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八十六話 三日月島12

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「げっ......君は......」


茂みの中から出てきた彼女が
俺を見てそう言った。


「どうして君がこんなところにいる?」


「え......あ、ああ、
道に迷ってしまって......」


「道に迷った? 君は方向音痴なのか?
この前会った時も......いや、その
話はもうよそう。」


思い出したくもない事を思い出して
しまったようで、彼女は渋面をする。


「タチアナ、さんはどうして
ここに?」


彼女の外見から、俺とさほど年も離れて
無さそうだ。なんなら俺の方が
年上の可能性もある。
だから彼女のことを呼び捨てに
しようと試みたが、さすがにそれは
殺されそうなので止めた。


「先程の攻撃で砂煙が上がって辺りが
認識できなかっただろう?
そんな中、地上に墜落した
幹部の姿をかろうじで発見できてな。
何とか討伐しようと森の中を追いかけて
いたら、私も道に迷ってしまった。」


「へぇ、そうだったんですね。
どうします? どうやって元の場所に
戻りますか?」


「それについては心配いらない。
この方位磁石でおおよその
方角がわかるんだ。ついてきたまえ。」


彼女はコツコツと腕の鎧に装着してある
方位磁石を爪で叩き、そそくさと
先を進む。


「わかりました。行くぞペルー。」


「ピ、ピ!」













「おかしいな......何故森を抜けない。
この方角で間違い無いはずなのだが......」


俺が彼女の後ろをペルーと一緒に
ついていき、二時間が経過した。


こうも変わらぬ森の風景が続くと、
出口が本当に有るのかどうか
不安になってくる。


「船に戻らなきゃいけない時間まで
あとどれくらいですか?」


ちなみに二時間森の中を歩いたときは
全く会話をしなかった。
俺は彼女から相当嫌われているらしく、
一切何も話しかけて来ないし、目すら
合わせてくれない。


そりゃあの時、あんなのを見せてしまった
ら嫌われるのも当然か。
まあ、俺もどっちかといえば、無口な
方だから別に話しをしてこない
のなら、それはそれで楽だから
いいのだが。


「あと......っ!? しまった!」


突然彼女が驚いた声を出す。


「ど、どうしました?」


プルプルと腕を震わせながら
俺に彼女は目を合わせないで
こう言った。


「方位磁石と腕時計を見間違えていた。」
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