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8話 ギャルの恐怖
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「ご、ごめんて! 俺が悪かったから
泣かないでくれ」
必死になだめても三沢の目から
涙が溢れ出てくる。
知らなかった。彼女がこんなにも
メンタルがクソザコナメクジだったなんて。
「ぅ......うちって......そんなにヤバイやつなの? だから、皆うちのこと見捨てるの?」
何やら思い当たる節があるようだ。
「な、何があったんだよ。言ってみろ」
「......小畑がね......この世界に来てから
変になって......なんかこの世界には
お前みたいなやつよりいい女がたくさんいるからお前なんていらないって」
そう言われてみれば、さっきの小畑の
周りには目を奪われてしまうほど
綺麗な女性たちがいた。
この世界の女性が何を基準にして
男に惚れるのかは不明だが、あれだけの
力があれば寄ってくる女性も大勢いるはず。
だから、彼女の三沢を捨てたのか。
「それでうちの転移石を無理やり奪って......もしもまた俺の女に戻りたきゃ他の転移石を持ってこいって言って、うちを奴隷商人に
売ったの」
「ひ、ひでぇ」
「だから、愛を連れてきたのに、愛の転移石を奪ったらまたうちを捨てやがった」
「小畑も酷いけど、お前もまあまあの
クズだからな? 被害者面すんなよ?」
また泣き出してしまった。
あーもう知らん。
俺は泣き続ける三沢を余所にガチャガチャ
と手首と手錠を擦り続ける。
「何してんのよ」
「あ? 逃げようとしてんだよ」
「は? そんなんで逃げれるわけ」
直後、手錠が地に落ちた。
やっぱり、俺は物質を透過できるようだ。
足枷も同じように外す。
その様子に三沢は目を丸くした。
「どうやって」
ガン! ガン! ガン!
鉄格子に十回、体をぶつけ続ける。
「おっとと」
壁抜け成功。
ぽかんと口を開けたままの三沢はこちらを
見ていた。
「で、どうする?」
「......は?」
「ここにいるのか? 頭下げて俺に謝るのであれば、お前も助けてやる」
それに三沢は不服そうな顔を浮かべて、
「う、うっせ! 誰がお前なんかの力を借りるかっつぅの」
「あっそ。じゃばいばい」
クソザコナメクジ豆腐メンタルの癖に、
一丁前にプライドはあるようだ。
さいならと背を向けて手を振る。
三沢は結局最後まで助けを
請うてくることはなかった。
「ほらよ」
俺は三沢のいる檻の中にポケットにあった
転移石を投げ入れた。
「は、は!? これって転移石じゃん!
な、なんで!?」
「いいから、受け取れよ」
俺のその言葉に恐る恐る三沢は
手を伸ばす。
瞬間、俺はくいっと細い紐を引いた。
転移石が宙に浮き、俺の手中に収まる。
「あ、あんた......!」
「誰かに盗まれないように紐で
人差し指と結んでたんだ」
「......舐めやがって」
「別にあげないとは言っていない」
「は?」
「お前が条件を飲むのであれば、
お前にこれをやるよ」
「条件?」
「ああ、この転移石を使って
俺を護衛してくれ」
「は!? なんでうちがあんたを」
「嫌ならいい」
そう言って立ち去ろうとすると、
さすがの三沢も心を揺さぶられた様子で、
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
「やるのか? やらないのか?」
「あんたを護衛すれば、その転移石を
くれるのね?」
「ああ。愛を救ってここを俺が安全に
脱出するまででいい」
「なんであんたがその転移石を
埋め込まないの?」
「俺は転移石を使えないんだよ。
なんでか知らんけど」
「ふーん、まぁわかった。
あんたをその条件飲む。だから、それ頂戴」
分かるぞ。どうせそれを受け取ったら
即効逃げる気だろ。
だが、今のお前が最も言われたくない言葉を俺は知っている。
「先に言っておくが、逃げようなんて
考えない方がいいぞ?」
三沢はびくっと肩を震わす。
「は、は? 別に逃げようなんて
考えてないし」
「顔に出てんだよ」
「......うっさい! なら渡さないでさっさと
行けばいいじゃん!」
俺は転移石をもう一度投げ入れた。
それにまた紐で結んでるだろと
三沢は手を伸ばさない。
だから、紐も中に投げ入れた。
「別に裏切りたければ裏切ればいいさ。
けど、そうしたら本当にお前は
もう一人ボッチになるがな。そして、一人になったお前に寄り添う奴はいない。
人を裏切り続けて、最後には一人で
死んでいくんだろうなぁ」
一人ボッチ。
今までの誰かに囲まれて何不自由なく
生きてきたこいつは、この世界に来て
初めて孤独という恐怖を覚えただろう。
もう誰でもいいから側にいてほしいと
思っているはずだ。
それが例え、これまでバカにしてきた
陰キャだったとしても。
バコン!!!!!
