7 / 100
第一章ヒューマニ王国編
この子どこの子(sideスヴェン)
しおりを挟む
俺の名前はスヴェン。両親は平民であり、商売を生業とする商人だった。このまま行けば俺は商人になっていただろうが、両親は他国へと品物の買付けの為に旅立ち、その先で強盗にあい、帰らぬ人となった。
俺は両親と死に別れ、親戚に引き取られる事もなく孤児院に預けられた。そこで出会ったのは女と見紛うほどの美貌のカイルだった。
最初は女だと思っていたが、色々あって男だとわかった。色々あったんだ。
カイルは繊細で人をあまり信用しない警戒心の強い奴だった。時たま顔に似合わずに豪快な行動を起こして孤児院の職員に怒られてた。大体それに俺も巻き込まれていた。いい迷惑だったよ。
数年そんな風にカイルと共に過ごすうちに息が合い、心安い関係となった。職員に悪戯したり、新入りに色々と気を配ったりと楽しい日々だった。
だが、それは永遠に続くわけもなく俺とカイルは年齢の都合上、孤児院を去る事になった。いざ、去るとなると働き口を探さなくてはならなくなった。両親や後ろ楯のいない俺達が行き着く先はスラムか強盗や盗賊かと考えた俺だったが、カイルは違った。
カイルは驚く事に騎士に応募すると言い出したのだ。しかもちゃっかりと応募した後だった。更に俺に何の説明もなく俺の分も申請していた。事後報告過ぎんだろ。
試験は体力テストが主だった。体力は孤児院職員とおっかけっこをしていたので自信はあった。
筆記もあったが多少の覚えもあったのでギリギリセーフだった。因みにカイルは頭も良かった。
晴れて試験に合格し、日々訓練に明け暮れているとカイルに不穏な空気が絡み付きだした。
男所帯に女と見紛う程の美貌のカイルを先輩騎士達が目をつけたのだ。その結果、カイルは見事に人間不振、潔癖、常に不機嫌がセットされた。それがまた人を惹き付けるから本人にしてみればたまったものではない。騎士団に入ってからカイルの笑顔を見た覚えがない。
騎士団ではその人を寄せ付けない態度と容姿からカイルを『絶対零度の女神』と言われている。ついに女神とか言い出したよ。
今日も変わらず、カイルと共に朝の訓練をしていると精霊に出会い、童心に戻ったように追っかけた。ちょっと楽しかった。
近年稀に見るたくさんの精霊を見ているとカイルに呼ばれたので早足で合流する。
カイルに促されて見た先には赤ん坊がいた。それもカイル以上の美貌のだ。王族は美人が多く、最近生まれた王女もなかなかに整った容姿の持ち主だったが、これは絶世というか傾国の勢いだろ。
持ち上げるとふにゃふにゃと頼りなかったが、そこは孤児院で培った技量でカバーした。孤児院でもここまで生まれたての赤ん坊が来る事はなかった。
キョトンとした赤ん坊のあまりの愛らしさに珍しく微笑むカイル、俺も思わず頬が緩む。
いつになく上機嫌なカイルが俺から赤ん坊を引ったくった。酷くないか?
ちょっと拗ねつつ、赤ん坊が入っていたバスケットが目に写ったので親の手懸かりなどがないか確める。すると変わった玉が出てきた。赤く透明で模様がついている。なんだこれ?
取り敢えず、ここは魔獣も出る区域なのだからと移動する事にした。いつの間にか赤ん坊はカイルの腕の中で安心しきったように眠っていた。
俺は両親と死に別れ、親戚に引き取られる事もなく孤児院に預けられた。そこで出会ったのは女と見紛うほどの美貌のカイルだった。
最初は女だと思っていたが、色々あって男だとわかった。色々あったんだ。
カイルは繊細で人をあまり信用しない警戒心の強い奴だった。時たま顔に似合わずに豪快な行動を起こして孤児院の職員に怒られてた。大体それに俺も巻き込まれていた。いい迷惑だったよ。
数年そんな風にカイルと共に過ごすうちに息が合い、心安い関係となった。職員に悪戯したり、新入りに色々と気を配ったりと楽しい日々だった。
だが、それは永遠に続くわけもなく俺とカイルは年齢の都合上、孤児院を去る事になった。いざ、去るとなると働き口を探さなくてはならなくなった。両親や後ろ楯のいない俺達が行き着く先はスラムか強盗や盗賊かと考えた俺だったが、カイルは違った。
カイルは驚く事に騎士に応募すると言い出したのだ。しかもちゃっかりと応募した後だった。更に俺に何の説明もなく俺の分も申請していた。事後報告過ぎんだろ。
試験は体力テストが主だった。体力は孤児院職員とおっかけっこをしていたので自信はあった。
筆記もあったが多少の覚えもあったのでギリギリセーフだった。因みにカイルは頭も良かった。
晴れて試験に合格し、日々訓練に明け暮れているとカイルに不穏な空気が絡み付きだした。
男所帯に女と見紛う程の美貌のカイルを先輩騎士達が目をつけたのだ。その結果、カイルは見事に人間不振、潔癖、常に不機嫌がセットされた。それがまた人を惹き付けるから本人にしてみればたまったものではない。騎士団に入ってからカイルの笑顔を見た覚えがない。
騎士団ではその人を寄せ付けない態度と容姿からカイルを『絶対零度の女神』と言われている。ついに女神とか言い出したよ。
今日も変わらず、カイルと共に朝の訓練をしていると精霊に出会い、童心に戻ったように追っかけた。ちょっと楽しかった。
近年稀に見るたくさんの精霊を見ているとカイルに呼ばれたので早足で合流する。
カイルに促されて見た先には赤ん坊がいた。それもカイル以上の美貌のだ。王族は美人が多く、最近生まれた王女もなかなかに整った容姿の持ち主だったが、これは絶世というか傾国の勢いだろ。
持ち上げるとふにゃふにゃと頼りなかったが、そこは孤児院で培った技量でカバーした。孤児院でもここまで生まれたての赤ん坊が来る事はなかった。
キョトンとした赤ん坊のあまりの愛らしさに珍しく微笑むカイル、俺も思わず頬が緩む。
いつになく上機嫌なカイルが俺から赤ん坊を引ったくった。酷くないか?
