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第3章 ラオベルグラッド王国の復興
第38話 無属性
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side 王妃エメリア
「レオ!レオ!!!」
私はとっさにレオの肩に近付き、声を掛けますが反応がありません。
「大いなる癒しを……」
回復魔法を使っても傷が治りません。
「王妃様、申し訳ございません。陛下は我々を押し逃がし、御身は光の魔法を使いながら影に挑まれたのです。魔法が効きづらい敵でして、なんとか防戦一方の中で退路を確保して逃亡しましたが、その際に傷を負われまして、道中、回復魔法を使っても治すことができずにここまで走ってきました」
申し訳なさそうな声音で説明してくれたのは今回の部隊の隊長を務めた騎士です。
彼の顔にも疲労の後が色濃く出ており、必死にここまでレオを連れて来てくれたことが伺えた。
「王妃様!治療術士と神官たちを呼びました!」
そこへバラック大臣がやってきて、連れて来た者たちに回復魔法をかけさせますが、治りません……。
「ヴェルディア様……」
「ここにおるでの。これは難儀じゃの。まずは精霊術による回復じゃ」
ヴェルディア様は淡い緑色の魔力をレオに注ぎ込みますが……治ってはいないようです。
これはまずいですね……。
どうすれば?
『力が弾かれていますね。魔力や精霊術のいずれも……』
「木の精霊様……そのようです。傷口のまわりに黒い魔力が取り憑いていて、魔法や精霊術が効くのを妨げているようです」
この黒い魔力が黒い影のモンスターの残滓ということでしょうか?
魔法が効きづらい敵ということだったのですが、これがその理由でしょうか?
『取り急ぎ私が傷口を塞ぎます』
「ありがとうございます」
ラオベルグラッドの守り神である木の精霊様は、なんと物理的に顕現した体でレオの傷を塞ぎました。
魔力を使っていないので黒い魔力は特に反応しません。
血は無事に止まりました。
「魔力を散らしてしまう特性というと、無属性でしょうか?」
「そのようだの。影じゃから闇属性に見えて、無属性だったのじゃろう。それなら魔法が効きづらいことは理解できる」
無属性は、無を作り出す属性です。
全てのものを無に帰してしまいます。
その対処は……
「ごきげんよう、エメリア様。お困りのようですわね」
どうしましょうか。
なかなか無属性への対抗手段は少ないのです。
なぜなら魔法も精霊術も無効化してしまうというその特性のせいです。
対抗するには同じく無属性の魔法や精霊術で攻撃するしかないのです。
私が仲良くしていた中で無属性の精霊様は……。
「ちょっと、エメリア様。この私が手を貸してあげてもよろしいのですわよ?」
いないですね。
無属性の精霊というのは相当レアなのです。
どれくらいレアかというと、1時代に1体いるかどうか……です。
「くっ、せっかく来てあげたというのにこの仕打ち。あぁ、なんて美味なの~♡」
「は?」
『は?』
「「「「は?」」」」
今の無属性の精霊は、あまり仲が良くない相手で、はっきり言って苦手なので、なにか他に方法はないでしょうか?
「待っていてください、レオ。私がその黒い影のモンスターを倒してきてあげますからね」
「そうでしょうとも。このわたくしの助力があれば、黒き影のようなモンスターなどといういかがわしい相手などイチコロですわ!」
私はレオの傷口に手を当て、レオに誓います。
「ではレオ、行って参りますわ。必ずやこのエメリアが1人でモンスターを倒してまいります」
「ちょっ、待ってください王妃様。王妃様まで怪我をなされたら……」
「どう考えても聞こえてる距離で、聞こえてるに違いない間も空いていて、なんならわたくしのことをさっきチラッと見たにもかかわらず、冷たい無視……そそるわ~♡」
どうやら周囲の人たちもおかしさに気付いたようですね。
私はこの精霊様が少し苦手なのですよ。
まぁ、なんか一人で頭の中で盛り上がってくねくねしてるこの精霊様は置いて行きましょう。
「まっ、待ってくださいまし、エメリア様!ここはぜひわたくしについて来いよ、って言うところですわ!それとも縛り付けて痛めつけながら無理やり連れて行くところでしょうか?きゃ~~~~♡」
どうにかしてほしい、これを。
いま、なんとかレオの命を木の精霊様につないでもらっている間に、善き妻である私エメリアが華麗に黒い影のモンスターを倒してレオを救ってあげるシーンでしょう?
なぜド変態の相手をしなければならないのですか?
「うるさいですわ、メロディアレーゼ様。どうか千年前にお戻りくださいませ」
「生きてないわ!そんな昔にわたくしは生きておりませんわ!って、そんな強引に首元を引っ張るなんて、エメリア様ってばだ・い・た・ん♡」
いままでのシリアスを返せ!
だからこの精霊様に関わるのは嫌なのです。
これは世界で唯一の無属性の精霊・メロディアレーゼ様です。
彼女には大精霊様方にすら匹敵する力があるのですが、いかんせん性格がこれ……。
百合大好きエセ令嬢で、ちょっとでも何か琴線に引っかかると遥か天空まで昇天していくのでなかなか使えません。
しかも力のコントロールは苦手……誰ですか?いまお前と一緒だなんて暴言を吐かれた方は?
