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六十二話 選抜試験21

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「そうだ。君は不合格だよ、鼠。」



「ふざけんなや! この試験を合格す
んにはバッチを保持してへんとダメ
やったんやなかったんか!」


「あれは嘘だよ。」


「嘘!? 」


「そう、試験前にカクバが言った
バッチを持った人間が
合格できるというのは全くの嘘。
合格条件は他にある。」


「なんや、その他の合格条件って。」


「それは自分で考えてみろ。
他の候補者と自分との間で欠けていた
ものは何かを。」


「......」



「でないようだな......ではヒントを
やろう。どうして私たちは君達を
わざわざ班にわけたのだ?」


「......そんなもん......回復職のやつらに
も合格できるチャンスを与えるため
とかちゃうんか......」


「はぁ......違うな......」


「じゃあ、一体なんのためや!
何がわいに足りなかったんや!」


「協調性。」


上階の彼女の言葉が冷たく
鼠やろうを突き放す。



「は、はあ?」


「この試験で我々が審査していたのは、
強さや頭の良さ、ではなく、
仲間と協力できているかどうかだ。
君にはそれができていたか?」


「......ふ、ふざけんなや!
魔王討伐軍に入る為になんで協調性
が必要なんや!
そんなもんより他にもっと──」


「もし、もしもだ。
魔王討伐軍が本格的に活動したと
する。そうすれば、おそらく、我々は
幾多の危機に見舞われるだろう。
誰か一人の過ちで、軍全てが
壊滅する可能性だってがあるかもしれ
ない。そんな中、君のような自分の
利益しか考えることのできない奴が、
軍にいたらどうなる?
はたして、魔王の討伐なんかできる
だろうか。」


彼女は狼狽える鼠を逃がさないよう
に凝視する。


「どう思う? 鼠。私の
意見に何か反論があるなら聞こう。」



「ええぇい!! もうええ!!
帝国精鋭隊だからといって偉そうに!
所詮は小娘の分際で!!」


鼠やろうは悔しそうに歯をぎしぎし
させると、何かが吹っ切れたかのように



「アイス! スマッシュ!」


と、氷の魔法を彼女に撃ったのだった。


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