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第1章 かえで Side
プロローグ
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私、小野寺かえでとさつきは一卵性の双子の姉妹だ。
18歳。高校三年生。
群馬県のとある小さな町で暮らしている。
私とさつきは県内の違う高校に通っているけれど、私に双子の妹がいることは校内の殆どが知っている。
私たちはなぜか、昔から色々と注目される事が多い。
周りの人たちはみんな、私たちのことを「可愛い」「美人だ」と言ってくれる。
ふたり一緒に街中を歩けば、老若男女が振り向く。
たしかに、さつきは可愛い。
町一番可愛いと思う。群馬一、いや、日本一可愛いと思う。
顔が小さくて白い肌。ピンク色の艶やかな頬。
大きな目に、鼻筋が通った鼻。唇は薄くもなく厚くもなく、形が整っている。
天使の輪ができるくらい、艶やかでサラサラの黒髪は、いつも頭の上でひとつに高く結ばれている。
うなじが色っぽくて、後ろ姿だけでも美人だとすぐ分かる。
振り返った顔を見てがっかりするどころか、期待通りの美しさだ。
東京からわざわざ芸能事務所がスカウトに来るくらい、華やかでオーラがある。
そんなさつきと双子の私も、きっと可愛いのだろう。
でも、私には華やかさもオーラもない。
唯一勝っているとしたら、胸の大きさくらいかも知れない。
誰とでも仲良くなれて明るいさつきと違って、私は人見知りだし、何事もマイナス思考だ。
それに、みんなが可愛いって言ってくれる割に、この18年間、彼氏ができたことがない。
まあ、女子校に通っているから仕方がないのかもしれない。
そういうことにしておく。
目立つことが苦手なので、大きな銀縁フレームの眼鏡をかけている。
長い髪も苦手なので、小学生の頃からずっとボブより長くしたことはない。
いつの間にか、気配を消すことも得意になっていた。
本を読むことが大好きでインドア派。
最近は、自分でも小説を書いている。しかも、ちょっとエッチなやつ。
今年から官能小説に興味を持ち始め、受験勉強が疎かになっている。
夏休みに入ったらほぼ毎日、塾の夏期講習に通わなければいけないので、今書いている小説を早く完結させないと。
「暑すぎる……」
シャツの襟を大きく開けて、手で仰ぎながら、さつきがぽつりと呟いた。
私たちは今、ホームのベンチに座り、電車を待っている。
塾の帰りで、周りはすっかり暗くなっていた。
ホームには私たちしか居なかった。
「誰も居ないからって、そんな格好はしたないよ」
「いいじゃん。本当なら脱ぎたいところだよ。もー、汗で張り付いて気持ちが悪い」
「脱いだところで涼しくなる暑さじゃないでしょ」
「分かってるけどさぁ、あー、もう! こんな時間まで蝉も頑張るんじゃないよ! 余計暑くなるじゃん!」
さつきは蝉に八つ当たりをしながら、スカートを仰ぎ始めた。
だれもが振り向く美人なのに、こういうがさつなところが評判らしい。
私と違って、さつきは男女共学の高校に通っているけれど、彼氏っているのかな。
さつきの口から、男子の話を聞いたことがない。
私が女子校に通っているから遠慮している、というわけではなさそうだ。
さつきが私に遠慮することなんかありえない。
エッチとか、したことあるのかな……。
「あ、電車来た」
さつきの声で我に返った。
私ったら、一体何を考えてるの!
双子の妹の性事情を想像するなんて!
