双子の美人姉妹が異世界に行ったらイケメンたちの間に派閥が生まれました。

第２章 さつきSide

1 あたしは病人じゃありません！

　ドタドタと、慌ただしい足音で意識が覚醒した。
　あれ？　あたし、なんで床に寝転がってるんだろう。
　たしか、かえでと一緒に駅のホームで電車を待っていたはずだ。
　大きな謎の光に包まれて、それからの記憶がない。
　夜遅くまで受験勉強をしていて寝不足だったし、最近始めたダイエットで食事制限しているし、貧血起こして倒れたのかな。
　もしかして、この足音は救急隊員の足音？
　まずい。大ごとになってきた。
　このまま、寝たふりをした方が良い？
　それとも、もう何ともないことを救急隊員の人たちに伝えた方が良い？

　かえでが何とかしてくれるかな。

　あたしは、かえでの声が聞こえてくるのを待った。
　しかし、聞こえてくるのは男性たちのざわめきだけだった。

　膝の裏と背中に人の腕が入り込む感覚を覚えた。
　ふと、宙に浮く感覚にあたしは慌てて目を開けた。

「あの、すみません、大丈夫ですから！」
「うわぁっ」

　あたしを抱き上げようとしていた男性が、悲鳴を上げてあたしを抱えたまま後ろに倒れ込んだ。
　強い衝撃を受けたけど、痛みは感じなかった。

「ってぇ……」

　男性が呻いた。

「だ、大丈夫ですか？！」
「いや……、動けるなら、どいてくれねぇか……」
「ご、ごめんなさい！」

　自分が男性の上に乗っていることに気が付き、慌てて降りて立ち上がった。
　男性は背中を擦りながら立ち上がる。
　その男性の姿を見て、あたしは言葉を失った。

（え？　外国人？！）

　身長は二メートルはありそうなほど高い。肩幅は広く、露出された腕は太くて筋肉で膨れ上がっている。
　赤髪短髪。目の色も赤い。
　年齢は20代半ばくらいだろうか。顔つきは精悍で、かなりイケメン。
　見たことのない、古風な衣装を着ている。
　そう。衣装という言葉がしっくりくる、古代中国っぽい服だった。

（てか、ここどこ……？）

　今さらながら、自分が駅のホームではないところに立っている事に気が付いたのだった。