。


ビチャッ。


その沈黙を絶ったのは長老だった。
この島に上陸してからずっと
右目でラーバの呪術について
解除法を占っていた長老は、
流石に体力の限界が来てその場に
膝を着く。
その様子を見た隼人が
素早く駆け寄った。


「大丈夫ですか?」


「......おお、すまぬの。隼人君。」


「肩かしますよ。立てますか?」


「うむ、大丈夫じゃ。」


長老が右腕を隼人の背中に回すと


「おい、手伝うぜ。」


カクバが逆側に回って長老を
支える。


「まさか、自爆するなんてね。」


「ああ。敵に情報を漏らすまいと
躊躇わず自分の命を絶つとわ......」


「それにしてもやっぱあいつ
気味が悪いわ。なんか自爆する
直前にも変なこと言ってたし。」


「耳を貸すことなんて
ないさ、ヨーテル。
我々が内部崩壊をするなどありえない。」


「それもそうね。」


ヨーテルとタチアナは辺りに
飛び散ったラーバの血や肉片を
今にも動き出すのではないかと
思いながら見渡す。


「そう言えば長老。サーマクリフエント
ロマナーニとあれは?」


「......あの二人はどうやらラーバの
手下達によって別の島に連れて
いかれたようじゃ。」


「は!? 嘘でしょ!」


「おいおい、一体何が起きてんだよ。
全然今の状況がわかんねぇよ。」


「そろそろ......私達にも......情報求む......」


状況が複雑化し、各々が
困惑する中


「とりあえずここは一旦船に戻ろう。
船に戻ったら私から兄様達に
これまでの経緯を話す。」


と、リーダーらしくタチアナが
その場を収め、皆は船へと
移動し始めた。













「タチアナ。」


「?」


ラーバが自爆した場所から船までは
そこまで距離は無く、後十分程歩けば
着きそうだった。
そんな中、バーゼンがタチアナに
ぼそっと話しかける。


「なんだ、兄様。」


「......どうだ? やはり覚えていない
のか?」


「......」


バーゼンの問いにタチアナは申し訳
無さそうに頷く。


「気にすることはないのだよ。」


「......兄様。本当にここが......」


タチアナは辺りを見渡しながら
更に悲しそうな表情を浮かべる。
すると、バーゼンはタチアナを
励ますように微笑んで言った。


「タチアナ、大丈夫。お前は
俺の立派な妹なのだよ。」


その言葉にタチアナは
ありがとうと言ってバーゼンに
微笑み返したのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

ヒューマンテイム ~人間を奴隷化するスキルを使って、俺は王妃の体を手に入れる~

三浦裕
ファンタジー
【ヒューマンテイム】 人間を洗脳し、意のままに操るスキル。 非常に希少なスキルで、使い手は史上3人程度しか存在しない。 「ヒューマンテイムの力を使えば、俺はどんな人間だって意のままに操れる。あの美しい王妃に、ベッドで腰を振らせる事だって」 禁断のスキル【ヒューマンテイム】の力に目覚めた少年リュートは、その力を立身出世のために悪用する。 商人を操って富を得たり、 領主を操って権力を手にしたり、 貴族の女を操って、次々子を産ませたり。 リュートの最終目標は『王妃の胎に子種を仕込み、自らの子孫を王にする事』 王家に近づくためには、出世を重ねて国の英雄にまで上り詰める必要がある。 邪悪なスキルで王家乗っ取りを目指すリュートの、ダーク成り上がり譚!

幼なじみ三人が勇者に魅了されちゃって寝盗られるんだけど数年後勇者が死んで正気に戻った幼なじみ達がめちゃくちゃ後悔する話

妄想屋さん
ファンタジー
『元彼?冗談でしょ?僕はもうあんなのもうどうでもいいよ!』 『ええ、アタシはあなたに愛して欲しい。あんなゴミもう知らないわ!』 『ええ!そうですとも!だから早く私にも――』  大切な三人の仲間を勇者に〈魅了〉で奪い取られて絶望した主人公と、〈魅了〉から解放されて今までの自分たちの行いに絶望するヒロイン達の話。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。 全力でお母さんと幸せを手に入れます ーーー カムイイムカです 今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします 少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^ 最後まで行かないシリーズですのでご了承ください 23話でおしまいになります

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

処理中です...