29 / 100
第一章ヒューマニ王国編
事件発生
しおりを挟む
今日も殆ど世話をする事なく本の朗読するロッテンマイラさん。私の世話はロナルドさんが他に用意した侍女が二人で交互に持ち回っている。
この侍女達実はベネッタさんの侍女だったみたいで時折、恨みがましく愚痴ってるんだよね。『王妃様付きだったのになんで子供の世話なんて』、『私は伯爵令嬢なのに』とかね。侍女としての自覚ある?いくら貴族の娘だからって仕事中に嫌々とした態度と言動で対面する私の身にもなってみて欲しいな。
一応、世話はしてくれるんだけど全部が雑なんだよね。これなら世話してくれなくても良いのに。此方だって嫌々させるとストレス溜まるんだけど?私に剥げろと?
今も嫌そうに世話する侍女に注意するようにペチンと腕を叩いた。
「きゃっ!この子暴力振るったわ!!」
赤ちゃんだからね。暴れるのは仕方無いよ。大人の言いなりになるわけないからね。
少しでも勤務態度が改善されるようにと思ったんだけど、侍女はあろう事か私を掴むと庭へと続く扉を開き、庭へと出ると迷う事なく池へと遣って来た。
不味い不味い!!これは流石に不味い!!と、思って暴れるけど侍女は私の首根っこを掴んでるから手が届かない。
次の瞬間、大きな音をたてて私を池へと落とした。
「良い気味ですわ。私に暴力など振るうからですわ。そのまま死ねば良いのですわ」
醜く歪む顔で笑う侍女。それを池の底へと沈んでいく私は絶句して見ていた。
暴れるけれど、衣服が重くどんどん沈んでいく。口からは肺の中の空気が否応なく出ていってしまう。叫ぼうにも水の中だし、私の言葉は言葉にならない。
前世だったあのどう足掻いても妹から逃げる事が出来なかった場所から救ってくれた女神リュシエル様。全く人の話を聞かない神外級のマイペースな女神。それでもこうやってまた新たな生を与えてくれてやり直す事が出来るとそう思っていたのに転生して早々にまさかまた死ぬ事になるとは…。
酸素が脳に供給されなくなったからか意識に靄がかかりだす。暗く冷たい水の感触と先程まで苦しかった感覚が薄れる。
「ああ、死ぬんだ」と、何処か他人事に思える。カイルさん、スヴェンさん、クリフさん、エレンさん、ファンティーヌさん、ノアさん。ちょっとしか一緒に居なかったけど、泣いてくれるかな?
でも泣いて欲しくないな。私のせいで悲しい顔をして欲しくないな。いつでも皆には笑っていて欲しいな。
少しだけしか一緒に居られなかったけど私の中では十分に大切な人達だったな。
妹が居た時はこれ程までに濃密に人間関係で絡んだ事無かったっけ。親しくなる前に妹に阻止されてたし。
ゆらゆら揺れる池の水面がどんどん遠くになって行く。底の方にはきっと太陽の光が届かない。誰か私を見付けてくれるかな?
この侍女達実はベネッタさんの侍女だったみたいで時折、恨みがましく愚痴ってるんだよね。『王妃様付きだったのになんで子供の世話なんて』、『私は伯爵令嬢なのに』とかね。侍女としての自覚ある?いくら貴族の娘だからって仕事中に嫌々とした態度と言動で対面する私の身にもなってみて欲しいな。
一応、世話はしてくれるんだけど全部が雑なんだよね。これなら世話してくれなくても良いのに。此方だって嫌々させるとストレス溜まるんだけど?私に剥げろと?
今も嫌そうに世話する侍女に注意するようにペチンと腕を叩いた。
「きゃっ!この子暴力振るったわ!!」
赤ちゃんだからね。暴れるのは仕方無いよ。大人の言いなりになるわけないからね。
少しでも勤務態度が改善されるようにと思ったんだけど、侍女はあろう事か私を掴むと庭へと続く扉を開き、庭へと出ると迷う事なく池へと遣って来た。
不味い不味い!!これは流石に不味い!!と、思って暴れるけど侍女は私の首根っこを掴んでるから手が届かない。
次の瞬間、大きな音をたてて私を池へと落とした。
「良い気味ですわ。私に暴力など振るうからですわ。そのまま死ねば良いのですわ」
醜く歪む顔で笑う侍女。それを池の底へと沈んでいく私は絶句して見ていた。
暴れるけれど、衣服が重くどんどん沈んでいく。口からは肺の中の空気が否応なく出ていってしまう。叫ぼうにも水の中だし、私の言葉は言葉にならない。
前世だったあのどう足掻いても妹から逃げる事が出来なかった場所から救ってくれた女神リュシエル様。全く人の話を聞かない神外級のマイペースな女神。それでもこうやってまた新たな生を与えてくれてやり直す事が出来るとそう思っていたのに転生して早々にまさかまた死ぬ事になるとは…。
酸素が脳に供給されなくなったからか意識に靄がかかりだす。暗く冷たい水の感触と先程まで苦しかった感覚が薄れる。
「ああ、死ぬんだ」と、何処か他人事に思える。カイルさん、スヴェンさん、クリフさん、エレンさん、ファンティーヌさん、ノアさん。ちょっとしか一緒に居なかったけど、泣いてくれるかな?
