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第一章ヒューマニ王国編
口に合わない理由
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その後、カイルさんとスヴェンさんは親切にも色々な子持ちの女性に声をかけてはお乳を貰おうとしたが、私は一口飲んでは吐き出すを繰り返していた。吐き出すという行為も結構体力使うんだよ。疲れたし、お腹減った。
「どうしましょうか?」
「ここは育児のプロに助言してもらおうぜ」
要するに年配の女性に頼ったのだ。でもここでも原因は分からず仕舞いで広場の真ん中の噴水の縁に腰掛けて呆ける二人。
そんな二人に申し訳なく思っているとにゅっとお婆さんが私の顔を覗き込んだ。
「まあまあまあ、可愛らしい子じゃないか」
目尻の皺を深くして微笑む優しげなお婆さんに前世の祖母を思い出して感情が溢れた。もう会いたくても会えない遠い人。
「ふぎゃあああああ」
「おやおや、どれ婆にも抱かせておくれ」
突然大人しかった私がぎゃん泣きし始めてカイルさんとスヴェンさんはオロオロし始めた。それをお婆さんはニコニコとしながら声をかけ、私を抱き上げる。
「おお、よしよし、いい子だ、いい子だ」
お日様の匂いと薬草の匂い、それから優しいお婆さんの匂いに気持ちが落ち着いていく。
「えぅ」
「おお、いい子だ」
抱きながら頬とつんつんと突くお婆さんの指にぱくりと食いつく。働き者だったのだろうお婆さんの指は太く短い。
「おお、元気じゃの。おや、この子は竜人の子かい?」
お婆さんが不思議そうに二人を見上げる。カイルさんとスヴェンさんは互いを見詰め、一緒に首を傾げる。なんか、可愛いな。
「分からん。捨て子で腹が減ってそうだったから乳を探して、与えたんだが飲まねえんだ」
「竜人ですか?こんな所で?」
「この子は竜人の子で間違いないわい。婆の指から少しだけ魔力を吸ったわい」
ええ、はい、吸えちゃいました。薄かったけど飲めた。なんか不思議。カイルさんとスヴェンさんは戸惑ってるけど私も戸惑ってるよ。
「魔力を吸った?」
「そうじゃ、人の子と違って竜人の子は魔力を栄養にするんじゃ。良かったの早めに分かって、このままこの子が竜人と分からんで乳を与え続ければ、栄養にならずに衰弱して死ぬ所じゃったぞい」
転生して早々にまた死ぬのは嫌だよ。危なかった。ところでお腹すいたので誰か吸わせてくれんかね?
「では私が」
カイルさんが私に指を差し出すけれどお婆さんが止める。
「この子にも味の好みはあろうて、婆の魔力はあまり口に合わなんだか、直ぐに口から出したわい。この分だと魔力が高い方が良いかもしれんのう」
お婆さんにゆるゆると揺られる私をじっと見詰めるカイルさんとスヴェンさん。何か考えているようだけどなんだろう。
「わかりました。お婆さんありがとうございました」
「あんがとよ、婆さん」
「なんのなんの、また抱かせておくれ」
礼儀正しく腰を折るカイルさんとニカッと笑って手をあげるスヴェンさん。お婆さんから私を受け取ったスヴェンさんとカイルさんはそのまま目的地があるのか迷うことなく歩き続けた。
「どうしましょうか?」
「ここは育児のプロに助言してもらおうぜ」
要するに年配の女性に頼ったのだ。でもここでも原因は分からず仕舞いで広場の真ん中の噴水の縁に腰掛けて呆ける二人。
そんな二人に申し訳なく思っているとにゅっとお婆さんが私の顔を覗き込んだ。
「まあまあまあ、可愛らしい子じゃないか」
目尻の皺を深くして微笑む優しげなお婆さんに前世の祖母を思い出して感情が溢れた。もう会いたくても会えない遠い人。
「ふぎゃあああああ」
「おやおや、どれ婆にも抱かせておくれ」
突然大人しかった私がぎゃん泣きし始めてカイルさんとスヴェンさんはオロオロし始めた。それをお婆さんはニコニコとしながら声をかけ、私を抱き上げる。
「おお、よしよし、いい子だ、いい子だ」
お日様の匂いと薬草の匂い、それから優しいお婆さんの匂いに気持ちが落ち着いていく。
「えぅ」
「おお、いい子だ」
抱きながら頬とつんつんと突くお婆さんの指にぱくりと食いつく。働き者だったのだろうお婆さんの指は太く短い。
「おお、元気じゃの。おや、この子は竜人の子かい?」
お婆さんが不思議そうに二人を見上げる。カイルさんとスヴェンさんは互いを見詰め、一緒に首を傾げる。なんか、可愛いな。
「分からん。捨て子で腹が減ってそうだったから乳を探して、与えたんだが飲まねえんだ」
「竜人ですか?こんな所で?」
「この子は竜人の子で間違いないわい。婆の指から少しだけ魔力を吸ったわい」
ええ、はい、吸えちゃいました。薄かったけど飲めた。なんか不思議。カイルさんとスヴェンさんは戸惑ってるけど私も戸惑ってるよ。
「魔力を吸った?」
「そうじゃ、人の子と違って竜人の子は魔力を栄養にするんじゃ。良かったの早めに分かって、このままこの子が竜人と分からんで乳を与え続ければ、栄養にならずに衰弱して死ぬ所じゃったぞい」
転生して早々にまた死ぬのは嫌だよ。危なかった。ところでお腹すいたので誰か吸わせてくれんかね?
「では私が」
カイルさんが私に指を差し出すけれどお婆さんが止める。
「この子にも味の好みはあろうて、婆の魔力はあまり口に合わなんだか、直ぐに口から出したわい。この分だと魔力が高い方が良いかもしれんのう」
お婆さんにゆるゆると揺られる私をじっと見詰めるカイルさんとスヴェンさん。何か考えているようだけどなんだろう。
「わかりました。お婆さんありがとうございました」
「あんがとよ、婆さん」
「なんのなんの、また抱かせておくれ」
礼儀正しく腰を折るカイルさんとニカッと笑って手をあげるスヴェンさん。お婆さんから私を受け取ったスヴェンさんとカイルさんはそのまま目的地があるのか迷うことなく歩き続けた。
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