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第3章 ラオベルグラッド王国の復興

第43話 ??ざまぁ⑱愛の記憶

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「あぁあぁぁああああ、いたいぃいぃぃいいいいい。いたいぃいぃぃいいいいい」

 シャドー様に案内頂いて入った冥界の入り口……そこから少し歩いたところに、なにかが倒れていて痛い痛いと嘆いていました。
 なんなのでしょうか、これは……。

 あまりにも痛々しい姿に私は絶句してしまいました。

 半身はなにかに潰された状態ですし、皮膚を剥がれ風が当たるだけで痛そうです。
 腕はおかしな方に曲がり、片足はありません。
 目は血走って見開いていますが、どうして生きているのでしょうか?

 ここは冥界なので、もしかしたらこの方は死んだ後にここにやってきて、何か罰を与えられているのでしょうか?

 もう魔力もほとんど残っていないようです。


 いけませんね。冥界に入ってさっそく度肝を抜かれてしまいましたが、こんなところで立ち止まっているわけにはいきません。
 私たちはこの怪物を刺激しないようにこっそりと抜けて冥界の奥を目指しました。

『ん?あれが元凶のような気がするのだが、よいのか?』

 シャドー様がなにか仰っていますが、今はいいのです。
 あれが何なのか、どうしてああなっているのか、なぜあそこで倒れているのか?
 そういったことを少しは調べないといけないように思います。

 あのような姿で倒れて痛がっているものに一方的に攻撃するのが気が引けたというのもあります。

「じゃぁ、私が悪さできないようにしておきますわ!"愛の記憶"!」

 メロディアレーゼ様は灰色の魔力の巨大な塊をあの怪物に投げつけます。
 もう3度目なのですが、どのあたりが"愛の記憶”なのでしょうか?

「ぎゃ~~~~~、いたいぃいぃぃいいいいい、いたいぃいぃぃいいいいい!!!!!」

 すみません。可哀そすぎるでしょう、というクレームを大量に頂きそうです。
 でも、後ろから襲われてはたまりませんので、すみませんがそのまま倒れていてください。


『容赦ないな……』

 私もそう思います。



 そうして走ってくると、忽然と大きな建物が目の前に現れました。

『これは冥府の宮殿だ。ここに冥界の主がいる。普通はこんな場所には出てこないのだが、何かあったのだろうか?』

 そうなのですね。
 さすがシャドー様、よくご存じですわ。

「あぁ~エメリア様~はむはむ」

 どこぞの色バカ……失礼しました、私ったら精霊様になんということを。
 メロディアレーゼ様とはえらい違いですとか思っていません。本当です。

『よく来た。中に入るがいい!!!』

 すると、とても大きな雷鳴のような声が響き、冥府の宮殿の扉が開きました。
 まさかこれは罠?

「あれ?行かないのですか、エメリア様~?♡」
 
 シルフィード様お願いします。

「えぇ~なんで~~~???」

 とりあえずシルフィード様にお願いして、冥府の宮殿の扉の中にメロディアレーゼ様を投入してみます。







 特に何も内容でしたので、私たちも冥府の宮殿に入りました。




「え~ん、エメリア様、怖かったのですわ~♡」

 やめてください。
 きっと偉い方の前だというのに抱き着いて来ないで……そんなところを触らないで!

「いたっ、ごめんなさい」

『締まらぬな……』

「全てメロディアレーゼ様のせいです」

 そんなやり取りをしながら冥府の宮殿に入り、廊下をあるいていくと、何か大きなものが……
 
「ふはははははは。よく来たな。そしてこの場でそこまで平静を保つとはさすがだな」

 巨大なマントを羽織った巨大な……

「神様ですか?」
 
 まずいですわね。これはさすがに戦っても勝てませんわ。
 精霊ではなく、神……魔神?……そんな類の方ですわね。

「我の威容を見て最初に神と呼ぶとは、なかなか面白い娘だな」
 よかったです。ホッとしました。
 私を見下ろしながら少し微笑まれる様子は、明らかに怒りなどは抱えていらっしゃらないようです。

「失礼をお許しください。私たちは少し困ったことがあり、その対処のためにこちらに伺ったのです」
 私は薄暗い闇に覆われた荘厳な部屋の中で完璧なカーテシーを行い、目の前の神に敬意を表しながら釈明の言葉を放ちました。

「かまわぬ。むしろあれが迷惑をかけたのであろう」
 あれ、とは間違いなく冥界の入り口のあたりで転がっていたあの怪物のことでしょう。

「あれは……」
 ただ、神様はあれと言われていますが、私が粗雑に扱ってよい存在かどうかはわからず、少し言い淀んでしまいました。
 説明と言葉遣いが難しいですわ……。

「かまわぬ。特に敬意を表するべきものではない。あれは人間の死にぞこないだ」
「そうだったのですか……あれが?」
 まさか人間とは……。

 いったいどのような罪を犯したらあのような状態にされるような罰を受けるのでしょうか?

 地獄の苦しみ。

 想像もできませんわ。

「まさかそなたがあのようなことになることはない。あれは自らの欲望のままに世界に多大なる不幸を振りまいたのだ。そして通常、冥界ではそういった穢れを払うべく、相応の期間を地獄の中で過ごさせる。にもかかわらず、あれは這い出して来おったのだ。穢れをまとったまま。それゆえ、冥界のものたちも手を出しあぐねてな。それであそこでのたうち回っておる」
 困ったような表情で淡々と語られます。

 なにかとてつもない恨みでも……いえ、ちょっと待ってくださいね。

 あの怪物が放ったモンスターが私の名前を呼んだということは?

 え?
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