でも泣いて欲しくないな。私のせいで悲しい顔をして欲しくないな。いつでも皆には笑っていて欲しいな。
少しだけしか一緒に居られなかったけど私の中では十分に大切な人達だったな。
妹が居た時はこれ程までに濃密に人間関係で絡んだ事無かったっけ。親しくなる前に妹に阻止されてたし。
ゆらゆら揺れる池の水面がどんどん遠くになって行く。底の方にはきっと太陽の光が届かない。誰か私を見付けてくれるかな?
27
お気に入りに追加
392
あなたにおすすめの小説
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
幼馴染から奴隷のように扱われていた俺、誰でも奴隷にできる最強スキル<奴隷化>が覚醒! 勇者も魔王もみんな奴隷にして可愛がります
ねこ鍋
ファンタジー
光の勇者として幼い頃から横暴の限りを尽くしてきたエリー。荷物持ちの俺は奴隷のように扱われていたが、それでも彼女の力になれるのだからとガマンしてきた。しかしある日、エリーの気まぐれで俺は命を落としてしまう。
その後、勇者の力で復活させられたが、それを見ていた女神様がついに愛想を尽かし、エリーから勇者の資格を剥奪してしまった。
世界最強の勇者から、一転して世界最弱の無能冒険者に成り下がったエリー。このままでは死んでしまうと怯えるエリーに、俺はこう提案した。
「俺と奴隷契約を結ぶなら助けてやろう」
こうして横暴幼馴染を奴隷にした俺は、さらに<奴隷化>という伝説のスキルが発現していたことも発覚する。これは相手を屈服させれば勇者でも魔王でも奴隷にできる最強スキル。しかも奴隷と仲良くなるほど俺も奴隷も強くなるため、エリーを愛しまくっていたらエリーも俺が好きだと発覚した。
これは奴隷にした勇者を愛しまくり、やがて嫁にするまでの物語。
夫婦で異世界に召喚されました。夫とすぐに離婚して、私は人生をやり直します
もぐすけ
ファンタジー
私はサトウエリカ。中学生の息子を持つアラフォーママだ。
子育てがひと段落ついて、結婚生活に嫌気がさしていたところ、夫婦揃って異世界に召喚されてしまった。
私はすぐに夫と離婚し、異世界で第二の人生を楽しむことにした。
異世界でのんびり暮らしたい!?
日向墨虎
ファンタジー
前世は孫もいるおばちゃんが剣と魔法の異世界に転生した。しかも男の子。侯爵家の三男として成長していく。家族や周りの人たちが大好きでとても大切に思っている。家族も彼を溺愛している。なんにでも興味を持ち、改造したり創造したり、貴族社会の陰謀や事件に巻き込まれたりとやたらと忙しい。学校で仲間ができたり、冒険したりと本人はゆっくり暮らしたいのに・・・無理なのかなぁ?
【完結】異世界で急に前世の記憶が蘇った私、生贄みたいに嫁がされたんだけど!?
長船凪
ファンタジー
サーシャは意地悪な義理の姉に足をかけられて、ある日階段から転落した。
その衝撃で前世を思い出す。
社畜で過労死した日本人女性だった。
果穂は伯爵令嬢サーシャとして異世界転生していたが、こちらでもろくでもない人生だった。
父親と母親は家同士が決めた政略結婚で愛が無かった。
正妻の母が亡くなった途端に継母と義理の姉を家に招いた父親。
家族の虐待を受ける日々に嫌気がさして、サーシャは一度は修道院に逃げ出すも、見つかり、呪われた辺境伯の元に、生け贄のように嫁ぐはめになった。
他人の人生押し付けられたけど自由に生きます
鳥類
ファンタジー
『辛い人生なんて冗談じゃ無いわ! 楽に生きたいの!』
開いた扉の向こうから聞こえた怒声、訳のわからないままに奪われた私のカード、そして押し付けられた黒いカード…。
よくわからないまま試練の多い人生を押し付けられた私が、うすらぼんやり残る前世の記憶とともに、それなりに努力しながら生きていく話。
※注意事項※
幼児虐待表現があります。ご不快に感じる方は開くのをおやめください。
転生先ではゆっくりと生きたい
ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。
事故で死んだ明彦が出会ったのは……
転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた
小説家になろうでも連載中です。
なろうの方が話数が多いです。
https://ncode.syosetu.com/n8964gh/
迷い人と当たり人〜伝説の国の魔道具で気ままに快適冒険者ライフを目指します〜
青空ばらみ
ファンタジー
一歳で両親を亡くし母方の伯父マークがいる辺境伯領に連れて来られたパール。 伯父と一緒に暮らすお許しを辺境伯様に乞うため訪れていた辺境伯邸で、たまたま出くわした侯爵令嬢の無知な善意により 六歳で見習い冒険者になることが決定してしまった! 運良く? 『前世の記憶』を思い出し『スマッホ』のチェリーちゃんにも協力してもらいながら 立派な冒険者になるために 前世使えなかった魔法も喜んで覚え、なんだか百年に一人現れるかどうかの伝説の国に迷いこんだ『迷い人』にもなってしまって、その恩恵を受けようとする『当たり人』と呼ばれる人たちに貢がれたり…… ぜんぜん理想の田舎でまったりスローライフは送れないけど、しょうがないから伝説の国の魔道具を駆使して 気ままに快適冒険者を目指しながら 周りのみんなを無自覚でハッピーライフに巻き込んで? 楽しく生きていこうかな! ゆる〜いスローペースのご都合ファンタジーです。
小説家になろう様でも投稿をしております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる