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百四十話 三日月島5

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ようやく同じ痛みを知っている
仲間に会える。


そんな馬鹿げた希望を持っていた俺を
待ち構えていた現実は、
世界の危機を救うという、当初の目的から
外れた、異世界の侵略者と化した
転生者、転移者どもだった。


「世界が平和にならないために、
自分自身が悪人となれば、
世界は決して救われない。
そんなバカみたいな考えを持ったやつら
が、俺と同じ転生者達だった。
そんなやつらと協力なんてできないだろ。」


「......嘆かわしいことだな。
世界を救うはずのヒーローが、世界を
脅かす悪人になるとは......」


「......そうだな。それに、俺が
一番あいつらが嫌いな理由は他にも
ある。」


「ほう、それはなんなのだ?」


「なんでかは知らないが、
俺以外の転生者や転移者は
最初に何かめちゃくちゃ強い
力を持っているらしいんだよ。」


「力? 一体どんな?」


「例えばステータスにおいて、
スピードがMAXとか、なんか
人以外のものに変身できるとか、
頭がめちゃくちゃ良くなってるとか、
他人の能力を奪えるとか、まあ
いろいろふざけた力を持ってる
らしい。
その力を使って、転生した異世界で
好き放題やってる連中が
ほとんどなんだよ。」


「隼人は何も持っていなかったのか?」


「なにも。力どころか、
当初はすっぽんぽんだったよ。」


「す、すっぽんぽん......
そ、そうか。では、今の君の
驚異的なステータス値やレベルは
やはり、こつこつ積み上げてきた
ものなのだな。」


「ああ。だから、俺は
そんなやつらと協力なんてしたくない
んだよ。まあ、頼んでも断られる
しな。」


「そうか......しかし、それでは
隼人の仲間が──」


「タチアナ。もういいんだよ。
もう慣れた。それに俺の目は
もともとこんななんだ。
だから気にしなくていい。」


「......本当か?」


「ああ、ほんとだよ。ありがとな。」


俺はそう言うと俺の顔をじっと
みつめてくるタチアナの横を通り過ぎ、
先を急ごうとする。


「隼人。」


「?」


「いつか、君の隣にいてくれる
仲間に出会えることを、私は
祈っているよ。」



タチアナは綺麗な顔をにこっと
微笑ませている。
そんな笑顔が、本当に、心の底から
俺のことを心配してくれている
彼女の笑顔が、ぐっと胸にくる。


その心の揺れに
いつか彼女との別れも必ず来ると、
頭のなかで、自分がいいかけてくる。


だから俺は......その日が来ても、
笑って別れられるように、
今のうちに練習として、
彼女の笑顔に微笑み返したのだった。
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