体中が熱くなり、脇や背中から汗が噴き出てくる。
「ねえ、あの電車おかしくない?!」
立ち上がって一歩先に出ていたさつきが叫ぶ。
私も立ち上がって視線をホームに向ける。
「光が……!」
まるで、光の玉がこちらに向かってくるようだった。
眩しくて目が開けていられず、私は両手で顔を覆って俯いた。
ふと、周りの音が聞こえなくなった。
あんなに激しく鳴いていた蝉の声さえ聞こえない。
「さつき………!」
叫んだはずの私の声も、なにかにかき消されてしまったようだった。
18歳。高校三年生。
群馬県のとある小さな町で暮らしている。
私とさつきは県内の違う高校に通っているけれど、私に双子の妹がいることは校内の殆どが知っている。
私たちはなぜか、昔から色々と注目される事が多い。
周りの人たちはみんな、私たちのことを「可愛い」「美人だ」と言ってくれる。
ふたり一緒に街中を歩けば、老若男女が振り向く。
たしかに、さつきは可愛い。
町一番可愛いと思う。群馬一、いや、日本一可愛いと思う。
顔が小さくて白い肌。ピンク色の艶やかな頬。
大きな目に、鼻筋が通った鼻。唇は薄くもなく厚くもなく、形が整っている。
天使の輪ができるくらい、艶やかでサラサラの黒髪は、いつも頭の上でひとつに高く結ばれている。
うなじが色っぽくて、後ろ姿だけでも美人だとすぐ分かる。
振り返った顔を見てがっかりするどころか、期待通りの美しさだ。
東京からわざわざ芸能事務所がスカウトに来るくらい、華やかでオーラがある。
そんなさつきと双子の私も、きっと可愛いのだろう。
でも、私には華やかさもオーラもない。
唯一勝っているとしたら、胸の大きさくらいかも知れない。
誰とでも仲良くなれて明るいさつきと違って、私は人見知りだし、何事もマイナス思考だ。
それに、みんなが可愛いって言ってくれる割に、この18年間、彼氏ができたことがない。
まあ、女子校に通っているから仕方がないのかもしれない。
そういうことにしておく。
目立つことが苦手なので、大きな銀縁フレームの眼鏡をかけている。
長い髪も苦手なので、小学生の頃からずっとボブより長くしたことはない。
いつの間にか、気配を消すことも得意になっていた。
本を読むことが大好きでインドア派。
最近は、自分でも小説を書いている。しかも、ちょっとエッチなやつ。
今年から官能小説に興味を持ち始め、受験勉強が疎かになっている。
夏休みに入ったらほぼ毎日、塾の夏期講習に通わなければいけないので、今書いている小説を早く完結させないと。
「暑すぎる……」
シャツの襟を大きく開けて、手で仰ぎながら、さつきがぽつりと呟いた。
私たちは今、ホームのベンチに座り、電車を待っている。
塾の帰りで、周りはすっかり暗くなっていた。
ホームには私たちしか居なかった。
「誰も居ないからって、そんな格好はしたないよ」
「いいじゃん。本当なら脱ぎたいところだよ。もー、汗で張り付いて気持ちが悪い」
「脱いだところで涼しくなる暑さじゃないでしょ」
「分かってるけどさぁ、あー、もう! こんな時間まで蝉も頑張るんじゃないよ! 余計暑くなるじゃん!」
さつきは蝉に八つ当たりをしながら、スカートを仰ぎ始めた。
だれもが振り向く美人なのに、こういうがさつなところが評判らしい。
私と違って、さつきは男女共学の高校に通っているけれど、彼氏っているのかな。
さつきの口から、男子の話を聞いたことがない。
私が女子校に通っているから遠慮している、というわけではなさそうだ。
さつきが私に遠慮することなんかありえない。
エッチとか、したことあるのかな……。
「あ、電車来た」
さつきの声で我に返った。
私ったら、一体何を考えてるの!
双子の妹の性事情を想像するなんて!
体中が熱くなり、脇や背中から汗が噴き出てくる。
「ねえ、あの電車おかしくない?!」
立ち上がって一歩先に出ていたさつきが叫ぶ。
私も立ち上がって視線をホームに向ける。
「光が……!」
まるで、光の玉がこちらに向かってくるようだった。
眩しくて目が開けていられず、私は両手で顔を覆って俯いた。
ふと、周りの音が聞こえなくなった。
あんなに激しく鳴いていた蝉の声さえ聞こえない。
「さつき………!」
叫んだはずの私の声も、なにかにかき消されてしまったようだった。
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