ちょっと拗ねつつ、赤ん坊が入っていたバスケットが目に写ったので親の手懸かりなどがないか確める。すると変わった玉が出てきた。赤く透明で模様がついている。なんだこれ?
取り敢えず、ここは魔獣も出る区域なのだからと移動する事にした。いつの間にか赤ん坊はカイルの腕の中で安心しきったように眠っていた。
70
お気に入りに追加
448
あなたにおすすめの小説
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
水しか操れない無能と言われて虐げられてきた令嬢に転生していたようです。ところで皆さん。人体の殆どが水分から出来ているって知ってました?
ラララキヲ
ファンタジー
わたくしは出来損ない。
誰もが5属性の魔力を持って生まれてくるこの世界で、水の魔力だけしか持っていなかった欠陥品。
それでも、そんなわたくしでも侯爵家の血と伯爵家の血を引いている『血だけは価値のある女』。
水の魔力しかないわたくしは皆から無能と呼ばれた。平民さえもわたくしの事を馬鹿にする。
そんなわたくしでも期待されている事がある。
それは『子を生むこと』。
血は良いのだから次はまともな者が生まれてくるだろう、と期待されている。わたくしにはそれしか価値がないから……
政略結婚で決められた婚約者。
そんな婚約者と親しくする御令嬢。二人が愛し合っているのならわたくしはむしろ邪魔だと思い、わたくしは父に相談した。
婚約者の為にもわたくしが身を引くべきではないかと……
しかし……──
そんなわたくしはある日突然……本当に突然、前世の記憶を思い出した。
前世の記憶、前世の知識……
わたくしの頭は霧が晴れたかのように世界が突然広がった……
水魔法しか使えない出来損ない……
でも水は使える……
水……水分……液体…………
あら? なんだかなんでもできる気がするわ……?
そしてわたくしは、前世の雑な知識でわたくしを虐げた人たちに仕返しを始める……──
【※女性蔑視な発言が多々出てきますので嫌な方は注意して下さい】
【※知識の無い者がフワッとした知識で書いてますので『これは違う!』が許せない人は読まない方が良いです】
【※ファンタジーに現実を引き合いに出してあれこれ考えてしまう人にも合わないと思います】
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるよ!
◇なろうにも上げてます。
失われた力を身に宿す元聖女は、それでも気楽に過ごしたい~いえ、Sランク冒険者とかは結構です!~
紅月シン
ファンタジー
聖女として異世界に召喚された狭霧聖菜は、聖女としての勤めを果たし終え、満ち足りた中でその生涯を終えようとしていた。
いや嘘だ。
本当は不満でいっぱいだった。
食事と入浴と睡眠を除いた全ての時間で人を癒し続けなくちゃならないとかどんなブラックだと思っていた。
だがそんな不満を漏らすことなく死に至り、そのことを神が不憫にでも思ったのか、聖菜は辺境伯家の末娘セーナとして二度目の人生を送ることになった。
しかし次こそは気楽に生きたいと願ったはずなのに、ある日セーナは前世の記憶と共にその身には聖女としての癒しの力が流れていることを知ってしまう。
そしてその時点で、セーナの人生は決定付けられた。
二度とあんな目はご免だと、気楽に生きるため、家を出て冒険者になることを決意したのだ。
だが彼女は知らなかった。
三百年の時が過ぎた現代では、既に癒しの力というものは失われてしまっていたということを。
知らぬままに力をばら撒く少女は、その願いとは裏腹に、様々な騒動を引き起こし、解決していくことになるのであった。
※完結しました。
※小説家になろう様にも投稿しています
城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?
甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。
友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。
マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に……
そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり……
武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語
聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!
さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ
祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き!
も……もう嫌だぁ!
半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける!
時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ!
大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。
色んなキャラ出しまくりぃ!
カクヨムでも掲載チュッ
⚠︎この物語は全てフィクションです。
⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
妹が聖女の再来と呼ばれているようです
田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。
「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」
どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。
それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。
戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。
更新は不定期です。
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる