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三十九話 鳥と少女9

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メグは未だに家族の帰りを
待っているのだ。
置いていかれた十歳の頃から。


メグはとても面倒見がよく、賢い。
だからわかっているのだ。
家族はもう既に死んでいることに。
もう、帰って来ないことに。


「きっと……きっと……いつか……
会えるよね。」


ポロポロとペルーの頭の上に涙を
こぼしながら、メグは弱く言った。


彼女に言ってあげたい。


家族は生きている。


君の元に必ず帰ってくる。


頭に浮かんだ、根拠の無い言葉の数々を
今、涙をこぼしている彼女に
かけてやりたい。

たとえ、それがただの励ましで
あったとしても。

彼女を救うための言葉では
無く、俺の情けなさを隠すための
言葉を彼女に言ってやりたい。




けれど、俺は知っている。
それが許されない罪であることを。


誰かの捜索願いの依頼を
俺は今までに幾度となく受けていた。
その時に俺は言った。



必ず助けます、と。



だが、無事に助けられた
ことなどほんの一握りしかない。

ある者は死体で発見され、
ある者は痕跡すらつかめなかった。
生きていたとしても、敵に捕まり
非人道的扱いを受ける奴隷と化した
者もいた。


その現実を、心から帰りを
待つ依頼主に告げるあの感覚は
とても言葉では言い表せない。



だから、俺は誰も救えないそんな
言葉をかけることは、とうの昔に
止めたのだ。



「決めた。」



けど、俺は、やっぱりクズだから……
これが罪だとわかっていても……
俺は………。



「?」



「俺がペルーを親の元に連れて行って
やるよ。」



「え……? ほんと?」



「あぁ! だから、泣くなよ。
きっと会えるさ! な!」


だってやっぱり、いい人が、優しい人が、
幸せになれないなんて、
そんな現実、俺は受け入れられない
から……。


「……うん……!」


メグは涙を拭いて、俺の言葉に
力強く頷いたのだった。
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