はぁ……でも、今回に限って言えばありがたいので、耳と心を閉ざして一緒に行きましょう。
「レオ!レオ!!!」
私はとっさにレオの肩に近付き、声を掛けますが反応がありません。
「大いなる癒しを……」
回復魔法を使っても傷が治りません。
「王妃様、申し訳ございません。陛下は我々を押し逃がし、御身は光の魔法を使いながら影に挑まれたのです。魔法が効きづらい敵でして、なんとか防戦一方の中で退路を確保して逃亡しましたが、その際に傷を負われまして、道中、回復魔法を使っても治すことができずにここまで走ってきました」
申し訳なさそうな声音で説明してくれたのは今回の部隊の隊長を務めた騎士です。
彼の顔にも疲労の後が色濃く出ており、必死にここまでレオを連れて来てくれたことが伺えた。
「王妃様!治療術士と神官たちを呼びました!」
そこへバラック大臣がやってきて、連れて来た者たちに回復魔法をかけさせますが、治りません……。
「ヴェルディア様……」
「ここにおるでの。これは難儀じゃの。まずは精霊術による回復じゃ」
ヴェルディア様は淡い緑色の魔力をレオに注ぎ込みますが……治ってはいないようです。
これはまずいですね……。
どうすれば?
『力が弾かれていますね。魔力や精霊術のいずれも……』
「木の精霊様……そのようです。傷口のまわりに黒い魔力が取り憑いていて、魔法や精霊術が効くのを妨げているようです」
この黒い魔力が黒い影のモンスターの残滓ということでしょうか?
魔法が効きづらい敵ということだったのですが、これがその理由でしょうか?
『取り急ぎ私が傷口を塞ぎます』
「ありがとうございます」
ラオベルグラッドの守り神である木の精霊様は、なんと物理的に顕現した体でレオの傷を塞ぎました。
魔力を使っていないので黒い魔力は特に反応しません。
血は無事に止まりました。
「魔力を散らしてしまう特性というと、無属性でしょうか?」
「そのようだの。影じゃから闇属性に見えて、無属性だったのじゃろう。それなら魔法が効きづらいことは理解できる」
無属性は、無を作り出す属性です。
全てのものを無に帰してしまいます。
その対処は……
「ごきげんよう、エメリア様。お困りのようですわね」
どうしましょうか。
なかなか無属性への対抗手段は少ないのです。
なぜなら魔法も精霊術も無効化してしまうというその特性のせいです。
対抗するには同じく無属性の魔法や精霊術で攻撃するしかないのです。
私が仲良くしていた中で無属性の精霊様は……。
「ちょっと、エメリア様。この私が手を貸してあげてもよろしいのですわよ?」
いないですね。
無属性の精霊というのは相当レアなのです。
どれくらいレアかというと、1時代に1体いるかどうか……です。
「くっ、せっかく来てあげたというのにこの仕打ち。あぁ、なんて美味なの~♡」
「は?」
『は?』
「「「「は?」」」」
今の無属性の精霊は、あまり仲が良くない相手で、はっきり言って苦手なので、なにか他に方法はないでしょうか?
「待っていてください、レオ。私がその黒い影のモンスターを倒してきてあげますからね」
「そうでしょうとも。このわたくしの助力があれば、黒き影のようなモンスターなどといういかがわしい相手などイチコロですわ!」
私はレオの傷口に手を当て、レオに誓います。
「ではレオ、行って参りますわ。必ずやこのエメリアが1人でモンスターを倒してまいります」
「ちょっ、待ってください王妃様。王妃様まで怪我をなされたら……」
「どう考えても聞こえてる距離で、聞こえてるに違いない間も空いていて、なんならわたくしのことをさっきチラッと見たにもかかわらず、冷たい無視……そそるわ~♡」
どうやら周囲の人たちもおかしさに気付いたようですね。
私はこの精霊様が少し苦手なのですよ。
まぁ、なんか一人で頭の中で盛り上がってくねくねしてるこの精霊様は置いて行きましょう。
「まっ、待ってくださいまし、エメリア様!ここはぜひわたくしについて来いよ、って言うところですわ!それとも縛り付けて痛めつけながら無理やり連れて行くところでしょうか?きゃ~~~~♡」
どうにかしてほしい、これを。
いま、なんとかレオの命を木の精霊様につないでもらっている間に、善き妻である私エメリアが華麗に黒い影のモンスターを倒してレオを救ってあげるシーンでしょう?
なぜド変態の相手をしなければならないのですか?
「うるさいですわ、メロディアレーゼ様。どうか千年前にお戻りくださいませ」
「生きてないわ!そんな昔にわたくしは生きておりませんわ!って、そんな強引に首元を引っ張るなんて、エメリア様ってばだ・い・た・ん♡」
いままでのシリアスを返せ!
だからこの精霊様に関わるのは嫌なのです。
これは世界で唯一の無属性の精霊・メロディアレーゼ様です。
彼女には大精霊様方にすら匹敵する力があるのですが、いかんせん性格がこれ……。
百合大好きエセ令嬢で、ちょっとでも何か琴線に引っかかると遥か天空まで昇天していくのでなかなか使えません。
しかも力のコントロールは苦手……誰ですか?いまお前と一緒だなんて暴言を吐かれた方は?
はぁ……でも、今回に限って言えばありがたいので、耳と心を閉ざして一緒に行きましょう。
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