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第3章 ラオベルグラッド王国の復興
第46話 ??ざまぁ⑳
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「って、おい、まじかよ?」
オォ……オォ?
赤いデーモンさんも観衆の方々も戸惑っているようですが、すみません。
期待していたのは精霊術師としての派手な魔法だったのでしょうが、ここは……ここだけは私自身の力でやらないと、きっとライエル様の怒りや恨みは晴れないのです。
だから……
「すみませんでした、ライエル様……」
「ウォ???」
私はただただ全力で体の隅々から集めた魔力を全て無属性魔力に変換し、球体の形をとらせてライエル様に叩きつけました。
その無属性魔力はライエル様にまとわりついていた無属性魔力を払い飛ばし、ライエル様自身をのみ込んで闘技場に叩きつけました。
そして闘技場自体を抉って地中深くに沈み込み、消えていきました。
「愛の記憶……」
いえ、違います。
これは決してメロディアレーゼ様の名付けたけったいな名前の魔法とは違います。
ただの全力での魔力放出です。
ライエル様は無事?というか、魂は残っていますでしょうか?
「うむ。すさまじい魔法だったな。まさか人間がそこまでの魔力を保有し、行使するとは。驚いたぞ。あはは」
なぜ神様がちょっと遠い目をされているのでしょうか?
「これで勝利でしょうか?」
一応、聞いてみます。
「あっ、うむ、そうだの。審判よ、続けよ」
なぜか慌てた風で神様が促します。審判さんなんていましたでしょうか?
「すっ、すまねぇ。予想外の超絶な攻撃にびびって声をとめちまったぜぇ」
あっ、赤いデーモンさんが審判だったんですね。てっきり、実況解説か何かだと思っていました。
「これはもう確認もできねぇけど、エメリアの勝ちだろ。どこまで行ってんだこの穴」
そんな赤いデーモンさんが、私の魔法があけた穴を覗き込みながら私の勝利を宣言しました。
ウォオォォオオオォォオオオオオオオ!!!!
歓声があがり、観衆の方々が私を讃えてくれます。
そこへ……
えっ?手?
穴の端から手が出てきて、地面を掴みました。
もしかして登ってきたのでしょうか?
「エメリア……」
そして、穴の中から這い上がってきました。
ライエル様が……。
「ライエル様……」
私は思わず彼の方に足を踏み出しました。
『エメリア、危険だ』
「いいのです。シャドー様」
とっさにシャドー様が間に入って私を守ってくれようとしますが、私はお断りして、ライエル様に歩み寄ります。
もう、今のライエル様に強い怒りや恨みのようなものを感じなかったのです。
なにか憑き物が落ちたかのような、醒めた雰囲気だったのです。
「エメリア様~♡……ぐはぁ」
そしてシルフィード様に飛ばしてもらって近づいてきたメロディアレーゼ様の援助も丁重にお断りして、ライエル様に手を貸しました。
「まだ、僕に手を貸してくれるのだな……僕はずっとお前を恨んでいたのに……」
その手を取りながらも、視線は地面に落としたままで、ライエル様はぼそぼそと喋られました。
「私たちはどこかで間違えたのですわ。そして、それを正すにはちょっと、お互いの力が大きすぎたのです」
もしライエル様が勇者ではなく、王子でもなかったら、私たちの物語はただの浮気男とサレ女で終わっていたでしょう。
世界にそれこそ無数にある話です。
もちろんサレたら許せませんが。
その逆もまた無数に存在する話です。
そこに王子だとか勇者だとかがくっついてしまった。
そして私の方にも、貴族だとか、精霊様達がついていました。
「もちろんですわ、エメリア様。わたくしメロディアレーゼは例え地の果て、世界の果て、次元の果てでもついて参りますわ♡」
それによって、こじれたままになった想い、普通なら悔しいの一言で終わって次に向かう想いが残ってしまったのです。
上手く解消する道を失ったまま。
そんなことを私はライエル様にお話ししました。
きっとこんな流れは誰も望んでいませんでした。
にもかかわらず、ただただこの道を私もライエル様も歩んでしまいました。
いえ、世界の全ての人たちが、この道を歩んだのです。
全てを失って身も心も裸になるこの冥府……生きとし生けるもの全ての終着点に辿り着いてなお、強い想いを持って戦って、ようやく穢れが払われるまで、どうあがいても踏み外せなかった道を歩んできてしまったのです。
それはきっと残念なことです。
目の前でただ肩を落とし、呆然としながらも、穢れが払われ、少しだけ生気を帯びた少年のままのライエル様にとっては、とても辛い道のりで、とても残念なことだったと思います。
でも、私は彼だけの責任だとは思いません。
なにせ、彼によって誰かの命が奪われたことはありませんから。
失敗の余波で亡くなった方はそれでも怒るかもしれませんが、その想いは私のものではありませんし、あとはライエル様がどう向き合うかだけです。
ふぅ……黒い影のモンスターによる被害をすべて防げていて良かったですわ。
ケガをした人間はいても、殺された人間はいませんので、せいぜい復興計画が遅れただけに留められたことだけは褒めてくださいね。
「エメリア……きみは……」
「ようやく昔の呼び方に戻してくださいましたわね、ライエル様」
「あぁ……なにもかも無くして、自分の命さえも失って、ようやくだがな……」
オォ……オォ?
