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第二章ドラゴニア帝国編

逆に空気を読んだ結果です

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 ピリピリとした空気が周囲を包む。そこまで警戒しなくても良いと思うんだけどと考えた私はコヒキさんの抱えていた紙袋にダイブした。

「………………」

「………………」

 両者が睨み合う中で私は空気を読む事なく中を漁る。果物やパンや野菜や肉等が入っていたので、パンとハムを発見したので乗っけて一緒に食べる。

「………………」

「………………」



 大きなパンなので大口を開けて果敢に挑戦するけどなかなかハムとパンを一緒にして食べられない。更にゴソゴソと紙袋を漁るとスライスされたチーズが出てきたのでそれも乗っける。余計に食べられなくて四苦八苦。

「………姫様」

「………ニア」

「う?」

 パンに齧りつくけどパンしか口に入ってこない。パンの味しかしない。寂しい。せめてジャム無いかな?

「切るか?」

「そうしてくれますか」

 頑張って食べようとしている私を見て、両者が溜め息をついた。よし、喧嘩にならずにすんだ。

 コヒキさんが何処からかナイフを取り出しパンを小さくカットしてくれた。ついでにハムとチーズ、レタスもちょうど良い大きさにしてくれたので挟んで食べる。

 シャキシャキしたレタスの食感とハムとチーズの塩気、パンのほんのりとした甘味を堪能しているとキナリさんも同じようにして食べてた。ロウさんはハムとトマトとレタスで食べている。

 すっかり食事タイムを満喫し、満腹になった私をハジさんが膝だっこしてくれた。

「さて、姫様のおかげで良い感じに気が抜けましたが、先程の答えは如何様に?」

「答えは否だ。俺達はアニマーに帰る事は考えていない」

 でも、あちらには母親がいる筈だ。それを放置して良いのだろうか。

「母上とは縁が切れたんだ」

 そうは言っていてもやはり生みの母を敵の元に置いておきたくはないのだろう。悔しそうに顔を歪める四人。

 私がここでそれで良いのかと言うのは簡単だけれど彼等が決定した事に口を挟むのは彼等の決意を汚す行為だ。潔く引こう。

「にちゃはわたちといっちょにいりゅの?」

「そうだ。出来ればなんか職があれば良いんだけどな」

 ふむ。手先が器用なのは確認済みだし、身軽なのも知ってるし、何処からともなくナイフを取り出した。それを符合し、ある結論を出す。

「みっちぇい」

「ん?」

「姫様は貴方方に密偵になるのはどうかと」

「成る程」

「面白そうだね」

 猫科が揃っているんだし、暗闇を暗躍するイケメン密偵というか忍者かな?月夜を背に隠密行動とかたぎる。私も出来ればやりたいけど、多分全力で止められるだろう。

「暫くは騎士団で預かりましょう。その間はボクとボクの兄ギデオンが鍛えます。正式に姫様の密偵に確定されましたら我が国が抱える“ファントム”の長に紹介しましょう」

 待って!初めて聞く単語があったよ。ファントムって何?話の流れ的に密偵部隊とかだろう事は分かるけど、何?ファントム!格好良い!
 
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