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第16話 嘘の発覚①

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「ミシェールさん。助かった」
「ありがとうございます!」
「さすがの強さだ」
「どうなることかと思ったぜ、ミシェールさん」

地上に戻ると、冒険者たちが口々にミシェールにお礼を言っている。

「遅くなってすまなかったな。しかし、スタンピードは終わっていない。エルダーウルフもオークキングもボスじゃなかった」

通常のスタンピードならボスになってもおかしくないモンスターだが、彼らは証を持っていなかった。

スタンピードという現象は各地のダンジョンでたまに起こっている。
その時ボスになるモンスターに統一性はない。
あるとしたらそれは悉く下層で出現するモンスターであると言うこと。

それから、証を持っていることだ。

証というのは不思議な黒い結晶だ。
悪意の結晶と呼ぶ地域もあるらしい。

なぜかスタンピードボスは必ずこれをドロップする。
このアイテムをエルダーウルフもオークキングも落とさなかった。
だからスタンピードはまだ終わっていない。

つまりこれからまだモンスターが出てくると言うことだ。
そしてそれはオークキングやエルダーウルフよりも強いと言うことだ。
スタンピードのボスはスタンピードを起こしたモンスターのことで、その他のモンスターは全てボスの統率下にあるか、ボスを恐れて逃げたモンスターだからだ。

その事実を改めて認識した冒険者たちは黙り込む。

「それにしても、ジキルさんとクレアさんはどこに?」
ふと、冒険者の一人が呟く。

地上に出ると、逃げた一部の冒険者は残っていて、再合流した。
逃走したことに思うことはあるが、戦力になるのだから文句を言っている暇はない。
逃げた者たちもバツは悪いだろうが、駆け込んできたミシェールと私の姿を見て残っていたのだし、なんなら一部は本当にダンジョンに引き返して戦ってくれた。


「ジキルだと?そう言えば、あいつ……あんなあからさまな罠を踏み抜いてラクスを深層に落としたくせに、のうのうとここで冒険者をやっていたのか?」
「えっ?」
そう言えばその話の途中だった。ミシェールに皆の前で話してと言ったままだったわね。でも、大丈夫かな?そんな時間はある?

「どういうことですか?ジキルさんは罠にかかったのはラクスだと……」
「はぁ?そんなわけがあるか!?」
「えぇ?」
そして案の定、冒険者たちが驚く。
もともと寡黙なミシェールが大声を出したのに驚いたのかもしれないけど。


「罠解除はシーフの役割だ。だから先行して罠を探知する。その後でパーティーの盾である私、そしてリーダーで司令塔のラクス、最後に少し離れてクレア。それが私たちの陣形だ。それなのにラクスが罠を踏み抜くとかありえないだろ!」
「言われてみれば……」
「どうしてラクスが罠を踏んだんだ?」
「だから踏んでない!踏んだのはジキルだ!」
「ジキルさんが帰還して、ラクスが穴に落ちたんですよね?それはラクスが罠にかかったからでは?」
「馬鹿を言うな!ラクスはチェンジという魔法でジキルを庇って落ちただけだ!」
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