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第2章 ルカSide

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 その日の夜。
 読みかけの本を手に寝室に向かうと、ウィルフレッドが本を広げながらベッドの上で仰向けに寝転がっていた。
 足をパタパタさせて、あまり集中しているようには見えなかった。
 ウィルレッドが本を読んでいることよりも、この時間に彼が部屋にいるということの方が驚いた。
 俺が部屋に入ってきたことに気がついたウィルフレッドは、本を閉じてサイドテーブルに放り投げた。

「やっぱり本はつまらないよ」
「君がこの時間にいるなんて珍しいな」
「んー? 今日はマーケットに行って疲れた」
「本当に、それだけの理由?」

 前回のマーケットの時は、帰ってきて早々に遊びに出てしまったのではなかったか。
 そう思いつつ、ウィルフレッドが放り投げた本と、自分が読もうとしていた本を本棚へしまう。
 ベッドに戻ると、仰向けに寝転がったウィルフレッドの上に覆い被さった。

「なに? したいの?」
「したいのは君じゃないの?」
「オレは別にしたくないけど、ルカがしたいって言うなら、してもいいよ」

 誘うように目を細めて、口端を吊り上げた。素直に俺を待っていたと言えるようになれば可愛いのに。
 しかしそれでも、彼の誘いに乗ってしまう。久しぶりに彼を抱きしめて一緒に眠りたいと思った。
 そのためには、まずウィルフレッドを満足させてやらなければいけない。俺自身は、とくにセックスをしたいと思わなかったが、ただ抱きしめ合って眠るだけというのは、ウィルフレッドにはできない。

「うん。俺がしたいからさせて?」
 そう言うと、ウィルフレッドは「仕方がないなぁ」と言いながら、表情を緩ませる。
 しかし、顔を近づけると、突然顔を強ばらせた。

「どうした?」

 乗り気だったくせに、気分でも変わったかのようなウィルフレッドの態度に、少々うんざりする。
 だが別に気が変わったわけではないらしい。ウィルフレッドは「何でもない」と首を横に振ってから、にやりと笑った。

「久しぶりだし、今日は特別にオレがしてあげようかなって」

 俺の体を押しのけると、寝転ぶように言った。
 素直に従うと、ウィルフレッドが俺のパジャマのズボンを下着ごと引きずり下ろす。
 萎えた状態の俺の性器に触れると、そのまま軽く扱いた。

「珍しいね。君がしてくれるなんて」

 頼めばしてくれるが、ウィルフレッドが自発的にしてくれるのは珍しい。
 ウィルフレッドの手淫、口淫のテクニックは極上で、すぐに男を昇天させる。
 だがそれは男娼時代、あまり好みではない客を相手にする時、すぐに達かせて満足させるために身につけたものだ。そんな経緯があるせいか、俺にはしたがらなかった。
 ウィルフレッドなりに申し訳ないという気持ちがあるのかもしれない。

「今日は特別。そんな気分なだけだよ」
「怪しいな。なにか隠してないか?」
「別に。……そんなことよりも、ルカ。もしかして、疲れてたりする?」

 ウィルフレッドが困惑した顔で見上げる。

「そんなことないけど?」
「じゃあ、オレに触られて気持ち良くない?」

 ウィルフレッドは表情を曇らせる。
 なぜそんな顔をするのか、俺には理解できなかった。

「ウィルに触られればいつだって気持ち良いよ」
「じゃあ、なんで全然硬くならないんだ?」

 ウィルフレッドが俺の性器から手を離すと、ぶらりと垂れ下がる。全く萎えたままだった。
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