鉄格子が外れた音が響いた。
中から三沢が出てくる。
「ふんっ!」
不満そうだが、どうやら裏切る気は
ないらしい。
これでようやく戦力が増えた。
正直、転移石のない一般人の俺が、
転移石を失って一般人になった愛を
見つけ出して二人でここを
抜け出すのは不可能だと考えていた。
腹立つし、ぶっちゃけ置いていきたいが、
今はこいつの力に頼るしかない。
「あ、あんたはうちを一人にしないよね?」
どうやらしっかり洗脳できているようだし、
これなら問題ないだろう。
「ああ、裏切らなかったらな」
泣かないでくれ」
必死になだめても三沢の目から
涙が溢れ出てくる。
知らなかった。彼女がこんなにも
メンタルがクソザコナメクジだったなんて。
「ぅ......うちって......そんなにヤバイやつなの? だから、皆うちのこと見捨てるの?」
何やら思い当たる節があるようだ。
「な、何があったんだよ。言ってみろ」
「......小畑がね......この世界に来てから
変になって......なんかこの世界には
お前みたいなやつよりいい女がたくさんいるからお前なんていらないって」
そう言われてみれば、さっきの小畑の
周りには目を奪われてしまうほど
綺麗な女性たちがいた。
この世界の女性が何を基準にして
男に惚れるのかは不明だが、あれだけの
力があれば寄ってくる女性も大勢いるはず。
だから、彼女の三沢を捨てたのか。
「それでうちの転移石を無理やり奪って......もしもまた俺の女に戻りたきゃ他の転移石を持ってこいって言って、うちを奴隷商人に
売ったの」
「ひ、ひでぇ」
「だから、愛を連れてきたのに、愛の転移石を奪ったらまたうちを捨てやがった」
「小畑も酷いけど、お前もまあまあの
クズだからな? 被害者面すんなよ?」
また泣き出してしまった。
あーもう知らん。
俺は泣き続ける三沢を余所にガチャガチャ
と手首と手錠を擦り続ける。
「何してんのよ」
「あ? 逃げようとしてんだよ」
「は? そんなんで逃げれるわけ」
直後、手錠が地に落ちた。
やっぱり、俺は物質を透過できるようだ。
足枷も同じように外す。
その様子に三沢は目を丸くした。
「どうやって」
ガン! ガン! ガン!
鉄格子に十回、体をぶつけ続ける。
「おっとと」
壁抜け成功。
ぽかんと口を開けたままの三沢はこちらを
見ていた。
「で、どうする?」
「......は?」
「ここにいるのか? 頭下げて俺に謝るのであれば、お前も助けてやる」
それに三沢は不服そうな顔を浮かべて、
「う、うっせ! 誰がお前なんかの力を借りるかっつぅの」
「あっそ。じゃばいばい」
クソザコナメクジ豆腐メンタルの癖に、
一丁前にプライドはあるようだ。
さいならと背を向けて手を振る。
三沢は結局最後まで助けを
請うてくることはなかった。
「ほらよ」
俺は三沢のいる檻の中にポケットにあった
転移石を投げ入れた。
「は、は!? これって転移石じゃん!
な、なんで!?」
「いいから、受け取れよ」
俺のその言葉に恐る恐る三沢は
手を伸ばす。
瞬間、俺はくいっと細い紐を引いた。
転移石が宙に浮き、俺の手中に収まる。
「あ、あんた......!」
「誰かに盗まれないように紐で
人差し指と結んでたんだ」
「......舐めやがって」
「別にあげないとは言っていない」
「は?」
「お前が条件を飲むのであれば、
お前にこれをやるよ」
「条件?」
「ああ、この転移石を使って
俺を護衛してくれ」
「は!? なんでうちがあんたを」
「嫌ならいい」
そう言って立ち去ろうとすると、
さすがの三沢も心を揺さぶられた様子で、
「ちょ、ちょっと待ってよ!」
「やるのか? やらないのか?」
「あんたを護衛すれば、その転移石を
くれるのね?」
「ああ。愛を救ってここを俺が安全に
脱出するまででいい」
「なんであんたがその転移石を
埋め込まないの?」
「俺は転移石を使えないんだよ。
なんでか知らんけど」
「ふーん、まぁわかった。
あんたをその条件飲む。だから、それ頂戴」
分かるぞ。どうせそれを受け取ったら
即効逃げる気だろ。
だが、今のお前が最も言われたくない言葉を俺は知っている。
「先に言っておくが、逃げようなんて
考えない方がいいぞ?」
三沢はびくっと肩を震わす。
「は、は? 別に逃げようなんて
考えてないし」
「顔に出てんだよ」
「......うっさい! なら渡さないでさっさと
行けばいいじゃん!」
俺は転移石をもう一度投げ入れた。
それにまた紐で結んでるだろと
三沢は手を伸ばさない。
だから、紐も中に投げ入れた。
「別に裏切りたければ裏切ればいいさ。
けど、そうしたら本当にお前は
もう一人ボッチになるがな。そして、一人になったお前に寄り添う奴はいない。
人を裏切り続けて、最後には一人で
死んでいくんだろうなぁ」
一人ボッチ。
今までの誰かに囲まれて何不自由なく
生きてきたこいつは、この世界に来て
初めて孤独という恐怖を覚えただろう。
もう誰でもいいから側にいてほしいと
思っているはずだ。
それが例え、これまでバカにしてきた
陰キャだったとしても。
バコン!!!!!
鉄格子が外れた音が響いた。
中から三沢が出てくる。
「ふんっ!」
不満そうだが、どうやら裏切る気は
ないらしい。
これでようやく戦力が増えた。
正直、転移石のない一般人の俺が、
転移石を失って一般人になった愛を
見つけ出して二人でここを
抜け出すのは不可能だと考えていた。
腹立つし、ぶっちゃけ置いていきたいが、
今はこいつの力に頼るしかない。
「あ、あんたはうちを一人にしないよね?」
どうやらしっかり洗脳できているようだし、
これなら問題ないだろう。
「ああ、裏切らなかったらな」
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