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百七十三話 三日月島38

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「で、どこ行ってたの?」


「わしは先ほどまでこの島の
幹部を討伐していたんじゃ。」


「は!? か、幹部を!?
はぁ......いなくなったかと
思えば.....まさか一人でそんなこと
していたなんて......」


「すまぬの、心配をかけて。」


「で、タチアナは? なんでジュラ島で
迷子になったあんたがここにいるのよ。」


「ま、迷子になったわけではない。
私は──」



タチアナはヨーテルに俺の
力のことを隠しながら、
エレディア村のことを話した。


「へぇ、まだ人の住む島がヤナハ以外にも
あったのね。」


と感心していたヨーテルだった
が、今度はその綺麗で鋭い瞳を俺に
向けてきた。


「で、あんた誰よ。」


「か、彼は私と共にジュラ島から
ここまで来た者だ。怪しい者では
ない。」


タチアナは俺の正体をあまり
探られないように気を使って
俺の代わりに返答してくれた。


「あー、そういえばいたわね。
回復魔法士で迷子になったやつ。」


可愛い顔してなかなか
冷たいなこの人......


「まあいいわ。早くタチアナと
長老も参戦してちょうだい。
二人がいればあっという間に
魚人もかたずくわ。」


「ちょっと待つんじゃ。ヨーテルちゃん。」


そう言って長老はほうきにまたがって
飛ぼうとするヨーテルを呼び止める。



「もう、なによ!」


「しばし、ヨーテルちゃんの
力をかしてくれんかの。」















「は!? 海底に眠っている
人魚姫とかいう魔族を助けるですって!?」


長老は一通りこれまでの経緯を
彼女に話した。


「そうじゃ。ヨーテルちゃんの
魔法でこの隼人君を海底まで
連れていってやることは
できんかの。」



「まあ......私のスカイリムを
使えば、海の中を自由に泳げたり、
呼吸ができたりするけど......でも、
なんで私たちがそんな魔族を
助けなきゃなんないのよ!」



「それは長老が話したように、
元はと言えば、人が人魚姫を
傷つけたことが、人と魚人族との
間に亀裂が入る要因となったのだ。
だから、私はその人魚姫を
我々が救うことにより、
今後の人と魚人族の仲が
改善されるのではないかと考えたのだ。」



「そんなめんどくさいこと
しなくても、その人魚姫もろとも、
魚人族を滅ぼしてしまえばいいじゃない。」



「それでは駄目なのだ!!!」


タチアナの力のこもった声が
三日月島に響き渡る。


「それでは......それでは何も未来に
繋がらない。
私は自分の為に我が身を費やし、戦って
いるのではない。
私はこの世界が未来で平和であるために
戦っているのだ。
そのような片方を滅ぼすという
愚劣な考えで私はここにいるわけでは
ない。」


タチアナの魂の入った言葉が
ヨーテルを怯ませる。




「わ、わかったわよ! 
そこまで言うんだったら
好きにすれば!」
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