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百六十五話 三日月島30

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「ちょ、ちょっと待ってくれ!
さっきの話、聞いてなかったのか!? 」


するとワインが俺らの前に立ちふさがる。


「いや、聞いてたけど。」


「な、なら──」


「別にお前から居場所を聞いたんじゃ
ないし、大丈夫だろ? 」


「そ、そういう問題じゃ......」


「隼人。先ほどから気になって
いたのだが、君はこの魚人と
面識があるのか?」


「ああ、ちょっとな。」


タチアナが俺のことを毛嫌い
する理由となったのが、この
ワインという魚人である。



「頼む。もう、止めてくれ。
俺達だって魔族に滅ぼされたくない!」



再びワインは俺達に向かって
土下座をする。


「疑問なのだが、何故
君たち魚人族は魔族の仲間入りを
したのだ? 以前はエレディアの
民と交流をするほど、人間とは
仲が良かったのだろう?」



タチアナは腰を落として、
土下座をしているワインに顔を
近づかせる。



「......知らないか......」


するとワインは残念そうな
顔をしながら立ち上がる。


「? どうしたのだ?」


「はは、笑えるな。
お前ら、百年前に何があったのか
知らないのか?」


すると今度はビールが
俺たちの前に出てくる。


「よせよ、ビール。
人間の寿命は短い。
こいつらが知らないのも無理な──」


「知らないですまされるかよ!」


ビールは苛立ちを隠せず、
怒鳴り声をあげる。


そして俺とタチアナを睨み付けながら
言った。


「知らないなら俺が教えてやるよ。
お前ら人間はな! 
百年前、俺達、魚人族に
とっては神にも等しい
人魚姫様を......





                                            殺そうとした。」
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