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第2章 魔王の魔力の残滓を追って
第32話 勇者ざまぁ⑮魔力の残滓
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side 精霊術師エメリア
最後の四天王と魔王の魔力の残滓を追い求めて世界中の精霊に協力してもらって発見した手掛かりを追って北のザグラッド大陸についた私はなぜかライエル王子とスーメリアを発見しました。
えっ?
どういうことでしょうか?
私は見つけた王子たちに質問しましたが、なぜかライエル王子に斬りつけられ、魔法を放たれたのです。
もちろん防ぎましたが……。
そんな攻防の中で、私が連れて来たモルドゥカ様がライエル王子たちを調べているようだったので、しばらく戦闘に付き合いました。
するとモルドゥカ様がよってきて結果を教えてくれます。
「そういうことですか。失礼します、ライエル王子」
「なっ、ぐぅっ……」
私はライエル王子を魔法を使って眠らせました。
これから起こることはきっと王子には耐えがたいことでしょうから。
そうして私はスーメリアを睨みます。
「まさか魔力の残滓があなたに取り憑いていたとは……いつからかは知りませんが、成敗させていただきます……あっ、待ちなさい!」
しかし、スーメリアは私を見ることもなく走って逃げていきました。
なんなのですか?
私はここまで運んできてくれたシルフィード様にお願いしてスーメリアを追いかけました。
当然すぐに追いついたので魔法でスーメリアを押さえつけます。
「〇※?◇△」
スーメリアは何かを呟いていますが、聞き取れませんし……どうやら人の言葉ではないようです。
呟き終えたのか、彼女が口を閉じるとなんと彼女の背中から黒い大きな影が出てきました。
「ようやく観念しましたね、魔王の魔力の残滓……いえ、最後の四天王にして魔族の闇の支配者・ハルガラヴェス!」
その黒い影はこれまで魔族を裏から操り続けてきた卑怯者……そう、大精霊様がたから聞いています。
何か理由があったのかもしれませんが、その行為は結果として世界を戦火に包み、多くの者を不幸にしたのです。私の弟も。
その責任はちゃんととってもらいますよ?
「ぐぶぉ……よくぞここまで追ってきたものだ……貴様はこの我が消し去ってくれよう」
観念したのかハルガラヴェスは私の言葉に応えました。
どう考えても力を失っているように見えるのですが、なにか手があるのでしょうか?
わかりませんが、とりあえず戦えばわかること。
私は光の魔法を使おうと……
「私のエメリアに汚らわしい目を向けるとは許せないな。塵も残さず消し去ってやろう。ホーリーレイ!!!」
「ぐぉあぁぁああああああ!!!!!!」
したのに、光の精霊であるルクシオン様が勝手に発現して勝手に光魔法をぶっ放して勝手に倒してしまいました。
「え~と、ルクシオン様?」
「ふむ、どこも汚れていないな。ふぅ、このハルガラヴェスという魔族は隙を作るとすぐに取り憑いてくるし、取り憑かなくても残滓をまき散らしてくる。もし倒したと思っても残滓が残っていれば再生してくるからやっかいなのだ」
なるほど、特性をご存じだったから嫌な状況になる前に対処したということでしょうか。
「わかりました。納得しました。ありがとうございます」
「うむ」
お礼を伝えると嬉しそうなのは可愛いのですが、事前に教えておいてもらえたら助かりますね。
「そうして倒したと思い込んで残滓を逃すのだの」
「なっ……他にもまき散らしていると?」
得意そうなルクシオン様にモルドゥカ様が少し馬鹿にしたように声を掛けます。
すみません、私もそうだと思いました。
今の話を聞くと、あれだけ一緒にいてライエル様に残滓を植え付けていないとは思えなかったので。
『グルォオオォォオオオオオオ!!!!!』
案の定、ライエル王子を眠らせた方から魔物のような声がします。
つまりそういうことでしょう。
重ね重ね事前に教えておいてもらえたら助かりますね。
戻ってみると、体のまわりに黒い魔力を漂わせたライエル王子……もう顔も体もいたるところに黒い魔力線が走り、血走った目となり、なぜか背中に魔王のように黒い翼を生やしてしまっています。
これはもう、元に戻ることはできないでしょうか……?
『キサマヲ殺ス!絶対二許サン!』
そう言いながらふらふらと状態を揺らしてライエル王子だったものが向かってきます。
どうにかしてライエル王子を助け出すことはできないでしょうか?
精霊たちは無理だと伝えてきます。
それに、お父様から聞いた話によると国王陛下を斬りつけて逃走したということですから、もう助け出しても未来はないでしょうか。
思えば、彼にはずっと振り回されてきました。
自分がやりたいことをやりたい、自分は偉い、自分は凄い、周りは僕の言うことを聞け、些事は全ていいようにやっておけ、というような方でしたから。
うん、ごめんなさい。
私は何かを間違えたのでしょうか?
もしかしたら結婚していたかもしれない相手です。
もしかしたら今も共に戦っていたかもしれない相手……。
私は甘やかしすぎたのでしょうか?
むっ……。
私は襲い掛かってきたライエル様だったものの攻撃を避けます。
いけませんね、自省している場合ではありません。
こうなってしまってはもう、倒すことだけが彼を救う方法のようです。
すでに自我もないようですし、一思いに行きます。
「セイクリッドバースト!×2」
私の聖属性魔法によって、ライエル王子についていたハルガラヴェスが消えていきます。
同時にハルガラヴェスと同化していたライエル王子の精神も……。
やはりダメでしたか……。
聖属性魔法であれば、完全に闇に染まってなければあわよくば生命だけは残らないかと思いましたが……。
すみません、力不足でした。
さようなら、ライエル王子。
最後の四天王と魔王の魔力の残滓を追い求めて世界中の精霊に協力してもらって発見した手掛かりを追って北のザグラッド大陸についた私はなぜかライエル王子とスーメリアを発見しました。
えっ?