赤いデーモンさんも観衆の方々も戸惑っているようですが、すみません。
期待していたのは精霊術師としての派手な魔法だったのでしょうが、ここは……ここだけは私自身の力でやらないと、きっとライエル様の怒りや恨みは晴れないのです。
だから……
「すみませんでした、ライエル様……」
「ウォ???」
私はただただ全力で体の隅々から集めた魔力を全て無属性魔力に変換し、球体の形をとらせてライエル様に叩きつけました。
その無属性魔力はライエル様にまとわりついていた無属性魔力を払い飛ばし、ライエル様自身をのみ込んで闘技場に叩きつけました。
そして闘技場自体を抉って地中深くに沈み込み、消えていきました。
「愛の記憶……」
いえ、違います。
これは決してメロディアレーゼ様の名付けたけったいな名前の魔法とは違います。
ただの全力での魔力放出です。
ライエル様は無事?というか、魂は残っていますでしょうか?
「うむ。すさまじい魔法だったな。まさか人間がそこまでの魔力を保有し、行使するとは。驚いたぞ。あはは」
なぜ神様がちょっと遠い目をされているのでしょうか?
「これで勝利でしょうか?」
一応、聞いてみます。
「あっ、うむ、そうだの。審判よ、続けよ」
なぜか慌てた風で神様が促します。審判さんなんていましたでしょうか?
「すっ、すまねぇ。予想外の超絶な攻撃にびびって声をとめちまったぜぇ」
あっ、赤いデーモンさんが審判だったんですね。てっきり、実況解説か何かだと思っていました。
「これはもう確認もできねぇけど、エメリアの勝ちだろ。どこまで行ってんだこの穴」
そんな赤いデーモンさんが、私の魔法があけた穴を覗き込みながら私の勝利を宣言しました。
ウォオォォオオオォォオオオオオオオ!!!!
歓声があがり、観衆の方々が私を讃えてくれます。
そこへ……
えっ?手?
穴の端から手が出てきて、地面を掴みました。
もしかして登ってきたのでしょうか?
「エメリア……」
そして、穴の中から這い上がってきました。
ライエル様が……。
「ライエル様……」
私は思わず彼の方に足を踏み出しました。
『エメリア、危険だ』
「いいのです。シャドー様」
とっさにシャドー様が間に入って私を守ってくれようとしますが、私はお断りして、ライエル様に歩み寄ります。
もう、今のライエル様に強い怒りや恨みのようなものを感じなかったのです。
なにか憑き物が落ちたかのような、醒めた雰囲気だったのです。
「エメリア様~♡……ぐはぁ」
そしてシルフィード様に飛ばしてもらって近づいてきたメロディアレーゼ様の援助も丁重にお断りして、ライエル様に手を貸しました。
「まだ、僕に手を貸してくれるのだな……僕はずっとお前を恨んでいたのに……」
その手を取りながらも、視線は地面に落としたままで、ライエル様はぼそぼそと喋られました。
「私たちはどこかで間違えたのですわ。そして、それを正すにはちょっと、お互いの力が大きすぎたのです」
もしライエル様が勇者ではなく、王子でもなかったら、私たちの物語はただの浮気男とサレ女で終わっていたでしょう。
世界にそれこそ無数にある話です。
もちろんサレたら許せませんが。
その逆もまた無数に存在する話です。
そこに王子だとか勇者だとかがくっついてしまった。
そして私の方にも、貴族だとか、精霊様達がついていました。
「もちろんですわ、エメリア様。わたくしメロディアレーゼは例え地の果て、世界の果て、次元の果てでもついて参りますわ♡」
それによって、こじれたままになった想い、普通なら悔しいの一言で終わって次に向かう想いが残ってしまったのです。
上手く解消する道を失ったまま。
そんなことを私はライエル様にお話ししました。
きっとこんな流れは誰も望んでいませんでした。
にもかかわらず、ただただこの道を私もライエル様も歩んでしまいました。
いえ、世界の全ての人たちが、この道を歩んだのです。
全てを失って身も心も裸になるこの冥府……生きとし生けるもの全ての終着点に辿り着いてなお、強い想いを持って戦って、ようやく穢れが払われるまで、どうあがいても踏み外せなかった道を歩んできてしまったのです。
それはきっと残念なことです。
目の前でただ肩を落とし、呆然としながらも、穢れが払われ、少しだけ生気を帯びた少年のままのライエル様にとっては、とても辛い道のりで、とても残念なことだったと思います。
でも、私は彼だけの責任だとは思いません。
なにせ、彼によって誰かの命が奪われたことはありませんから。
失敗の余波で亡くなった方はそれでも怒るかもしれませんが、その想いは私のものではありませんし、あとはライエル様がどう向き合うかだけです。
ふぅ……黒い影のモンスターによる被害をすべて防げていて良かったですわ。
ケガをした人間はいても、殺された人間はいませんので、せいぜい復興計画が遅れただけに留められたことだけは褒めてくださいね。
「エメリア……きみは……」
「ようやく昔の呼び方に戻してくださいましたわね、ライエル様」
「あぁ……なにもかも無くして、自分の命さえも失って、ようやくだがな……」
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