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五十三話 選抜試験12

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あ!?


と流石に俺は鼠やろうに
切れそうになったが


「それはできません。」


とアルナさんの言葉で
なんとか思いとどまる。


「隼人さんは先程、
自分自身で決闘に勝利し、
バッチを手に入れました。
この三つあるバッチの一つは
紛れもなく、彼のものです。
もし、私が負けてバッチが
二つになったとしても、
合格すべきなのは
勝利した隼人さんと牛喜さん
です。」



「そんなことになったらわいが
合格できんやないか!」



鼠が自分勝手なことを
言っていると、
別の班から一人、
こちらに向かってきた。
そして


「この班に決闘を申し込む。」



堂々とその男は言ったのだった。



「ドッペさん。」


アルナさんもまるで彼が
決闘を申し込んで来るのが
分かっていたかのように
真っ直ぐ彼をみる。



俺達以外にバッチを三個所持していた
班の中に、以前ヘルドラ討伐
で見かけた彼がいたのだった。


「アルナ、お前が戦うのか?」


「受けるな! 考え直せ!
ここでリスクを犯さなくても、
この回復魔法士を落とせばええんや!
どうせこんなよわっちい男には
なんもできやしない!
もしも、この男がわいらに
怒ってもわいが魔法で
どうにかする!
それでええやろ! な?  な? なあ!」



あまりの彼の身勝手な言葉に
周りが静まり返る。
自分が受かればそれでいい。
このゴミ鼠には
それしか頭にないようだった。


「本当に、救いようのない人ですね。
なぜ、あなたはそんなにも彼を、
いえ、回復魔法士を下に見るのですか。
理解できません。
彼らにどれだけ私達が
救われているのか
考えたこともないのでしょうね。」



「な、なんやと!」



「はっきり言います。
もし、この中で一人を落とすの
だとすれば、先程決闘に
負けたあなただと思います。」



誰もが思っていたことを彼女は
言ってくれた。すがすがしいほどに。
そんな言葉を聞いて、
痛いところを突かれた鼠は
何か言い返そうと口をもごもごして
いる。



「ですが...誰かを蹴落として、
自分が合格したとしても
あの人は喜んでくれません。
誇ってくれません。
それに、私はあの人の
団員の一人です。
あの人の顔に泥を塗るようなこと
もできません。」


アルナさんは″あの人″のいる
場所を見上げて言った。


「ですから私は戦います。
戦ってドッペさんに
勝って、魔王討伐軍の船に
あの人と一緒に船に乗ります!」


「それは私の申し出を
受けてくれるととっていいのだな?
アルナ。」


「はい!」


俺は力強く返事を
する彼女の人格に
感服する他なかった。

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