どういうことでしょうか?
私は見つけた王子たちに質問しましたが、なぜかライエル王子に斬りつけられ、魔法を放たれたのです。
もちろん防ぎましたが……。
そんな攻防の中で、私が連れて来たモルドゥカ様がライエル王子たちを調べているようだったので、しばらく戦闘に付き合いました。
するとモルドゥカ様がよってきて結果を教えてくれます。
「そういうことですか。失礼します、ライエル王子」
「なっ、ぐぅっ……」
私はライエル王子を魔法を使って眠らせました。
これから起こることはきっと王子には耐えがたいことでしょうから。
そうして私はスーメリアを睨みます。
「まさか魔力の残滓があなたに取り憑いていたとは……いつからかは知りませんが、成敗させていただきます……あっ、待ちなさい!」
しかし、スーメリアは私を見ることもなく走って逃げていきました。
なんなのですか?
私はここまで運んできてくれたシルフィード様にお願いしてスーメリアを追いかけました。
当然すぐに追いついたので魔法でスーメリアを押さえつけます。
「〇※?◇△」
スーメリアは何かを呟いていますが、聞き取れませんし……どうやら人の言葉ではないようです。
呟き終えたのか、彼女が口を閉じるとなんと彼女の背中から黒い大きな影が出てきました。
「ようやく観念しましたね、魔王の魔力の残滓……いえ、最後の四天王にして魔族の闇の支配者・ハルガラヴェス!」
その黒い影はこれまで魔族を裏から操り続けてきた卑怯者……そう、大精霊様がたから聞いています。
何か理由があったのかもしれませんが、その行為は結果として世界を戦火に包み、多くの者を不幸にしたのです。私の弟も。
その責任はちゃんととってもらいますよ?
「ぐぶぉ……よくぞここまで追ってきたものだ……貴様はこの我が消し去ってくれよう」
観念したのかハルガラヴェスは私の言葉に応えました。
どう考えても力を失っているように見えるのですが、なにか手があるのでしょうか?
わかりませんが、とりあえず戦えばわかること。
私は光の魔法を使おうと……
「私のエメリアに汚らわしい目を向けるとは許せないな。塵も残さず消し去ってやろう。ホーリーレイ!!!」
「ぐぉあぁぁああああああ!!!!!!」
したのに、光の精霊であるルクシオン様が勝手に発現して勝手に光魔法をぶっ放して勝手に倒してしまいました。
「え~と、ルクシオン様?」
「ふむ、どこも汚れていないな。ふぅ、このハルガラヴェスという魔族は隙を作るとすぐに取り憑いてくるし、取り憑かなくても残滓をまき散らしてくる。もし倒したと思っても残滓が残っていれば再生してくるからやっかいなのだ」
なるほど、特性をご存じだったから嫌な状況になる前に対処したということでしょうか。
「わかりました。納得しました。ありがとうございます」
「うむ」
お礼を伝えると嬉しそうなのは可愛いのですが、事前に教えておいてもらえたら助かりますね。
「そうして倒したと思い込んで残滓を逃すのだの」
「なっ……他にもまき散らしていると?」
得意そうなルクシオン様にモルドゥカ様が少し馬鹿にしたように声を掛けます。
すみません、私もそうだと思いました。
今の話を聞くと、あれだけ一緒にいてライエル様に残滓を植え付けていないとは思えなかったので。
『グルォオオォォオオオオオオ!!!!!』
案の定、ライエル王子を眠らせた方から魔物のような声がします。
つまりそういうことでしょう。
重ね重ね事前に教えておいてもらえたら助かりますね。
戻ってみると、体のまわりに黒い魔力を漂わせたライエル王子……もう顔も体もいたるところに黒い魔力線が走り、血走った目となり、なぜか背中に魔王のように黒い翼を生やしてしまっています。
これはもう、元に戻ることはできないでしょうか……?
『キサマヲ殺ス!絶対二許サン!』
そう言いながらふらふらと状態を揺らしてライエル王子だったものが向かってきます。
どうにかしてライエル王子を助け出すことはできないでしょうか?
精霊たちは無理だと伝えてきます。
それに、お父様から聞いた話によると国王陛下を斬りつけて逃走したということですから、もう助け出しても未来はないでしょうか。
思えば、彼にはずっと振り回されてきました。
自分がやりたいことをやりたい、自分は偉い、自分は凄い、周りは僕の言うことを聞け、些事は全ていいようにやっておけ、というような方でしたから。
うん、ごめんなさい。
私は何かを間違えたのでしょうか?
もしかしたら結婚していたかもしれない相手です。
もしかしたら今も共に戦っていたかもしれない相手……。
私は甘やかしすぎたのでしょうか?
むっ……。
私は襲い掛かってきたライエル様だったものの攻撃を避けます。
いけませんね、自省している場合ではありません。
こうなってしまってはもう、倒すことだけが彼を救う方法のようです。
すでに自我もないようですし、一思いに行きます。
「セイクリッドバースト!×2」
私の聖属性魔法によって、ライエル王子についていたハルガラヴェスが消えていきます。
同時にハルガラヴェスと同化していたライエル王子の精神も……。
やはりダメでしたか……。
聖属性魔法であれば、完全に闇に染まってなければあわよくば生命だけは残らないかと思いましたが……。
すみません、力不足でした。
さようなら、ライエル王子。
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