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九十二話 ジュラ島18
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「うっし......」
俺は二体の謎の物体を始末し、
ペルーとタチアナさんが怪我を
負っていないかと、彼女らの
方を振り返る。
「......」
彼女はじーっと俺の方を見ていた。
驚いているのか、それとも本当は
何も見ていなかったのか、寝起きの
ような顔で俺の方を見続けている。
俺としては、今の俺の行動が見られて
いないことを祈るばかりだが、
そんなことを考えているより先に、
彼女にリカバリーをかけてやる
必要がある。
そう思って
動かなくなった蜘蛛のような物体から
離れようとしたときだった。
「機体に重度の損害を確認。」
突如、始末したはずの機械獣が
喋り出した。
「マッドサイエン様に報告完了。
未だ、領域内に魔力保持者の生存を
確認。」
俺が何かこれから情報が掴めないかと
それに聞き入っていたが、次に発せられた
言葉に、俺はタチアナさんとペルーを
抱き上げ、全速力でこの場から
離れていた。
「推定被害領域半径十キロメートル。
自爆プログラム始動。」
もし、この状態でその自爆の被害を彼女が
受けたら、間違い無く助からない。
俺は無我夢中で森を走り抜ける。
だが、俺は待っていた光景に絶望した。
谷。俺が全力で飛んでも、飛び越えられ
ないほどの大きな谷。
谷の下を見ても深すぎて何も見えない。
辺りを見渡すが、まるであちらとこちらを
分けるように、谷は俺達を仕切っていた。
「......ゴホッ......い......に......ろ。」
すると、抱き抱えていた
彼女が必死に俺に何かを
言おうとしている。
「なんです?」
「......もう......いい......ゎたし......の...ゴホッゴホ......置いて......行け......き......だけで......も......」
残っている全ての気力を振り絞って、
彼女は俺にそう言った。
「ペルー!」
もうこれしかないか......
「ピィ?」
「超筋力強化!」
俺はペルーに、文字通り、パワーが
爆発的に上がる魔法をかける。
「頼むぞ!」
そう言って俺はマントを紐代わりに
してタチアナさんを俺の背中に
くくりつけ、俺は両手でペルーの足を持つ。
俺が今からするのは、ペルーに掴まって、
向こう側に渡ることだった。
ペルーはおそらくまだ成体では無いが、
羽を広げれば既に二メートルはある。
筋力を上げてやれば十分に飛べるはず、
という根拠の無いものに望みを託した。
俺の号令を聞いて、ペルーは
ばっさばっさと羽を羽ばたかせ、慎重に
谷を飛んでいく。
残り約50メートル。
半分を渡りきり、あと少しと
緊張が頂点まで達してきたその時。
俺達が逃げてきた方向から耳を
つんざく爆発音が聞こえてくる。
そしてその後を追うように、
ものすごい熱風が空を飛ぶ
ペルーを襲った。
「ピィーーーーッ!!」
ペルーはたまらず、悲鳴を上げ
体勢を崩してしまった。
「っ!!」
言葉にならない悔しさを無意識に
発してしまう。
俺はせめて自分が下敷きに
なるようにペルーと彼女を守りながら、
下の見えない闇の中へと落ちていった。
俺は二体の謎の物体を始末し、
ペルーとタチアナさんが怪我を
負っていないかと、彼女らの
方を振り返る。
「......」
彼女はじーっと俺の方を見ていた。
驚いているのか、それとも本当は
何も見ていなかったのか、寝起きの
ような顔で俺の方を見続けている。
俺としては、今の俺の行動が見られて
いないことを祈るばかりだが、
そんなことを考えているより先に、
彼女にリカバリーをかけてやる
必要がある。
そう思って
動かなくなった蜘蛛のような物体から
離れようとしたときだった。
「機体に重度の損害を確認。」
突如、始末したはずの機械獣が
喋り出した。
「マッドサイエン様に報告完了。
未だ、領域内に魔力保持者の生存を
確認。」
俺が何かこれから情報が掴めないかと
それに聞き入っていたが、次に発せられた
言葉に、俺はタチアナさんとペルーを
抱き上げ、全速力でこの場から
離れていた。
「推定被害領域半径十キロメートル。
自爆プログラム始動。」
もし、この状態でその自爆の被害を彼女が
受けたら、間違い無く助からない。
俺は無我夢中で森を走り抜ける。
だが、俺は待っていた光景に絶望した。
谷。俺が全力で飛んでも、飛び越えられ
ないほどの大きな谷。
谷の下を見ても深すぎて何も見えない。
辺りを見渡すが、まるであちらとこちらを
分けるように、谷は俺達を仕切っていた。
「......ゴホッ......い......に......ろ。」
すると、抱き抱えていた
彼女が必死に俺に何かを
言おうとしている。
「なんです?」
「......もう......いい......ゎたし......の...ゴホッゴホ......置いて......行け......き......だけで......も......」
残っている全ての気力を振り絞って、
彼女は俺にそう言った。
「ペルー!」
もうこれしかないか......
「ピィ?」
「超筋力強化!」
俺はペルーに、文字通り、パワーが
爆発的に上がる魔法をかける。
「頼むぞ!」
そう言って俺はマントを紐代わりに
してタチアナさんを俺の背中に
くくりつけ、俺は両手でペルーの足を持つ。
俺が今からするのは、ペルーに掴まって、
向こう側に渡ることだった。
ペルーはおそらくまだ成体では無いが、
羽を広げれば既に二メートルはある。
筋力を上げてやれば十分に飛べるはず、
という根拠の無いものに望みを託した。
俺の号令を聞いて、ペルーは
ばっさばっさと羽を羽ばたかせ、慎重に
谷を飛んでいく。
残り約50メートル。
半分を渡りきり、あと少しと
緊張が頂点まで達してきたその時。
俺達が逃げてきた方向から耳を
つんざく爆発音が聞こえてくる。
そしてその後を追うように、
ものすごい熱風が空を飛ぶ
ペルーを襲った。
「ピィーーーーッ!!」
ペルーはたまらず、悲鳴を上げ
体勢を崩してしまった。
「っ!!」
言葉にならない悔しさを無意識に
発してしまう。
俺はせめて自分が下敷きに
なるようにペルーと彼女を守りながら、
下の見えない闇の中へと落ちていった。
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